罰ゲーム


 俺の膝の上に……何故か佐藤さんでは無く……鈴木さんが乗っていた!?


「ギャ……ギャル子……、い、いや、鈴木さん……何を食べる……?」


「ギャ、ギャル子じゃ、じゃないわよ。す、鈴木呼ばわりもやだ……肉じゃが……」


 うん、やっぱ鈴木さんはギャル子だ。

 真っ白な肌でサラサラな黒髪が美しい。

 俺の膝の上の腰をかけて、その黒髪が俺の顔に当たる……。


 というか、小柄な佐藤さんならこの罰ゲームは可能だったが……平均身長のギャル子には難しいんじゃないか?


「ゆ、祐希! は、早く……食べさせて……お願い……」


 妙に艶っぽい声を出すギャル子。

 ……これは……大丈夫なのか? 色々……。


 ちなみに弁当は俺が持っている。俺は後ろからギャル子を抱きしめるように……左手の弁当から、右手の箸で肉じゃがを掴もうとする……が、見えないからうまく出来ない。


 俺は観念して、顔をギャル子の横から出して……ギャル子の顔の位置に箸を持っていく。


 ――見えた! 肉じゃがはそこだ!


 俺は必死になって肉じゃがをつかもうとしたら……顔と手に柔らかい感触を感じた。

 ――無視だ!!


「ひゃ!? ゆ、祐希!? ちょ、当たってるよ!? うぅ……恥ずかしい……」


 くっ、俺だって恥ずかしいんだ! 我慢しろ!


 ギャル子の顔の位置が高いからうまく口まで運べない。あ、落とした。

 俺は弁当箱でキャッチをする。



 白い肌が真っ赤になっているギャル子に俺は提案した。


「おい、ギャル子。このままだと食べ終わる前に昼休みが終わってしまう。……そこで提案だ。……俺と向き合ってくれたら食べさせやすいんだが……」


 ――俺は何を言ってるんだ? とち狂ったのか!? そ、そんな事をしたら……俺とギャル子は……間近で顔を見合わせてしまうじゃないか!


「ええ!? 祐希の上に座ってるだけで恥ずかしいのに!? な、な、な、なんて提案を……。で、で、で、でも仕方ないよね? お、お弁当を食べるためだもんね」


 ギャル子は意を決して……俺の膝の上に座り直した。


 俺と向き合って、両足を閉じてお姫様座りをする。


「うぅ……ち、近いよ……」


「我慢するんだ……ほら、これで食べられるぞ」


 俺は再び肉じゃがを掴む。ギャル子は綺麗な黒髪を手で押さえた。

 俺が口元に持っていくと、ギャル子はパクって肉じゃがを食べた


 恥ずかしそうに口元を手で隠す。

 ギャル子の目が見開いた。


「――美味しい……これ本当に祐希が作ったの? ……ねえ、早く次食べさせて」


 ギャル子は口を尖らせて催促をしてくる。


「なんか可愛いな」


 俺は思わず声に出してしまった。


「祐希!? な、何言ってるのよ! ていうかやっぱ近いわよ!! なんで佐藤はこの近さで平気なのよ! やばい距離感よ、これ!! 普通の感覚じゃないわよ!! あんたらおかしいって!!」


「そうだな、恥ずかしいな」


「恥ずかしいどころじゃないわ! ていうか、祐希の匂いがめっちゃするんですけど! って事は私……汗臭くない!?」


「いや、良い匂いがするぞ」


「――――!?」


 ギャル子は俺の膝の上でジタバタしている。


 それを近くの椅子で俺の弁当を食べながら見ている佐藤さん。

 あ、ちなみに高橋さんは今日はアルバイトのため早退していた。


 佐藤さんは俺たちに向かって親指を立てた。


「……いつも私ばっかり。今日は鈴木に譲った。物欲しそうな顔をしてた」


「してないわよ!! ああ〜、無理無理無理! もういいから普通にお弁当食べさせて!!」


「駄目、鈴木、私のお菓子食べた。……鈴木も罰ゲーム」


「いやーーーー!!! あっ」


 おい、こら俺の膝の上で暴れるな!? 

 バランスを崩すぞ!?


 ギャル子は……バランスを崩して……後ろに倒れそうになった!


 俺は手に持っていた弁当を落とさないように、腕をギャル子の背中に回す。足を箸を持つ方の腕で支える。


 何故かお姫様抱っこの状態になってしまった!?


「……あっ……」


 ギャル子は急に大人しくなってしまう……。



 佐藤さんが珍しくにやりと笑う。

 部室にスマホのシャッター音が響いた。


「……ナイスアングル。あとで送る」


「いやぁーーーー!!!」


 いや、重たいからそろそろ……下ろしていいかな?




 俺達はそんな感じで、楽しい昼休みを過ごしていった。



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