第59話 帰ってきたハミルトン(ゾーイ視点)

私は王女様をあやして、ニンマリしていた。王女様は、レティシアと名付けられた。オリビアお嬢様にそっくりで、どこからどう見ても非の打ち所がない。


このレティシア様の面倒を見ることは、激しい争奪戦を意味する。エマとラナはもちろんのこと、他の侍女達やアレクサンダー様まで参戦してくるのだ。


「なんで、アレクサンダー様まで参戦するんでちゅかねぇ?レティシア様は人気者でちゅねーー」

そう話しかけながら、私は王宮の庭園を一歳半の王女様を抱っこしながら歩いていた。


午後の柔らかな日差しが、レティシア様の金髪に天使の輪をつくる。


「はぁーー。まじ、天使だわぁーーー。癒やされる。あのバカポンコツ男のことも忘れられそうよ」

私はレティシア様を、抱きかかえてその柔らかなほっぺにキスをした。

シャボンの香りと甘いミルクの香りを思いっきり吸い込んで、微笑むとレティシア様はキャッキャッと笑った。


「今日は、ずいぶんとご機嫌がいいんですねぇ」

そう言った私は、見慣れた男性がこちらに向かってくるのに気がついた。


「ゾーイ。その子は・・・どうやら遅かったようだね・・・私は・・・また・・・戻ることにしよう。幸せそうで良かった」


「はぁ?」


相変わらずの、思い込みの激しさに笑いがこみ上げてきた。


「この綺麗な赤ちゃんは、オリビアお嬢様の子だよ。ハミ君、お帰り!!」


私は、レティシア様を抱きながらハミ君の腕の中に飛び込んだのだった。

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