第二十四章「ヴァイリス魔法学院」(6)
6
僕とヴェンツェルが入室すると、ヴェンツェルのお姉さんで魔法学院の先生でもあるジルヴィア先生は外をきょろきょろ確認してから急いで扉を閉め、鍵をかけた。
「……このことを知っているのは、あなたたちだけなのよね?」
声をひそめて、ジルヴィア先生が僕たちに言った。
ヴェンツェルと同じ、狐色のふわっとした髪をウルフヘアーにした、スタイル抜群の先生。
魔法学院に来てから、「大人のお姉さん」というワードで一番最初に連想するのは、ジルヴィア先生だった。
「……ああ。目撃した生徒はたくさんいるが、アウローラがベルに憑依したという結論に達したのはベルと私、ミヤザワ君だけだと思う。他の人たちは、あれがベルの本当の実力だと思っているはずだ」
ヴェンツェルがそう言うと、ジルヴィア先生は、はぁ、とため息をついてから、紙包みからさらさらとした粉を口の中に入れて、お水を飲み干した。
「ベルちゃん……、あなたが来てから、先生、胃薬ばっかり飲んでるわよ……」
「す、すいません……」
ヴェンツェルのお姉さんにジト目で見られて、僕は頭を下げた。
「それで、あなたたちの結論としては、どういう条件でアウローラがベルちゃんに発現すると考えているの?」
「怒り、だと思う」
ヴェンツェルが言った。
「アーデルハイドがミヤザワくんに辛く当たった瞬間、ベルは『ムカッ』としたらしい。だが、それは一瞬のことで、すぐに怒りが治まって、代わりに別の何かの存在を感じた。そうだよね?」
「そうそう、そんな感じ」
「それで……、普段のキミに戻った時は、どういう状況で戻ったの?」
「……」
ジルヴィア先生に尋ねられて、僕は返答をためらった。
「なーに? ベルちゃん」
「……どうしても、答えなくちゃダメですか?」
「……あのね、ベルちゃん。これが魔法学院どころか、国家、あるいは世界に影響を与えかねないレベルの、ものすごく重大な問題だってわかっていて、その質問をしてるんだとしたら、お姉さんとても困っちゃうなぁ」
繁忙期の冒険者ギルドでやつれている時のソフィアさんみたいな顔で、ジルヴィア先生が僕を見た。
「わかりました。言います……」
僕は軽くため息をついて、口を開いた。
「えっと、あの時、お姉さ……じゃなかったジルヴィア先生が僕の異変に気付いて……」
「ちょっと待ってベルちゃん! 今、私のことお姉さんって言いかけなかった?」
ジルヴィア先生が鋭い目で僕を見る。
「あ、すいません、ちょっと言い間違えてしまって。先生に対して失礼でした」
怒られたと思って頭を下げると、ジルヴィア先生がふるふると首を振った。
「ううん! いいの!! これからは私のことはお姉ちゃん、もしくはお姉さんと呼ぶこと! 姉上、姉貴は絶対禁止! わかったわね!」
「は、はい……」
勢いに押されて僕がそう言うと、ジルヴィア先生がにこにこと笑った。
「ヴェンったら、私のことをいつも姉上って呼ぶんだもん。キミみたいな弟からお姉ちゃんって呼ばれるのが夢だったの!」
「あ、姉上……、もう少し教師らしくしてください……」
ヴェンツェルがげんなりとした顔で言った。
どちらかというとお
「それじゃ、先生、僕たちはそろそろ……」
僕がそう言って退席しようとすると、その腕をジルヴィア先生ががっしりと掴んだ。
「お姉ちゃん」
「お、お姉ちゃん」
「はぁい、ベルちゃんのお姉ちゃんでーす! で、どういう状況でアウローラの憑依から戻ったの?」
「くっ……」
この先生、いつもニコニコしてるけどめちゃくちゃ手強いぞ……。
家でのヴェンツェルの気苦労が
「わかりました……言います」
僕は観念して、正直に白状した。
「教室での後、アウローラは久しぶりに外の空気が吸ってみたいって言い出して、教室の大騒ぎを収拾しようとしていたヴェンツェルとミヤザワくんをそのままにして屋上に出たんです。そうしたら、仕事をサボってタバコ吸ってる先生……お姉さんがいて」
「サ、サボってません! 休憩してたのよ!」
ジルヴィア先生が必死に弁明する。
