46. 少女は二度目の舞台で復讐を誓う
「おおー、派手に崩れたねー」
アーガレス王国を見渡せることで人気のある展望台。
そこから私は、派手な音を立てて崩れていく王城を眺めていた。
「やっぱり、ドールはこういう時に良い。普通に生きている奴に、自爆して来いなんて言えないからね」
この爆発を作り出すために多くの傀儡を失ったのは痛手だけど、まだ私の駒は大量に作られている。
自爆前提に作るのであれば、凝った作りをする必要は無いので量産も可能だ。
傀儡は一応意思を持っているけれど、死体扱いになるから道具と同じだ。『収納魔法』に入ってくれて便利だから、これからは少しずつ数を増やしておこう。
「……さて、皆もこれで満足したかな?」
後ろを振り向く。
そこには私と同じように、王城の崩壊を見ていたシャドウの面々が立っていた。
「ああ、これでこの国に思い残すことはない。母さんも、ようやく報われる」
ガッシュさんの手の中には、彼のお母さんが大事そうに抱えられていた。
他の皆も同じように、家族の亡骸を大切に抱えていた。
まだ幼いベルは鼻を啜って涙を流しているので、アメリアが背中をさすって慰めている。
自分も辛いのに面倒を見てあげられる。それが彼女の優しさだ。
「気にしなくていいよ。私は復讐のついでに皆を助けただけだから。……それでこれからはどうするの?」
「皆で旅に出ようかと思う。どうせ帰るところもないからな……だったら、今まで見てきた穢れた世界とは違うものを見たいと、皆で相談して決めた」
「そう……じゃあ、お別れになるね」
皆にとっては少しの短い時間だけど、私にとっては、ようやく再会できた同胞だ。
少しばかり寂しい気持ちが込み上げる。
「ノアが居なかったら、俺達は一生束縛されていた。本当に感謝する」
「最初は頭狂ってるガキだと思ったが、おかげで助かった。ありがとな」
「また何処かで会ったら、次はいっぱいお話しましょ? もしその時、何か困っていることがあったら、私達は全力で貴女を助けるわ。可愛い後輩で恩人だもの」
「ガッシュさん、バッカス、アメリア……うん、ありがとう。また会う時があったら、変な柵なんて無しで、みんなで沢山話そう」
一人一人、握手をしていく。
ベルは泣きながらも、しっかりと礼を言ってくれた。
「それじゃあ、また」
「うん、またね」
さようならは言わない。
またどこかで会える。そんな確信があったから。
闇に消えるように、皆の姿が見えなくなる。
皆の反応を追ってみたら、凄まじい速度で東の方面へと向かっていた。
きっと彼らは東の果てにある『死者の願い』という場所を目指しているのだろう。
そこはいつでも澄んだ空気が流れていて、見ているだけで心が癒やされる、素敵な景色が広がっている丘だ。多くの人が最後にあの景色を見たいと願うことから、そのような名前が付いたとされている。
彼らはそこで家族を弔おうとしている。
……本当に、優しい人達だ。
「よしっ、それじゃあ、私たちも出発しようか」
同胞との別れを邪魔しないよう、ずっと側で控えてくれていたプリシラに振り向き、手を伸ばす。
「数ある復讐の内、まだ一つしか終わってない。それに、プリシラの復讐も果たさないとね。……きっと、長い旅になるよ。それでも、私についてきてくれる?」
「私は、ご主人様の側にいつまでも寄り添う覚悟です」
プリシラは私の手を取って、先の未来を想像してどこまでも楽しそうに微笑んだ。
「さぁ、行こう」
「はい、ご主人様」
未だに、私が過去に戻った理由はわからない。
でも折角与えられた二度目の人生だ。
一度目でクズ共は私の人生を狂わした。
だから今度は、私がお前らの人生を壊してやる。
──待っていてね。
私達は次なる目標を目指して歩き出す。最後に何も得ることがない復讐の道だとしても、それを果たすまで歩みを止めることはない。
ならば、最後までこのくそったれな世界に抗ってやろう。
この命が朽ちるまで、この腐りきった復讐劇の上で踊り続けてやろう。
誰にも自慢なんて出来ない。
それでも私とプリシラは、中途半端な復讐で終わらせない。
そうでなければ、私が生きる意味はない。
そのために私は、二度目の舞台で復讐を誓ったのだから。
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