第二十七章「クラン戦」(17)

17


「そっかそっか」


 「殺し合いだよ」と答えたリョーマの言葉にそう返事すると、僕はその辺の亡骸をごろごろと転がして、比較的汚れていない床の掃除を始めた。


「ちょ、ちょっと……」


 アリサがそんな僕を呼び止めた。


「あの二人……止めなくていいの?!」

「あのさ、アリサ」


 僕は苦笑しながら言った。


「……僕があの二人を止められると思う?」

「クックック、さすが爆笑王。ちゃんとわかってるじゃねぇか」


 リョーマが上機嫌で答える。

 どんな手を使ったのかは知らないけど、これだけの金星ゴールドスター冒険者を血祭りに上げたような二人を、何が悲しくて僕が止めに入らなくちゃならないんだ。



「どっこいしょっと」


 僕はピカピカになって、血の匂いもしなくなった空間に腰を下ろした。


「イスカンダル―! こっちおいでー!」

「がるっ!!」

「アリサも疲れたでしょ。今のうちに休んでおこう」

「……あなたって、本当に、肝が据わっているっていうか、ふてぶてしいっていうか……」


 アリサが呆れ顔で、でもクス、と笑って隣に座った。


「ほう、それは天狼か……、それにその服と君の雰囲気……。どうやら、しばらく見ない間にまた力を付けたようだね」

「ギルサナス、君の方こそ、暗黒騎士ダークナイトスキルを使いこなしてきたみたいだね」


 リョーマの荒々しくも隙のない連続攻撃を最小限の動きでかわしながら、ギルサナスは的確に剣を振り、どんどん相手の手傷を増やしていっている。


「リョーマもそろそろ降参したほうがいいんじゃない? 絶対勝てないってことはわかってるんでしょ」

「ああ。残念ながら、そうみてぇだな……」


 リョーマがちっとも悔しくもなさそうに言った。


「意外ね。そんなことを言われたら逆上するタイプかと思ったわ」

「それがよ、聖女の姉ちゃん。戦ってみてわかったが、暗黒騎士ダークナイトって奴はどうやらオレとは死ぬほど相性がワリぃみてぇなんだわ」

「まぁ、そうだろうね」


 僕がうなずいた。


「暗黒剣で斬られた傷は出血が止まらない。しかも、血を流せば流すほど暗黒騎士の傷はふさがっていく。手傷なんて気にしない素手喧嘩ステゴロ最強のリョーマでは、ちょっとキツいだろうね」

「さりげなく『最強』って付けてフォローすんなよな。逆に傷つくぜ……」

「いや、これだけの主導権イニシアチブが私にありながら、リョーマの徒手格闘術はまったく油断できない。おそらくこれが実戦経験の差というやつなのだろうな。以前の私であれば太刀打ちできなかっただろう」


 ギルサナスがそう言うと、リョーマがカランビットを放り投げて、肩をすくめた。


「だー、やめだ、やめやめ!! 爆笑王はともかく、対戦相手のテメェにまでフォローされてちゃ、退屈しのぎにもなりゃしねぇ!」

「……退屈しのぎでやってたの?」


 呆れて言った僕の側に、リョーマが血みどろの姿でやってくると僕とアリサの前にどかっと横になった。


「あーあ、せっかく床をキレイにしたのに……」

「聖女の姉ちゃん、すまねぇが、回復魔法ヒールしてもらっちゃくんねぇか? 死にゃしねぇんだろうが、痛くてかなわねぇ」


 アリサが僕の顔を見て確認したので、僕はうなずいた。


「ケッ、見せつけてくれるじゃないの。……おっ、『聖女に愛されし者』だぁ? ヘッ、相変わらず手が早ぇな、爆笑王。恐れ入ったぜ」

「僕は咖喱カリーを作っただけ……ごふぁっ!!」


 アリサが僕のみぞおちを螺旋銃ライフルの銃床で小突いた。

 軽くやったつもりなんだろうけど、かなり痛い……。


「じょ、冗談なのに……」

「それよりも私は『龍帝』という不穏すぎる爵位と、『リザーディアンの統治者』『アウローラに愛されし者』『黒薔薇ミスティに愛されし者』というのがものすごく気になるんだが……。この短期間の間に何があったんだ……」

