【創作企画】刀神・参加作品 短編集
@GAU_8
一話完結 あーしは刀遣いのチカ!こっちはへし折れたあーしの刀!
「…はぁぁ。」
もう何度目か分からないため息をついて、目の前を見やる。不思議なことが起こって、今日の不運がなかったことになっていないものか。
そう願うこと4回。…目の前の現実を突きつけられること5回。
またしても希望を折られた嘆きの女子高生。姫野千果咲はまたしても盛大にため息をついたのだった。
今日はツイてなかった。
それだけだ。そうだと信じたい。普段はこんなんじゃない。当たり付きのアイスはほどほどに当たるし、占いの順位もいつも悪いなんてない。授業で毎回指名されることもないし。…あ。でも待ち望んでいた限定スイーツが目の前で品切れになった時はマジ下がった。めっちゃいいねして貰って励まして貰ったしなんだったら翌日もまた様子を見に行ったくらい凹んだ。
「今日はそれより上かもー…最の低。」
ほぼ無意識に動かしていた指を止めて、出来上がっていた書き込みを消す。これをアップする訳にはいかない。炎上待ったなし最悪、クビかも?
自分を憂鬱にさせている原因をもう一度視界に捉えて気休め程度に自分を励ましてみよう。
・先から折れてなんか綺麗に長方形になった支給刀、豊和
・まっしろなまま折りたたまれてクリームが滲んでる始末書
・まだ半分も食べてないのに紙の上に落ちて哀愁漂うシュークリーム
「ダメだ!マジヤバみ!どーすんのよっ!どーする?どーするんだあーし!!」
わっと崩れて突っ伏す。…髪にクリーム付いた気がする。マジ最悪。
こうなったのもアイツのせいだ。妖魔ゆるせん。次会ったら容赦せん。
思い返すのは数時間前。パトロール中に出会ったねこっぽい妖魔である。
天照に所属し、刀遣いとなった者は様々な部署に割り当てられ仕事をこなす。
あーしの仕事は最前線で妖魔を斬ること。人命救助。パトロール。
今日はパトロール中に妖魔に出くわした。人に害なす悪い妖怪みたいな奴。低位の奴だったし見た目で見分けが付けにくかったから見逃されてたんだと思う。
とにかくあーしは斬らなきゃいけない相手を見つけた。こういうとあーしが狂戦士みたいに聞こえるけど仕方ないのだ。妖魔は人を傷つける。生きてく上で必要な生気を奪ったり、命を奪ったりもするのだ。
それに対抗する手段を手に入れたからには戦わないといけない。
今日見つけた奴は黒猫っぽい奴だった。猫じゃない。絶対に妖魔。
かわいい猫ちゃんなら”共食い”なんてしないもん。なんかヤバみなオーラも出てたし…。
巡回ルートをちょっと外れて近道しようと路地に入った時にソイツに出会った。
まじヤバっ!って思ったし、咄嗟に刀抜いて追いかけたんだけどさ?
あーし、刀とかほとんど訓練でしか使ったことないし路地狭かったし?
アイツすばしっこくて小さいから狙いづらかったし?
それで。思いっきり壁に叩きつけて刀折っちゃったって訳。
「あーしのせいだけどあーしのせいじゃないよねっ!!?
だって刀ってこんな簡単に折れるんだーとか知らなかったし、あーしこの間肆段に昇格したばかりのまだ気分は訓練生だし!」
結局、ソイツには逃げられた。襲われなかっただけ幸運だったって教官には怒られた。始末書書いて来い。誠意を込めてしっかり書いて来い。って念押しされた。
だからファミレスでパフェとか食べたりしないでコンビニのシュークリームで我慢したし、1人でちゃんと書こうと思って家で机にも向かった訳よ?
そして今に至る。どうしてこうなるのか。これも全部妖魔のせいだってことにする。マジ許せん。
…そういえば黒猫っぽい奴だったし、あーし前を横切られたような?
「あー!!!もうやめやめ!クヨクヨすんのナシ!あーしらしくない。
髪拭いてオシャレしてクレープ食べにいこっ
ぜーんぶ妖魔のせいだし、もっかいごめんなさいすれば教ちゃんも許してくれておけおけ!あーし完璧っ!」
がばっと立ち上がった自称メンタルつよつよJKこと姫野千果咲はぐしゃっとゴミ箱に始末書を放り込んで、もったいないけどシュークリームに合掌して、刀は放置して街に飛び出した。
後日。青筋を立てた笑顔の教ちゃんこと教官に新しい始末書の用紙と一週間の下緒院への出向を命じられたのは言うまでもない。
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