ロンリー・ストーリー

北瀬海斗

第1話 マルク・ストレンジャー

この世界で『力』とは何か。数々の魔物に脅かされるこの世界で生き抜くために必要な『力』とは何か。時々、僕はそんな事を考える。



「お姉さま、僕は立派なハンターになれるでしょうか?」


「心配しないで。いつか必ず立派なハンターになれるわ」



そう言ってまた微笑みかけるお姉さまが僕は嫌いだ。それは、出来損ないの僕がお姉さまに嫉妬しているからだろう。



「ほら見て、マルク。今日はとても良い天気よ」


「はい、とてもまぶしいです。」



雲一つない青空が広がっていて、真っ赤な太陽が僕たちを照らしている。


そんな空をみて微笑んでいるお姉さまが、とてもまぶしいです。






ハンター教育機関特別指定学校。魔物に脅かされているこの状況を打破するべく創設されたこの学校の教育理念は、一流のハンターを育てること。


つまり、この学校を卒業することがハンターになるための第一歩というわけである。そのため年始には、入学試験を受けるためにハンター志望である大勢の若者たちが揃って巨大都市ルートコントリスに集まる。


巨大都市と呼ばれている地域はここを合わせて全部で四カ所ある。北にあるガンセントライン、東にあるワールガルド、西にあるバルトリング、そしてここ、南にあるルートコントリスだ。


東西南北それぞれの巨大都市に一つのハンター教育機関特別指定学校が設立されていて、数百年前まで仲が悪かった四つの巨大都市は魔物討伐という一つの目標に向かい一時休戦となっている。


ハンターという職業がここ数年で一番人気になっているのはこの世界の流れであり非常に自然なことだろう。そして僕もハンターを目指す一人であり、ハンター教育機関特別指定学校、略して「ハンター学校」の生徒である。



「今年の卒業者は以上だ。これからも立派なハンターになるため、日々精進するように」



話が終わると、右手に持っている杖で重そうな体を支えながら大きな椅子に深く腰掛けた。強面な顔が印象的で白髪のオールバックが更にそれを引き立たせている。


そう、この人こそハンター教育機関特別指定学校の学長であるバーン・エドマンド氏だ。数多のハンターがいる中、ルートコントリス歴代最強と名高い人物である。



「なぁマルク、俺らは今年もダメだったな」


「そうだね。またポイント0からって考えると憂鬱だよ」



頭を抱え込みながらうずくまるジャックを見ると僕も不安になる。このままではダメだという気持ちで頭がいっぱいになり、思考の渦にどんどん飲み込まれていく。



「本当に卒業出来るのかな・・・」


「ん、マルク何か言ったか?」



「ううん。何でもない」そう言って僕は体育館を出た。ハンター学校を入学して今年で五年。この学校の卒業制度は一年間の間に500ポイントに到達すること。


学校から出される数々の任務をこなし、ポイントを稼がなければならないのだが、簡単そうに見えて非常に骨が折れる。


実際、僕が今年で稼いだポイントはたったの340ポイント。ハンターという職業は才能だと認めたくはないが、現実がそれを強く突き付けてくる。



「あれ、マルクさんじゃないですかぁ。こんなところで何してるんですかぁ?」


「今年も卒業出来なかったみたいですねぇ。お姉さんの顔に泥を塗るマルクさーん」


「出来損ないの弟を持つお姉さんの気持ちも考えてあげて下さいよぉ〜」



外の空気を吸って気分を落ち着かせていると、後ろからドタドタと三人組が近づいてきた。名のある貴族、フランチェ家の三兄弟だ。



「あはは、そうだよね。僕も今年こそは卒業出来るように頑張るよ」



引き立った顔に愛想笑いを浮かべながらそう答える。本当はこんな三兄弟なんてぶっ飛ばしてやりたいが、力のない弱者は弱者なりの生き方をしなければならない。僕はそれを誰よりも知っている。