「話せば長くなるから、この戦いが終わったらゆっくりね」


 いつにまにか剣を納めて近付いてきたギルサナスに、僕は答えた。


「で、二人が退屈しのぎにチャンバラを始めた理由は、アレ?」


 僕は大広間の奥にある玉座で、したり顔をしている男を指差した。

 顔に見覚えがある。

 暁の明星のリーダーだ。


「そういうこった。アイツが言うには、残念ながらオマエらの勝ちはないみたいだぜ?」


 リョーマが答える。

 暁の明星のリーダーが座る玉座を囲むように、黄金色の六角形の線がびっしりと組み合わさったような魔法結界が張り巡らされていて、クランの旗はその後ろにあった。


「あれは絶対防御の魔法結界を生み出すという、一点物の宝具アーティファクトなのだそうだ。試してみたが、物理攻撃も魔法攻撃も一切通用しない。おそらくあと半日ほどで効果が切れるようなのだが……」

「その前にクラン戦の制限時間が切れるってことね」

「ああ、残念だが……、制限時間はあと数時間で終わってしまう」

「そっか。なら仕方ないね」


 あっさり答える僕に、リョーマ、ギルサナス、アリサが目を丸くした。


「仕方ないねって……、そんな簡単に……」

「アリサ、大丈夫だから」


 僕はにっこり笑って、アリサの頭を軽く撫でた。


「僕はそろそろ外の様子を見て来る。アリサは二人の回復をお願いね」


 僕はイスカンダルにまたがって、城門の外に出た。


「うっわ……」


 戦いは、完全に一方的だった。


ぇぇぇぇぇいっ!!!!!!」


(聖天馬騎士団じゃん!! ってか、来るの遅っ!!!)


 ゴッドフリート団長の指示で、大きな翼を持った美しい白馬で天空を羽ばたく天馬騎士ペガサスナイトから、一斉に魔法の槍が放たれる。


「上空からまた来るぞ!! 盾をかざせ!!」

「で、でも、そうしたらまた奴らの突撃が……っ!!」

「く、くそっ、アヴァロニア教皇庁の秘匿部隊が、なんでこんな戦いに!!」

「奴は……、ベルゲングリューン伯は教皇庁とも繋がりがあるというのか……」

「隊長、暁の明星より、アイツと組んだ方が良かったんじゃ……」

「今そんなことを言っている場合か!!」

「来たっ!! 全員密集隊形!!!」

「くそっ……」


 シュン――ッ!!!!!!!!

 シュン――ッ!!!!!!!!

 シュンッシュン――ッ!!!!!!!!


 上空から強烈に降り注ぐ魔法の槍。

 冒険者が戦う相手は、大半が魔物モンスター、人間が相手でも盗賊団や暗殺者、あるいは同業の冒険者であることがほとんどだ。

 必然的に、重視する属性耐性は炎・水・風・土の基本元素と呼ばれる属性と、上位のごく一部の冒険者は闇属性に対する装備を身につけることがあるという。

 だが、聖属性の耐性まで装備している冒険者はほとんど存在しない。

 つまり、聖天馬騎士団による魔法の槍の一斉攻撃は、経験豊富な金星ゴールドスター冒険者にとっても脅威なのだ。


 そして……。


突撃アングリフッッ!!!」


 ゾフィアの号令で、味方陣営が防戦一方の金星ゴールドスター冒険者部隊に斬り込んだ。


「どうやら仕える主君を誤ったようだな。先輩冒険者諸君!」

「ぐわあああああっ!!!」


 ジルベールが上空に対する防衛に集中していた重装騎兵の横っ腹に馬を突入させ、そのまま斧槍ハルバードを振り回しながら一気に中央を駆け抜ける。


「くっ……、こいつ、本当に学生か?! 並の馬捌きではないぞ!」


 それは本当に僕もそう思う。


「メル殿、騎乗での戦闘も随分慣れてきたようだな!」

「ええ、ゾフィア。……ベルにもらった馬だもの」


 メルが青釭剣せいこうけんを振るう度に、隊長クラスの首から血飛沫ちしぶきが上がり、その血を払いながら敵陣から素早く離れると、今度は別の隊の隊長クラスの首から血飛沫が上がる。