「それと、タバコを吸ってることは誰にも言っちゃダメだからね。あそこは私の秘密の場所で、強力な魔法結界が張られていて、誰にも入れないハズだったんだから!」
「学校の屋上でこっそりタバコを吸う教師……」
「……ヴェン、何か言った?」
「い、いいえ、姉上」
「……それで、屋上で先生が僕の顔を見るなり、ゲホゲホ咳き込んで……」
「そ、そりゃそうでしょう?! いきなり私の結界にずかずか入り込んできた生徒がいるかと思えば、とんでもない魔力量を放出していて、しかもそれがベルちゃんで、すごいキリっとした顔で、『ふふ、なかなかの魔力の波動を感じるぞ。そなた、
「……お願いですから忘れてください……」
「そ、そんなことを姉上に言ったのか君は!!」
「ヴェ、ヴェンツェル、僕じゃないから! 言ったのはアウローラだから!」
僕の襟に手を掛けてがくがくと揺するヴェンツェルに必死に釈明する。
ユリーシャ王女殿下にこれをされると首が取れそうになるんだけど、ヴェンツェルがやると子猫がじゃれているぐらいにしか感じない。
「それで、先生が僕の異変に気がついて、大丈夫って覗き込んで、熱があるんじゃないかと、僕のおでこに手を当てて……」
「うん、覚えがあるわよ。それで?」
「それで……その……」
僕はその先を言うことを
「それで?」
「それで……」
「ああ、当事者意識……、どうすれば、この子は当事者意識を持ってくれるのかしら……。この子がヘタをすれば、世界が崩壊してしまいかねないという当事者意識を……」
「わかりました、わかりましたから!」
僕は深呼吸をしてから、言った。
「その時にですね、その、先生のブラウスの胸元といいますか、こう、ちょっとはだけたブラウスの隙間からですね、その、なんといいますか、お胸といいますか、一般的な言い方でいうところの、その、おっぱい的な……。い、いえ、決して見るつもりはないというか、女性はいつも視線に敏感だってルッ君の本にも書いていましたし、普段からなるべく、ルッ君と違って女性のことをあまりジロジロ見ないように気をつけているんですが、その、ご存知の通り、僕はアウローラに身体を乗っ取られていて、目をそらすことも、閉じることもできないわけでありまして、その、つまり、あの、僕ではなくて、アウローラがですね、先生のその、おっぱい的な物体を観測したところ、僕もその、年頃の男子特有の劣情をもよおしたといいますか……自分もえらそうなことを言って、ルッ君と同じ、いやらしいオスの一人に過ぎないのだと思い知らされたといいますか……その、端的に言いますと、興奮してしまいまして」
「き、き、君は、僕の姉をなんちゅう目で見ているんだ!!!」
ヴェンツェルが僕の身体に飛びついて襟首を掴んだ。
ユリーシャ王女殿下が同じことをやったら僕は今頃この世にいないと思うんだけど、ヴェンツェルがやると子猫が肩に飛び乗ってきたようにしか感じない。
「……そうだったの……」
ドン引きされたのか、ジルヴィア先生がうつむいて、そうつぶやいた。
「そうよね……。仕方ないわよね……」
「お姉さん?」
「ベルちゃんがいくら同年代の女の子たちにモテモテだからって、やっぱりお姉ちゃんのオトナの魅力には勝てないわよね……」
「そ、そうですね」
「はぁ……美しさって罪だわ……」
ジルヴィア先生はそう言いながら、窓の外を眺め始めた。
「コホン、つまりアウローラは君の怒りによって現出し、君の性的興奮によって、なりを潜めたというわけか」
「……その性的興奮っていう言い方、もう少しなんとかならない?」
「いいえ、ベルちゃん、あなたは性的興奮をしたの。お姉ちゃんに性的興奮しちゃったのよ!」
「……姉上は少し黙っていてもらえますか……」
テンションがおかしい姉をジト目で見て、ヴェンツェルが言った。
なぜか上機嫌になったジルヴィア先生は、結局、何かの対抗策を講じるでもなく、何かを制限されるでもなく、「気をつけてね」と言ってお開きになった。
「世界の破滅がどうたら……って言ってたじゃないですか」
って言ったら、先生は、