「まぁ頑張ってくださいよぉ。どうせ今年も卒業出来ないんでしょうけどねぇ」


「ストレンジャーの名を汚さないようにどうぞお気をつけ下さーい」


「俺たちはマルクさんと違って才能があるんですよぉ〜」



言いたいことだけ言って去っていく三兄弟の後ろ姿を見て、僕は拳をグッと握りしめた。お姉様の顔に泥を塗っているなど言われなくても僕が一番分かっている。


あのロビン・ストレンジャーの弟である僕は、ロビン・ストレンジャーの弟なりの生き方をしなければならないのだ。


優秀なお姉様を持つとはそういうことである。常に周りの目に気を遣いながら、お姉様に迷惑がかからないように生きるのだ。


それはストレンジャー家に生まれた時から、お姉様の弟になったあの日から義務付けられた僕の生き方なんだから。






卒業式が終わり、大勢の学生が体育館からぞろぞろと出てきた。これは毎年恒例なのだが、卒業式を見た後の学生たちは軍隊のように列をなして訓練所へと足を運ぶ。


他の生徒が卒業していく姿を見て、これ以上もたもたしていられないという気持ちにさせられるのだ。


巨大都市ルートコントリスにあるハンター学校の現在の生徒数は約千人ほど。年齢もバラバラで生まれた故郷も違うが、一流のハンターになるという目標は皆一緒なのだ。



「こんなとこにいたのかよ、探したぞ」



人混みの中からジャックが俺をみつけて手を振っている。短髪で赤色の髪、目元がキリッとしていて背も高い。恵まれた容姿と独特のオーラのおかげで人混みの中にいてもすぐにわかる。


そういえば入学式の時も目立っていた記憶がある。ジャックとはこのハンター学校の入学式で出会った。入学式では僕がロビン・ストレンジャーの弟だという噂が既に広まっていて変に注目を浴びていたが、そんな時に気軽に話しかけてくれたのがジャックだった。


ロビン・ストレンジャーの弟としてじゃなく、マルク・ストレンジャーという一人の人間として接してくれる人を大事にしたいと思っている僕は、すぐにジャックと打ち解けることができた。


でも、あれからもう五年。これからも一緒にジャックとハンター学校で努力を共にしたいが、今年は他のみんなと一緒にジャックも卒業するだろう。


それは僕と違って強力な『チャーム』を持っているからだ。才能という言葉はこの世で一番と言っていいほど嫌いだが、ジャックには才能がある。



「ごめんごめん。さ、僕たちも訓練所に行こうか」



ジャックは「おう!」と元気よく返事をしたが、すぐに顔を歪めた。何かあったのかと思い、ジャックの目線の先に視線を移すと、体育館裏にいる二人の女の子が複数の男子生徒に囲まれているのが見えた。


胸に付いている水晶が『1』と表示されているから今年入学した生徒だろう。いやでも、入学式は明後日のはずだが。



「ねぇねぇ、その胸に付いてる水晶が『1』ってことは今年入学の生徒でしょ。分からないことも多そうだし僕たちが手取り足取りこの学校のことを教えてあげるよ。ねぇ、いいでしょ?なんなら今から訓練所で一緒に訓練でもどうかな?」



卒業式でみんなの中の火が燃えてるって時に、新入生にナンパとは。よく見る光景ではあるが卒業式の直後に見るのは初めてだ。


訓練をしなくても大丈夫だと思っているのか、あるいはもう卒業は諦めたのか。僕たちは足を止めて複数の男子生徒の方を向いた。


このような場面を見ると放って置けなくなるのは僕とジャックの気が合う所だろう。


僕はジャックと目を合わせて頷き合った。



「ねぇジャック、あれ見て!ナンパだよナンパ!」


「おぉ、もう新入生に目つけてんのかよ!みんな見ろよ、ナンパだぞ!」



大声で周りの注目を集めてナンパを妨害しよう作戦だ。ああいう相手は話し合いが通用しない。


だからこの作戦はありとあらゆるナンパに対応した一番効率的で自分たちにあまり被害がないやり方である。


ちなみにジャックとはアイコンタクトでこの作戦が行える。


「えぇ、こんな時に最低」「ハンター失格ね」「ゴミ虫」周りにいた女子生徒たちが蔑んだような声で複数の男子生徒を罵倒し始めた。作戦成功だ。


あとは何もしなくても自分たちからナンパをやめて逃げて行くだろう。そう思い体育館裏を見た頃には、もうすでに複数の男子生徒の姿はなくなっていた。



「なぁマルク。この作戦に名前をつけるなら何て名前をつける?」



ジャックらしくない質問に僕は少し戸惑う。



「んー、ジャックはなんか良いの思いついたの?」



考えることを放棄して質問返しをすると、ジャックはニヤリと口角を上げた。



「ずばり『ナンパ殺しのテスタメント』だ。どう?」


「いや、テスタメントって言葉使いたかっただけだよね!?全く意味がわかんないよそれ!」



ジャックは、にひひと笑いながら、何事もなかったかのように訓練所へと小走りで向かっていった。卒業式の後だっていうのに、落ち込んでいる様子は無さそうだ。


それから僕もジャックの後を追うように訓練所へと向かった。





日が落ちてきて、辺りが暗くなり始めている。訓練をしていると、つい時間を忘れて自分の世界に入り込んでしまう。ふと時計を見ると午後七時になろうとしていた。



「そろそろ戻るか?」


「そうだね。寮に戻ってお風呂に行こうか」



今年から僕は寮生活だ。去年までは家からこの学校に通っていたのだが、お姉様と比較される生活から少しでも逃げ出したいという思いから家から寮へと住む場所を移した。


家にいても両親からお姉様のようになりなさいという圧を感じて落ち着けなかったのだ。



「いやぁ、本当にタイミング良かったよな。ちょうど隣の部屋が空いたんだぜ」


「僕もまさかジャックの隣の部屋になれるなんて思いもしなかったよ」



僕たちはたわいもない話をしながら寮に戻り、着替えを持ってお風呂へと向かった。


寮に住んでいる学生は、寮のすぐ近くにある大きな銭湯を利用することが出来るようになっている。


体を洗って湯船に浸かると、一日の疲れが一気に流されていく感覚に襲われた。銭湯から見える満月がさらに僕をリラックスさせてくれる。


僕はこういう時間が好きだ。嫌なこと一つ思い出さずに、ただ時が過ぎるこの時間が。


でも、本当の事を言うとお風呂はあまり好きではない。ついつい色んなことを考えてしまうからだ。


いつから僕はこうなってしまったのか。お姉様に憧れていたあの頃の僕はどこに行ってしまったのか。


そんな悩みが頭の中をぐるぐると駆け回る。でも、本当はそんなこと考えなくたってもう答えはわかっている。僕の人生の全てが変わったのは『チャーム』が原因だ。


この世界において力とはチャームだ。チャームとは、この世界の全ての人間が持つことができる固有の力である。


それは人間が五歳くらいになると発現し、各村にある聖杯堂でチャーム鑑定をすることで自分にどのようなチャームが授けられたのかを知ることが出来る。それがどんなに良い結果でも悪い結果でも。


本人の意思など無視して、僕たち人間になんの了解も得ず与えられる力なのだ。しかし、このチャームという力がなければ人間が魔物に対抗出来ないのは揺るがない事実であり現実だ。


つまり、この世界はチャームによって大きく人生が左右すると言っても過言ではないということだ。それくらいこの世界を生きていく上でチャームは重要なのだ。


ちなみにジャックのチャームは『瞬間移動』である。効果は自分を中心に半径5メートル以内ならどこへでも瞬間移動することが可能。


そして、瞬間移動をしてから次の瞬間移動をするためにかかる時間は約五秒というごく稀に発現する最強といってもいい当たりチャームだ。


良いチャームが発現すると当たりチャーム、使い道が分からないようなチャームを外れチャームと僕たちは呼んでいる。ちなみに僕は後者だ。


まだチャームを使いこなせたことがないし、そもそも僕にはチャームが発現していない。だが、この学校を卒業するためには必ずチャームを活かさなければならない。


しかし、チャームが発現するまで気長に待っている時間なんてものはない。あと三年しかないのだ。ハンター学校は入学してから八年以内に卒業しなければ強制退学という制度があるからである。


そんなタイムリミットの事は忘れてしまいたいのだが、制服の胸のあたりに取り付けることが義務付けられている水晶が、この学校を入学して何年目なのかを数字で表示しているため、常に不安感を煽られてしまうのだ。


だが、この学校に学年という概念は存在しない。この学校を入学して一年目の生徒と八年目の生徒は同じ扱い、つまり全ての生徒が同じ任務を課されるということである。


そして、生徒が卒業していく平均年数は約五年。一年目にある程度学校のこと、ポイントの稼ぎ方を覚える。二年目にどうすれば卒業できるかを考え修行し、チャームを実戦で使えるレベルまで鍛える。三年目に自分が本気でどこまで行けるかを試す。四年、五年目に卒業に向けて勝負という風にすれば、順調に五年以内で卒業できるのだ。


これは歴代のハンター学校卒業者が残した『ハンター学校の過ごし方』という本に記されていたやり方だ。


実際ハンター学校では、この本に従って行動している学生がほとんどだ。非常に効率的な過ごし方であり、何よりこの過ごし方でたくさんの卒業者が出ているのだから真似するのは必然的である。


だが、例外も少なくはない。自分のやり方で卒業しようとする物好きも当然ながら存在している。そして、そういう例外な人がとんでもない記録を打ち立てたりするのだ。


そう、僕のお姉さんであるロビン・ストレンジャーのように。


圧倒的な戦闘スキルと戦況を分析する知力、そしてチャーム『烏合の衆』がそれをより強めている。


お姉様はその類稀なセンスでこのハンター学校をわずか二年で卒業したのだ。これは歴代最速記録であり、ルートコントリスでロビン・ストレンジャーという名を知らない人など存在しないほどの人物となった。


ちなみに『烏合の衆』というチャームの効果は、仲間が多ければ多いほど自分の力が強くなるというものだ。


昔からみんなのリーダー的存在だったお姉様にぴったりのチャームというわけだ。一人では非力なチャームだが、多くの仲間と組んで戦えば天下無敵のチャームである。


それに合わせて容姿も完璧ときたらお姉様の人気は高まるばかりだ。長い金色の髪の毛が美しい容姿をさらに引き立たせていることから、ルートコントリスの人たちはお姉様のことを『金色の女神』と呼んでいる。


それほどお姉様は有名な人であり、本当に尊敬できる人だ。


そして、僕の目標だった人だ。



「おーい、さっきから死んだような目してるぞマルク。のぼせたか?」



湯船に浸かり、月を見ながら物思いにふける僕を見て、ジャックは心配そうな声でそう言った。僕は苦笑を浮かべながら返事をする。



「ごめん、また考え事してた」



ジャックはポリポリと頭を掻いて「なんでも俺に相談しろよ」と言って、湯船から出た。こういう何気ない一言が僕を勇気づけているとジャックは気付いていないのだろう。


ジャックには色々と恩を返さないといけないな。


そして僕もいつか、お風呂が好きになれる日が来ると良いな。そんなことを思いながら、一日を終えた。






朝日がカーテンの隙間から照り付けて僕を起こした。目覚まし時計を使わなくても起きられるのは特技と言って良いのか分からないが、僕は毎朝六時になると勝手に目が覚める。


これは、僕の師匠であるウーロンさんと、ハンター学校に入学するまで毎日行っていた朝練のおかげだろう。


ハンター学校に入学してからはあまり会っていないから今度挨拶に行かないといけないな。ウーロンさんの作った和菓子も久しぶりに食べたいし。


あ、お菓子作りの師匠じゃないからね。料理も出来る凄腕のハンターなんだ。かつては、あのハンター学校の学長であるバーン・エドマンド氏がいたパーティと共に依頼をこなしたこともあると言っていた。


