ファイナル・ドラゴン

渋谷かな

第1話 FD1

「よろしくお願いします。」

 夢月希は7歳の小学一年生。

「わ~い! 友達100人で斬るかな~! アハッ!」

 普通に小学一年生を楽しんでいました。


「うえええーん!」

 ある日、希は泣きながら家に帰ってくる。

「どうしたの? 希。」

 希の母親は優しく息子に声をかける。

「学校でいじめられた! うえええーん!」

 希はいじめにあったらしい。

「ドカーン!」

 食卓のちゃぶ台が飛んでひっくり返る。

「情けないぞ! 希! いじめられたくらいで泣くな! いじめられたらいじめ返せ! 殴られたら相手が死ぬまで殴り返せ! 蹴られたら相手の家に火をつけろ!」

 希の父親は昔気質のスパルタオヤジだった。

「え・・・・・・。」

 希の父親のいうことは全て犯罪である。

「いいか! 希! いじめっ子に勝つまではご飯抜きだ!」

「ええー!?」

 正に児童虐待である。

「やるよ! 父ちゃん! 僕は強くなって、いじめっ子を倒すんだ!」

「よく言った! 希! それでこそ我が息子だ! 夢月家の長男だ!」

 背に腹は代えられない希は覚悟を決める。

「やっぱり、この人と結婚したのが間違いだったわ。」

 離婚を考える希の母親。


「でも僕はどうやって強くなればいいんだ?」

 苦境に立たされる希。

「メールだよ。」

 幻のスマホにメールが届く。

(モンスターと戦って少しずつ強くなるのよ。)

「母ちゃん! ありがとう!」

 希の母親はメールでアドバイスして息子を助ける。

「モンスター!? 怖い!? でも、ここで戦わなければ、僕の人生は終わる! やるしかないんだ! やるしか! ご飯が食べれないんだ!」

 強くなると決めた希は成長していた。ご飯のために。


「いくぞ! スライム!」

 この世界は道を歩けばスライムに当たるのだった。

「ニヤッ。」

 スライムは愛らしく微笑んでいる。

「ウワアアアアア!? 攻撃なんかどうすればいいんだ!?」

 7歳の小学一年生の希はケンカの殴り合う経験がなかった。当然、誰かを殴ったことなどないのだ。

「ニヤッ!」

 スライムが希と遊びたいのか飛びついてくる。

「ギャア!? なんでネバネバしてるんだ!? ギャアアアアアア!?」

 スライム初体験に希は狂喜乱舞する。

「助けてー! お母さんー!」

 希は泣きながら戦場から逃げ出した。

「ニヤッ?」

 この時代、犬や猫のような存在のスライムは希の反応が分からなかった。


「どうせ僕はダメな子です・・・・・・。」

 負けて落ち込む希。

「グ・・・・・・。」

 希のお腹が空腹で鳴いた。

「お腹空いた。早くご飯が食べたいよ。」

 働かざる者食うべからず。

「どうすればスライムに勝てるんだ!?」

 転換期を迎える希はご飯のために、いや、勝つための手段を模索する。


「スライムに勝つためには、自分を鍛えるしかない!」

 問題を解決するのは誰でもない。自分自身である。

「腕立て1回、腹筋1回、背筋1回!」

「1メートル走!」

「500グラムペットボトルダンベルを1回!」

 試練を努力で成し遂げる希。

「ダメだ!? これしきの練習では奴には勝てない!?」

 危機感をむき出しにする

「何か一撃必殺の奥義を作らなければ!」

 解決の糸口は必殺技を作ることだった。

「よし! 必殺技を作るために素振りを1回だ!」

 7歳まで良い子で生きてきた希には、人を叩くことにも抵抗があった。まして戦闘の仕方なんかも知らなかった。そんな希はご飯のために必殺技を開発することにした。

「あ、おにぎり。」

 希の母親がおにぎりを作って置いてくれていたのだ。

「わ~い! 美味しい! こんなに美味しいおにぎりは食べたことがないです! お母さん! ありがとう!」

 希はおにぎりを食べて涙した。

(がんばって! 希!)

 電信柱の影から見守る希の母親。


「勝負だ! スライム!」

 再び対決する希とスライム。

「ニヤッ。」

 スライムは、また希に会えて嬉しくてニタニタ笑っている。

「僕の努力の成果を見せてやる! 僕は失ったものを取り戻す!」

 希の失ったものはご飯である。

「ニヤッ!」

 スライムが希に抱き着こうとフライングボディーネバネバアタックを仕掛ける。

(見える!? 見えるぞ! 僕なんかにでもスライムの動きがはっきりと見える!)

 希はスライムの動きを見切って、攻撃を受けてネバネバさせられることもなく、軽やかに避けた。

「今度はこっちの番だ! 特訓の成果を見せてやる!」

 希は厳しい修行で強くたくましくなっていた。

「くらえ! スライム! 夢月希! 奥義! ・・・・・・スライムのエサ!」

 なんと希はスライムの大好物のスライム・フードを取り出した。例えるとドック・フードやキャット・フードみたいなものである。

「スラスラ!」

 スライムは大好物に釣られて、スライム・フードにまっしぐらである。 

「フッ、僕は空腹の中で悟った。生きとし生ける者、お腹が減っては生きてはいけない! っと。」  

 希の父親は息子に食べ物がある喜びを教えた優秀な教育者であった。

「スラッ!」

 スライムは美味しそうにご飯を食べている。

「やれる! やれるぞ! 僕は強くなったんだ! ヒーハー!」

 希の冒険は続く。

 つづく。

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ファイナル・ドラゴン 渋谷かな @yahoogle

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