 一撃離脱の華麗な戦法に、敵部隊の混乱がますます深まっていく。


「私も負けてはいられん……なっ!」


 ゾフィアはなんと馬の上で立ち上がって弓を構えて、後方で魔法詠唱していた魔導師ウィザードの一人を仕留め、そのまま跳躍して空中で二の矢を放ち、もう一人の魔導師ウィザードの喉を貫くと、

右手で抜き放った剣で神聖魔法防護をかけようとしていた神官プリーストの背中に斬りかかって致命傷を追わせ、着地すれすれで走ってきた馬の手綱を掴んで、まるで曲芸師のように身をひるがえして飛び乗った。

 

(相変わらず、みんなかっちょよすぎる……)


「ファイアーボール!! ファイアーボール!! ファイアーボール!!」

「ちょっ!ちょっと!! ねぇ、アリサ!!」


 僕は小爆発の連続で壊滅的な損害を受けている一団を見て、思わず後ろを向いてアリサを呼んだ。

 ……そういえば、リョーマとギルサナスの治療でいないんだった。


(この光景を見せてやりたかったなぁ……)


 士官学校に入学して以来、ひたすら火球魔法ファイアーボールばっかり撃っていたおかげで開眼したのだろう。

 ミヤザワくんはとうとう、無詠唱で火球魔法ファイアーボールが撃てるようになっていたのだ。

 それがよっぽど嬉しいのか、ミヤザワくんが火薬袋をぽいぽい投げつけながらファイアーボールを連発していた。


「ミヤザワ君にばかりいいところを見せるわけにはいかないな! アーデルハイド!」

「もちろんですわ! オルバック!」

「無詠唱ならわたくしも負けんぞ!!」

「冒険者共、士官学校の魔法講師をナメるなよ!!」


 ミヤザワくんに触発されたオールバックくん、アーデルハイド、ユリシール殿、それから妙にアツくなっているメッコリン先生が続けとばかりに攻撃魔法を連発している。


「オラオラオラオラオラオラ!! 上ばっか見てんじゃねぇぞ!」

「キムてめぇ、壁役タンクのくせにオレより目立ってんじゃねーぞ!」

「わはは! 花京院! 今のオレは『中型盾モード』だからな!!」

「くそー。まつおさんに言って、中型の時もなんか文字が浮かび上がるようにしてもらわねぇと……」

「あはははっ、たっのしぃっ!! 今日はいっぱいブチ殺しちゃうわよぉー!!」


 キムと花京院、ジョセフィーヌが競い合うように敵陣に斬り込んでいる。

 やっぱりキムの判断力と突破力は素晴らしい。

 壁役タンクだけをやらせるのはもったいないと思ったんだ。


「あんたたち、遊びじゃないんだからね!」


 ユキもそう言いつつ、ノリノリで敵陣に突入している。

 カランビットナイフの特性を知らない相手が不用意に手でユキの打撃を受け止めて、外向きに湾曲した刃で手首を出血し、反撃不能に陥ったところを花京院たちが斧でトドメをさしていく。