「私も最初はそう思ったんだけど、よく考えてみたら、そもそも世界が破滅するような事態を私たちがどうにかできるわけないのよね。もう気にするだけ負けだし、胃薬の無駄よ。どうせ、アウローラが本気で何かをしたらどうにもならないんだから。原因と対処法がわかっただけでもヨシとしましょ」
と言って、呆気に取られる僕たちに手を振って、
「それより、二人ともわかってるよね? 明日は実力テストですからね! 二人なら大丈夫だと思うけど、赤点なんて取ったら講習参加資格を失っちゃうんだから、油断しちゃダメよ!」
という、とんでもない情報を残してさっさと帰ってしまった。
初耳だよl!!!!
「ベルゲングリューン伯……、な、なんの御用ですの……?」
中庭で優雅にお茶を飲んでいるアーデルハイドに駆け寄って、息切れ気味に声を掛けると、案の定、警戒心マックスな表情でこちらを見上げた。
「はぁ、はぁ……ちょっとさ、君にお願いがあって」
「貴方が、
アーデルハイドは皮肉をたっぷりこめて僕に言った。
「そう、そういう感じで、もっと言ってほしいんだ」
「な、なんですの……?」
「君はほら、僕を怒らせるのが上手いじゃん。だから、そういう感じでもっと僕をイラつかせてほしいというか……」
「なるほど……」
アーデルハイドが肩をわなわなと震わせて、ティーカップがかちゃかちゃと音を立て始めた。
「つまり貴方は……私にケンカを売っているわけですのね……」
「わわわ、違う、違うんだ! 君が怒ってどうするんだ……、僕を怒らせて欲しいんだよ!」
僕が必死な顔でそう言ってしまったものだから、アーデルハイドはだんだん怒りではなく、気味悪そうに僕を見はじめた。
「あ、貴方……もしかして……」
「い、いや、違う。何を言おうとしているのかわからないけど、たぶん違うから言わなくていい……」
「貴方は……そういう性癖をお持ちの方なんですのね……。その昔、さる上級貴族が毎夜、使用人に自らを汚い言葉で
「だから違うって! い、いや、たしかに違うとも言い切れないというか、まったく興味がない世界でもない気はするけど……」
アーデルハイドがカップを持って、僕からササッと距離を取った。
「わかった! 事情を話す! 事情を話すから!」
「い、いえ……、貴方の性癖の話など聞きたくありませんわ……」
「性癖じゃないから!! 違うから!!」
アーデルハイドは自分のカップを持って、そそくさと退散しようとする。
「ま、待ってくれ! 君が僕を怒らせてくれないと、明日の実力テストが……!」
「い、意味がわかりませんわ! ごめんあそばせ!」
アーデルハイドはそれだけ言い残すと、貴婦人としての品位を落とさないギリギリの速度でぴゅーっと走り出した。
「た、頼むっ!! 僕を!! 僕を見捨てないでくれぇーっ!!!!」
悲壮な顔でアーデルハイドの背中に向かって叫ぶ僕を見て、通りかかった生徒たちがヒソヒソ言い合っている。
きっと、痴情のもつれか何かだと思われてしまったに違いない。
これまでの短期間で、魔法学院での僕にいったいどれだけの数の風評が広まっているのだろうと思うと、頭がくらくらする。
(……い、いや、僕はともかく、アーデルハイドにもとんでもない風評被害を与えてしまったかもしれない……)
ごめんね、アーデルハイド。
「ベルゲングリューン伯をフッた女」とか噂されても、恨まないでね。
「お、おしまいだ……僕の学園生活はおしまいだ……」
僕はアーデルハイドが座っていたベンチに腰掛けて、がっくりとうなだれた。
毎日いろんなことがありすぎて、実力テストが明日あるなんてまったく知らなかった。
「やれやれ。情けないことだ」
僕はそう言うと、ぱちん、と指を鳴らす。
通りがかった初老の教師がその瞬間に足を止め、中庭の奥に行ったかと思うと、しばらくして、ティーカップやポットが載ったトレイを持ってこちらに戻ってきて、まったく何も疑問に思うこともない様子で、給仕のように僕に紅茶を注いだ。
「うむ。なかなかに美味い。ご苦労だった」
僕がそう言うと、教師は深々と頭を下げて、どこかに去っていった。
(っていうか違う! 僕じゃない! またアウローラに乗っ取られてる!?)
