第38話 救われたお嬢様(ゾーイ視点)

私達の大事なお嬢様が、目の前で倒れた。

急いで脈をとり、症状を確認すると、明らかになにかの毒のせいだと思われた。


いつも持ち歩いている中和剤を口に含ませる。

これは、とりあえずどんな毒の作用も柔らげる成分が入っていた。


けれど、完全に毒を抜くには、なんの毒かを調べてそれにあったものを調合する必要がある。


「お嬢様を動かしてはだめよ。なにか上に掛けて、そのままにしておいて」

私は、急いで毒がありそうな食物を検査していった。私が開発した毒探知機は、そこに並べられた食べ物には少しも反応しない・・・

だが、ほぼ空になったグラスの水滴を手に取ると、探知機がやかましくなり出した。


水滴をスポイトで丁寧にとり、成分を綿密に調べ上げる。

これは・・・猛毒の毒花をすり潰したものじゃないか!!このままだと命の危険がある。


「これは・・・猛毒だ。通常なら10分もあれば死んでしまう・・・」

私は、絶望の声をあげた。この毒を解毒することに成功しても、身体に障害がでそうなレベルだ。


「大丈夫だ。私の白魔法がある。死なせはしない。貴女は解毒剤を作ってくれ。これ以上、毒を吸収しないように魔法をかけるから」

王子に言われて、急いで調合すると、お嬢様の口に含ませた。


王子の治癒魔法は、思ったより強力なものだった。並みの白魔術士ではない。

猛毒の吸収を抑える白魔法なんて、あまり聞いたことはなかった。

もしかしたら、魔術師レベル?

つくづく、驚くべき男だな・・・


お嬢様の顔色が、みるみる良くなっていく。

土黄色だった顔が、いつものぬけるような白さの滑らかな肌の状態に戻りつつある。


オーウェン王子は、今やお嬢様を宝物のように両腕に抱え込んでいた。

エマは困ったような顔で、王子を見ているが、私とラナはあえてそこは許すことにした。


お嬢様の命の恩人だ。おそらく、相当の白魔法の術を駆使したはず。

私の薬だけでは、助けられはしても、完全には回復できなかったかもしれない。


毒花は、滅多に手に入らないものだ。その葉の粉末は、高等白魔法を使う時の

媒体にもなるらしいから白魔術師なら持っていてもおかしくはないが・・・


どちらにしても、お嬢様を狙った犯人を必ずあぶり出して、3倍返しで復讐しないと気が済まない。


私とラナが王宮の庭園で腰を下ろして相談していると、最近ベンジャミン家によく来るアレクサンダー様が、あろうことか第2王子と談笑しながら宮殿から歩いてきたのだった。

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