 その他にも足払いや投げ、膝を砕くようなローキックで次から次へと冒険者の体勢を崩し、動きを止めて、他の味方たちの突撃をスムーズにしていた。


「リザーディアン弓兵部隊、敵の後衛部隊が魔法の槍の射程から外れた。集中して狙え!!」

「グゲゲゲ、グワッ、グワワッ!!」

「リザーディアン槍兵部隊、敵の右翼部隊が突出してきた。側面攻撃を狙え!!」

「ゲギギ! グワッ、ギギィ!!」


 ヴェンツェルが指揮棒タクトを振るって出す指示を、長老の側近がリザーディアンの言語に通訳して指示を出す。

 さすが軍師。

 戦術レベルの判断は、とても僕ではかなわない。

 ヴェンツェルはリザーディアンに指示を出しながら、被害が大きくなりそうな場所には支援魔法をかけ、負傷した仲間には回復魔法ヒールをかけている。

 地味な役回りだが、彼がいるだけで「兵」としての軍団の組織力が、何層にも奥行きを増しているように感じる。


「うおおおおっ!! ベルゲングリューン騎士団、ここに参上じゃあああっ!!!」

「う、うわ、なんだコイツ!! 騎士団とか名乗ってるくせにくわを持ってるぞ!!」


 ベルゲングリューン騎士団に斬りかかられた冒険者が、ソリマチ隊長のくわを見て動揺している。


くわをナメちょったら痛い目見るど!!」

「おわっ!?」

 

 ソリマチ隊長が振り下ろしたくわを、冒険者が慌てて剣で受け止める。

 だが、ソリマチ隊長はそのまま鍬の刃床部はどこぶを剣に引っ掛けて相手の体制を大きく崩し、そのまま鍬のを真っ直ぐに突き出して、冒険者の鼻っ柱に叩きつける。


「へぶっ?!」


 予想外のダメージに大きくよろけた冒険者に向かってソリマチ隊長は一気に距離を詰めると、完全に無防備になった冒険者の頭頂部に、くわを渾身の力で振り下ろした。


「う、うわああああああっ!!!!!」

「それ、ワシらも隊長に続くぞー!!!」


くわって怖いんだな……。っていうか、おっつぁん達、練度が上がりすぎじゃない?) 


 金星シルバースター冒険者相手に、ものすごい士気の高さで突撃していくベルゲングリューン騎士団の猛戦ぶりに、主君である僕自身が若干ドン引きしていた。


「なぁにが金星ゴールドスター だ、バカヤロウ!!」

青銅星ブロンズスター冒険者をナメてんじゃねぇぞコラァ!!!」


 あまりカッコ良いとは言えない怒号を上げて暴れまわっているのはガンツさんたちの冒険者軍団だ。

 日頃からコンプレックスというか、格上冒険者に対する鬱憤うっぷんが溜まっているのだろうか。


(ガンツさんが青銅星ブロンズスター止まりなのは、奥さんと子供がいるからだと思うんだけどね)


 ふだん態度には出さないけど、冒険者ギルドでアルバイトをしていた僕にはわかる。

 ガンツさんはセコい仕事しか請けないけど、それは、死なないためだ。

 家族のために、自分が生きて家に帰ることを第一に仕事をしている。

 もしガンツさんが独身だったら、この人だったらきっと、もっと格上のランクにいると思う。

 それを証拠に、あれだけ金星ゴールドスター冒険者軍団の中央部深くに突っ込みながら、彼も、仲間の冒険者たちも傷一つ負っていない。


(あ、まずい! 大魔導師ハイウィザードの生き残りがいる!!)


 僕は、木陰に隠れて、ローブを着た男が大魔法を詠唱しようとしているのを見つけた。

 犠牲を度外視して、味方もろともこちらを壊滅させるつもりらしい。


(くそ、今からじゃ味方に伝えても間に合わない。こちらから行ってもおそらく……)


 僕がどうすべきか逡巡しゅんじゅんしていたその瞬間。


『イヴァ、だいじょうぶ! 私はちゃんと見えてるよ!』 


 エレインの魔法伝達テレパシーの呼びかけと共に、大魔導師の眉間に深々と矢が突き刺さった。


『さすがエレイン!』

『えへへ! イヴァに褒められるの、すっごくすき』


「弓兵部隊!あそこだ!! 狙撃手を狙え!!」


 エレインの狙撃を目撃した兵士が、弓兵二人に射撃指示を出す。

 こちらが魔法伝達テレパシーで注意喚起する間もなく、二人のうち一人の矢が発射された。


 だが、放たれた矢は……。


 シュパアアアァァァンッ!!!