な、なぜだ……。
僕が怒らないと発現しないんじゃなかったのか……。
「それは貴公の勝手な推測というものだな」
優雅に紅茶を飲みながら、僕の姿をしたアウローラはつぶやいた。
ちょっと待て……、僕と会話ができるのか?!
「ああ、できる。前回は貴公の反応が愉快だったから無視していただけだ」
ゆ、愉快って……。
「それより、貴公は大きな考え違いをしている。……たしかに私は、貴公の怒りがきっかけで発現した。だがそれは、怒らないと発現しないということにはならない」
そ、そうなのか……。
「実際には、『一度発現してしまえば、私はいついかなるときでも、私の思うままに発現できる』というのが真実だ」
ええええええっ!!
そ、そんな……。
「加えて言うなら、貴公が元に戻っていたのも私のきまぐれであって、貴公が友人の姉である教師に欲情したからではない」
そ、そんな……。
それじゃ、僕は一体なんのために、あんな恥ずかしいカミングアウトを先生にしたんだ……。
「ふふ、まぁ良かったではないか。あの教師もまんざらではないようだ」
いや、だから余計ややこしいことに……。
「だが、良いか? 決して誤解するでないぞ。あれは普段のそなたの接し方が誠実そのものであったから許されたのだ。たとえ気心の知れた相手であったとしても、異性にああいう話は……」
わ、わかってるよ!
君は僕のオカンか!!
「それで、なんだ、実力テストと言ったか? 一応確認なのだが、その為に貴公は私を再臨させようとしていたのか?」
そ、そう。
「くくく……あははははっ!! 混沌と破壊の魔女と呼ばれたこのアウローラを、実力テストを乗り切るために呼び出そうとするとは……!!」
君がそうして自由に出入りできるって思ってなかったから……。
実力テストが終わった瞬間に、ものすごいいやらしいことを考えまくったら元に戻れるかなって。
「……救いがたい阿呆だな、貴公は」
救いがたい阿呆だから実力テストがヤバいんだよ……。
でさ、もう発現しちゃったもんはしょうがないから、ついでにパパッとテストを受けちゃってくんない?
「……3000年前、私を神と崇める者もいた。そんな私に、命がけで切実な願いを訴える者もいた。だが、実力テストを代わりにやってくれと言われたのは初めての経験だな……」
なんだよー、それぐらいいいだろ? 僕の身体を勝手に使ってるんだから。
「ああ、たしかに貴公の身体はとても心地がよい。3000年ぶりの、若い男の尻の感触はなかなかに甘美だな」
わっ!? ア、アホか! 僕のケツを僕でさわるんじゃない!! やめろ!!!
僕は自分で自分の尻を撫でさすっているアウローラを必死に止めた。
自分で触ってるのにアウローラに触られているようなヘンな感覚で、ものすごくゾワゾワする。
「だが、安心するがいい。私は現世に未練はないし、貴公の身体を完全に乗っ取ろうとも思っていない。3000年前に私がやりたいことはすべてやり尽くしたからな」
あ、そ、そうなの?
