第61話 王女様と黒豹(レティシア視点)
私は、カリブ王国の王女のレティシア、今年10歳になる。
「王女様、お待ちください」
「レティシア様ぁーーー本当にどこに行かれたのかしらぁ?」
侍女達が探し回っているなかを、私は慎重な足取りで宮殿からぬけだし、外に走って行く。
今日は、エマはお休みをもらって町に行くと言っていた。ラナはアレクおじ様と領地に出かけているはずだし、ゾーイは、ハミ君の視察に1時間ばかり同行すると言って今、出かけたばかりだ。加えて、お母様とお父様も公務で外出中だ。このチャンスを逃す手はない。
私は、王宮の隅に設置された檻に向かう。そこに、皆に恐れられている大きな黒豹がいるのだ。
皆は、この豹に近づいてはいけないって言うけれど、私はこの子が怖いなんて思えない。
アレクおじ様が、遠い異国の皇帝から貰ったというこの黒豹はとても綺麗だった。
「わぁーー、綺麗ねぇ!!貴方はすごく素敵だわ。ねぇ、私達ってお友達になれると思わない?」
黒豹は、キラキラした黄金の瞳で私を見つめ、大きな声で威嚇するような鳴き声をあげた。
一斉に侍女と護衛兵が、こちらにやって来るのと私が檻を開けるのと、ほぼ同時だった。
みんな、固まった表情をしている。なんでかなぁ。この子を出してあげたいだけなのに・・・
「王女様。ゆっくりと、こちらにいらっしゃってください。お願いですから、そっとです」
「いいえ、王女様、動いてはなりません!!そのままです。あぁー、どうしよう?エマ様もゾーイ様もラナ様もいらっしゃらない時になぜ、こんなことが?」
「王女様の身になにかあれば、全員死罪ですよぉーーーーどうすればよいでしょうーーー」
泣き出す侍女まで、でてきたから、私は呆れてしまったの。
「いい?よく、聞いて?お父様は、貴女達にそんな仕打ちは絶対しないわ。だって、私が勝手にしたことで死罪なんて賢い王様のすることではないでしょう?」
そんなふうに侍女達を窘めている私に黒豹は、後ろからゆっくりと近づいてきた。
そのまま、私の背中を押し倒して覆いかぶさる。
「「「きゃぁーーー、王女様が食べられちゃいます」」」
「「「もぉ、だめだ。俺らは、全員、死刑だ・・・・」」」
侍女と護衛騎士が、うるさく騒いでいたけれど、私は声をあげて笑っていたわ。
「ふふふふーー。くすぐったいわよ。お利口さんねぇ!!貴方のお名前は黒曜石のように艶があって黒いからオブシディアンよ。今日から私のお友達よ」
オブシディアンは、私の顔をペロペロ舐めて、満足げにゴロゴロと喉をならしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます