一章 「ビー玉と約束」

「ゆうくん、ここにこのビー玉をうめよう」


 それは私のある思いがこもった特別なビー玉。

 もちろん、他のビー玉と形が違ったりはしない。ごく普通のビー玉だけど、私には大切なものだった。

 公園の砂場でトンネルを掘っている時に、私は急にそう言いだした。

「えっ、うめたら、なくなっちゃうよ? そのビー玉、ゆかちゃんの大事なものでしょ?」

「大事だからうめるの」

「わかんないよー」

 ゆうくんはそう言いながら頭をふるふると左右に振っている。  

 しぐさがかわいいなと私は思う。

 ゆうくんはわんぱくな感じはあまりなく、どちらかというとかわいらしい。

 男の子と遊ぶより、女の子である私とよく遊んでいる。

「うめてねぇ、また十年後の同じ日に一緒に取りにくるの。楽しそうでしょ?」

「うん、楽しそう」

 ゆうくんは満面の笑顔だ。

 そんな顔を見て、私はなんだか幸せな気分になる。

「やくそくだよ」

「うん、やくそくだよ」

 ゆうくんはまた私の言葉を真似して、お互いに笑いあった。

 太陽の下、私たちは約束をかわした。子供の遊びだとすぐに忘れてしまいそうなぐらいの些細な約束だ。

 しかし、それは幼い私のせいいっぱいの決意だったのだ。

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