じゃあ、実力テストが終わったら、服ごとさっさと出ていってくれる?
「それは断る。貴公という人間は実に興味深い。こうして貴公の半身となって、当事者の目でその人生を追体験するなど、この3000年で一番の愉悦だからな」
な、なんて迷惑な……。
さすが混沌と破壊の魔女……。
「そういうわけなのでな、私は貴公の人生に直接介入するつもりはないのだ。たまに発現して貴公をからかってやるのはいいが、この世に不可能などない私の力で貴公がやすやすと困難を乗り切ってしまえば、それはただの
見る專聞き專かよ!!
「もっとも、貴公が貴公の中に眠る私の力をうまく制御し、利用するのは自由だ。……いつの日か貴公が成長し、私をほしいままに蹂躙してその力を行使し、世界を混沌と破壊の
わかった、わかったから僕のケツを触るな!
「結論、明日の実力テストで力は一切貸さん」
そ、そんなぁ……。
「だが、ヒントだけ与えてやろう」
アウローラはそう言うと、カップに残った紅茶をゆっくり飲み干した。
「貴公が数ある装備の中から私を選び、身にまとった時、私は気まぐれに過去の貴公の記憶を辿ってみたが、貴公はどんな時でも沈着冷静だった。だが、沈着冷静すぎるのだ」
沈着冷静すぎる?
けっこういつも大慌てしてたと思うんだけど……。
「自覚がないかもしれないが、貴公は大慌てしている時が一番冷静なのだ」
……よくわからない。
「魔法に必要なのは理性だと授業で学んだな? それは間違っていない。だが、それは普通の感覚の人間を想定しての見解だ。普通の人間は非常時になれば感情に揺さぶられ、緊張して理性を失う。だからこそ、理性を保てと
たしかに、落ち着かないと魔法詠唱なんてできないもんね。
「そういうことだ。だが貴公は、『落ち着きすぎ』なのだ。理性的すぎて、考えて物事を解決しようとしすぎる。それは称賛されるべき長所だが、逆に致命的な短所でもある」
つまり、感情の起伏が乏しいってことか?
「端的に言えば、そういうことだ。感情とはエネルギーなのだ。感情をコントロールしてエネルギーとするから力になる。だが貴公は、おそらく生い立ちが関係しているのだろうが、最初から感情を出さないようにしている。だから魔力として転化するエネルギーが足りておらぬのだ……」
……。
「貴公の記憶にあったギルサナスという男がまさにそうだ。彼は自らの負の感情を受け入れ、それを純粋なエネルギーとして転化することで、あの
なるほど……。
わかりやすい。
さすが世界を滅ぼしかけた魔女。
うーん……、でもなぁ……。感情を出すって言われても、いったいどうすれば……。
「感情を無理に出す必要はない。イメージをするのだ。最初は怒ったフリでもなんでもよい。魔法のイメージに感情イメージを重ねるのだ」
感情イメージ……。
も、もしかして、「ウン・コー」って、僕が作り出した言葉が原因で発動したわけじゃなくて、僕の中の、「うんこ」っていう言葉を面白いって思う幼稚な感情イメージが結びついて……。
「ふぅ……やっとそこに気付いたか……」
アウローラがげんなりした声で言った。
「『うんこ』という言葉を面白がるとか、貴公は初等生か! それを貴公が新しい詠唱語を作ったと思い込み、他の生徒までもがその真似をし始めた時に、魔導の道を
ご、ごめんなさい。
「これでわかったな? 私は貴公の怒りによって発現したのではない。貴公が怒りという感情エネルギーで私を発現させたにすぎない」
アウローラは言った。
「つまり、そなたはすでに、『魔法が使える』のだ」
僕が……魔法を使える……?
「ふふ……。明日の実力テストで試してみるがよい。きっと、面白いことになると思うぞ?」
アウローラはそれだけ言うと、僕のお尻をひと撫でしてから、僕の身体に戻っていった。
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