いつも僕に自慢のように話してくるのが今ではすごく懐かしい。今はもうウーロンさんと訓練はしていないが、いつまでも僕の師匠だ。


剣の型だけではなく、たくさん力になることを僕に教えてくれた恩を一生忘れることはない。そしていつか、胸を張ってハンター学校を卒業出来ましたと言いに行こう。


ウーロンさんのことを思い出しながら身支度を済ませて僕は玄関の扉を開けた。今日は卒業式の後ということもあり、ハンター学校は休みだから一人で出かける事にしたのだが、未だに行く場所を決めていないのは僕の優柔不断さがそうさせている。


どこへ行くか散々悩んだ結果、僕はルートコントリスの城下町へ行くことに決めた。


巨大都市ルートコントリスには一つのお城が建っていて、それを僕たちは『サービア城』と呼んでいる。


サービアとはルートコントリスの現女王様であるサービア・ゴールランド様の名だ。ルートコントリスでは代々女王様の名前がお城につけられていて、サービア様のお母様であるヴァルラ・ゴールランド前女王様の時は『ヴァルラ城』と呼んでいた。


ヴァルラ様は巨大四都市の一時休戦を謳い、魔物討伐に向かって進んでいるこの現状を作り上げた張本人である。


ルートコントリスの人たちのために尽力する姿、そして常に笑顔を絶やさないヴァルラ様はたくさんの人たちに信頼されていた。


だが、それと比較されているのか娘である現女王様のサービア様はあまり良い評価をされていない。まだ女王様になって三年しか経っていないということもあるが、やはり新しい女王様への風当たりは強いのだ。


女王引き継ぎが早すぎたという声が絶えない現状の中で、この評価を覆す何かを成し遂げるのは非常に難しいことだろう。母と比較される運命、僕と少し似ている気がする。優秀な人と比較される辛さを知っているからこそ、サービア様の苦労が他の人よりもわかる気がした。


そんなことを考えながら歩いていると、そろそろ城下町に着く頃だった。白が基調になっている美しいお城を囲むように家やお店が建っていて、まさに城下町と呼ぶにふさわしい光景が広がっている。


ハンター学校は城下町よりも東側にある平原にポツンと建っているのでハンター学校の寮から城下町まで歩くと四十分程かかるが去年まで城下町からハンター学校に毎朝通っていたことを考えると、この道のりはもう慣れたものだ。



「おいマルク!久しぶりじゃねぇか!」



城下町に入ると、見覚えのある顔をした人物に声をかけられた。スキンヘッドに赤い髭がトレードマークのビルドさんだ。


遠目から見るとただの怖い人なのだが、優しそうな目がそれを緩和させている。「お久しぶりです!」と笑顔で挨拶をすると、ビルドさんは僕の倍以上の笑顔で「おう!」と返してくれる。僕の大好きな人物の一人だ。