 大蛇オロチのようにうねった鞭の一撃で払い落とされた。


(ナイスだテレーゼ!!)


「かよわいエルフの女の子に矢を放った悪い子は、貴方? それとも貴方かしら?」


 シュパアアアァァァンッ!!!

 そう言いながら鞭を振り下ろすと、射撃指示を出した兵士のこめかみにその先端が命中し、ゴリッという嫌な音を立てて兵士がその場で昏倒した。

 

「ひ、ひぃぃぃぃっ!! し、死んでるっ……」


 怯えて後ずさる弓兵を壁際に追い詰めて、テレーゼはゆっくり歩み寄りながら、藍色に光る鞭を振りかざして叫んだ。


「どっちなの!!」


 シュパアアアァァァンッ!!!


(どっちも死んだよ……)


 鞭を握ったテレーゼは、獣だけでなく人間にも大変効果があることが実証された。


「い、一度戦線を立て直すぞ!! 全軍後退!! 聖天馬騎士団の槍が当たらない城の屋根の下に逃げ込め!」

「で、できませんっ!!」

「何っ?!」

「いつの間にか重装騎士アーマーナイト隊に背後を包囲されていて、まったく動けません!」

「しぶとさだけは、誰にも負けないぞ!!」

「そうだ! たとえ金星ゴールドスター冒険者でも、ここは我がベアール家とトーマスが一歩も通さない!!」

「ベアール騎士団の誇りにかけて!!」

「「「「ベアール騎士団の誇りにかけて!!」


 ヴェンツェルの指示で後方に回ったトーマスとエタン率いる重装騎士アーマーナイト隊がすさまじい士気の高さで鉄壁の封鎖陣を敷いていた。


「ミ、ミスティ殿!! 我々は共に戦った仲間ではないか!! これではあまりに不義理ではないか!!」

「うん。それについては、ゴメンとしか言えない」


 交戦地帯から少し離れたところで、暁の明星の冒険者たちとミスティ先輩が対峙していた。


「ゴ、ゴメンで済むと思っているのか!!」

「だって……、あなたたちとベル君じゃ、違いすぎるんだもの」

「なんだと……!! あんな小僧が我々よりも上だと言うのか!!」

「少なくとも、彼は、私が寝返ったとしても、そんなことは言わないわ」


 ミスティ先輩がハッキリと行った。


「きっと彼はこう言うの。『そうですか。寂しくなります』って。ちっとも寂しくなさそうに言うの」

「……」


 うっとりしながら言う先輩に、暁の明星の冒険者たちがドン引きしている。


「その言い方だけでもキュンときちゃうのに、私は彼の手のひらで踊らされてて……、で、捕縛された私に向かって、彼はにっこり笑いながら、きっとこう言うのよ……、『おかえりなさい。ミスティ先輩』って……。あ、想像したら、ちょっと火照ってきちゃった……」


 ミスティ先輩が自分の頬に両手を当てて、身体をくねくねしはじめた。

 ……大丈夫か、この人……。


「お、おい……、今なら倒せるんじゃないか?」

「よし、行けっ!!!」

「ミスティ殿、お覚悟!!!」


 ミスティ先輩は飛びかかる暁の明星の冒険者の方を振り向かずに、右手を上げた。

 

 ヒュンヒュンヒュンヒュンッ!!!!


 どこからともなく飛んできた天雷の斧ザウエルが、襲いかかる暁の明星の冒険者たちの首を背後から一度にねて、ミスティ先輩の右手に戻った。


「はぁ、はぁ。今の妄想はヤバかったわね……。今日寝る前に、もう一度再現してみようかしら……」


 哀れな暁の明星の冒険者たちの亡骸に見向きもせずに、ミスティ先輩は戦線に合流した。



 それから半刻も待たずして……。

 城外で地上に立つ敵軍の姿はついに一人も居なくなった。

 クラン「水晶の龍」は、金星ゴールドスター冒険者軍団に圧勝したのである。

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