始まりの嵐・アゴノ誕生
読天文之
第1話ドロップアウト・ブラックアウト
二千四百年・世界は二つの組織によって、分断された。一つは人々の繁栄と強欲をモットーに、様々な国を統一する巨悪秘密結社ダーク・サイエンス。もう一つは小さな国ながらも、科学の力でみんな明るく生きるをモットーにダーク・サイエンスの考えに反する者達の住む組織・想像平和研究所である。この二つは元をたどれば一つの組織なのだが、ある大いなる力の使用理念について対立し、抗争した結果こうなってしまったのだ。その大いなる力の名は「パワー・ストーム」。それは正真正銘、地球にある最後のエネルギーである。そのエネルギーは原子力以上の力を持ち、原子力以上の人体への害もあるが、可能性の範囲が原子力以上である、正に夢のエネルギーである。それ故に人類の理想と欲望は掻き立てられ、それが対立・抗争のきっかけとなった。その中でも人類の欲望の力で未来永劫の世界を創る思想を掲げたダーク・サイエンスが、多くの人々の心を虜にし勢力を急速に拡大した結果、多くの国を統一する巨大な秘密結社になった。しかしその理想は極端な至上主義で、それについていけない結果貧富の格差が生まれ、自殺したり犯罪を犯したりする人々が大勢いた。そんな人々が想像平和研究所の理想に惹かれ、味方したことで想像平和研究所は発展した。それにダーク・サイエンスは驚異を感じ、想像平和研究所を壊滅するために軍隊を派遣。それに対して想像平和研究所も防御を固め続けた結果、この二つの組織が人類の世界を成しているのだ。
「お前は不合格だ、これからは自立して生きろ。」
「・・・わかりました。」
先生からの結果を言われた僕・吉ノ丸は覚悟を決めた。これからはこの孤児院ともおさらば、一人で生活をしなければならない。僕は小学生昇級試験に落ちてしまったのだ、この試験に合格すると寮のある学校へと入れるのだが、不合格になると必要最低限のお金と身分証を渡され孤児院から追い出されてしまう。合格のための努力も空しく、これからは孤立無援の生活を送らなければならない。一方同い年の親友・カケルは見事合格、憧れの学校へと続く切符を手に入れたのだ。これでカケルともお別れだ、吉ノ丸は寂しくなった。
僕が孤児院を出る前日の夜、ここでの最後の就寝の準備をしていた僕にカケルが話しかけた。
「吉ノ丸・・・・、お前試験に落ちたんだってな。」
「ああ、そうだ。これでカケルとも会えなくなる。」
「ここを出た後どうするか、考えはあるのか?」
「考えたけど、答えが思いつかない。」
「チルドレンワークは止めとけ、かなりつらいらしいからな。」
僕のように孤児院から追い出された子供の中には、直ぐに就職して金を稼ごうとする者がいる。それをチルドレンワークと言うのだが、大人よりも就職するのが難しいうえに、就職したとしても安い給料で雇われるだけだ。
「分かってる、それでも僕は生き続けるよ。」
「吉ノ丸は強いな、僕はそうはなれないよ。僕も君みたいになりたい。」
「止めてよ。僕は君にあるものが無いから、強くなれるんだ。失ったら、かなりつらいぞ。」
「そうだね・・・。じゃあこれでさらばだ、また会おうな。」
「ああ、またな。」
これがカケルとの最後の会話だった。数時間後、起床した僕は身分証と金を渡されて、僅かな荷物を持って孤児院を去った・・・。
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