そんなビルドさんの職業は武器屋。僕が今身につけているこの双剣もビルドさんの武器屋で買ったものだ。


昔は僕の師匠であるウーロンさんと同じパーティに所属していたハンターということもあり、ウーロンさんの紹介で初めてここに来た日のことを今でもよく覚えている。



「今日ハンター学校は休みなのか?」


「そうなんです。だから今日は城下町を一人でぶらぶらしようと思って来たんですけど、どこかオススメの場所はないですか?」



ビルドさんは「むむむ」と言った直後にハッと閃いた顔をした。



「豊作の森に行ってみたらどうだ?ちょうどミルの実が熟している時期だし、なぜか今は魔物が出てこないから安全に採取できると思うぞ」


「魔物が?それは嬉しい情報ですけど、ちょっと引っかかりますね」



豊作の森は魔物の住処から近いところにあるため十分に警戒が必要な場所なのだが、魔物が出てこないとは不思議な話だ。



「そうなんだよ、一昨日くらいから豊作の森から魔物がパタンといなくなったんだ。だからみんな豊作の森に行くなら今のうちだって大騒ぎさ」


「良い情報をありがとうございました。行ってみようと思います」



僕がそう言うと、ビルドさんは「おう、またな!」と言って大きく手を振って自分のお店へと向かって行った。


ミルの実を採取出来たらビルドさんにも分けてあげることにしよう。そんなことを考えながら僕は豊作の森へと歩を進めた。


魔物が出てこないという疑念を抱えながら。






豊作の森につくと信じられない光景があった。普段は魔物がいるため、ミルの実などの採取はハンターに依頼することでしか入手不可能になっていたのだが、明らかにハンターではない人たちがわいわいとミルの実を採取していた。


周りには城下町の警備隊が数人ほどいる程度だ。警備隊とは魔物を討伐するハンターとは違って、街の治安維持を守る事に重きを置いている職業だ。


それにしても、いくら魔物が出ないからと言ってこれは少し気を抜きすぎではないだろうか。もう少し森の奥に進めば魔物樹海だというのに。



「なんだ深刻な顔をして。魔物は出ないから心配すんなよ」



わいわいとミルの実を採取している人たちを呆然と眺めていた僕に、近くにいた警備隊が声をかけて来た。



「魔物が出ない事について、なにか明確な理由があるんですか?」



僕がそう聞くと警備隊は困った顔をして黙り込んだ。そして僕にこう言った。



「詳しい事は聞かされてないから分からないんだけど、上の命令に間違いはないはずだ」



なんとも曖昧な返答に少し目眩がしたが、この喋り方といい雰囲気といい警備隊の中でも下の方の人なのだろう。上の人から豊作の森の警備をしろと命令されただけにすぎない警備隊にこれ以上聞くことはなさそうだ。


それにしても上の人の考えが読めない。あまりに無警戒な上に警備隊の人選も適当。ビルドさんに話を聞いた時から僕の中での疑念が消えない。


確かに魔物が出ないという現象は良いことではあるし、そのおかげでミルの実を採取出来ている人がいるのは事実ではある。でも、その裏には何か大きなことが起きている気がしてならないのだ。


まぁでも、採れるものは取っておくとしよう。


それから僕は黄色の丸い果実、ミルの実を数個採取してから豊作の森を後にした。疑念が消えたわけではないが、これはあまりに無警戒すぎると僕が声を上げたところで警備が強まるとは思えない。


しかし、せっかくの休日を有意義に過ごすつもりが考え事ばかりしてしまっているな。僕が何をしたって変わらないことを考えていても意味がないという事に、気づいているようで気づいていない自分を無理矢理気づかせて僕は考えることをやめた。



「よし、何かおいしいものでも食べに行こう」


「ちょっと待った。それミルの実でしょ?少しわけてくれない?」



城下町にある繁華街に向かおうと足を踏み出した瞬間、後ろからフードを深く被って顔を隠している人物に声をかけられた。


声から判断すると恐らく女性だろう。全身ローブ姿にフードで顔を隠し、ほとんど口元しか見せないその女性は怪しいという言葉がお似合いである。


そんな女性に少し不信感を覚えながら僕は恐る恐る返事をした。



「ミルの実なら豊作の森に行けば手に入りますよ。今は魔物が出ないらしいので簡単に採取できると思います。」


「知ってる。でも豊作の森には行けないの。」



そう言った後、その女性が強く唇を噛み締めているのが見えた。何か聞いてはいけないような事情があるみたいだ。


口元しか見えない女性の表情が今どのように変化しているのかが見えないのに分かる気がした。そして、これ以上この女性に踏み込まないようにしようと決めた。



「分かりました。三つでいいですか?」



「三つ!?いやいや、一つでいいわよ。」



慌てたようにして手をぶんぶんと振るローブ姿の女性。そして僕がミルの実を一つその女性に分けると、少し微笑んで振り返った。


口元と身振りだけしか見えないが、それだけでこの女性の感情が手に取るように読み取れた。案外良い人なのかも知れないと僕の勘がそう言っている気がした。


そして、ローブ姿の女性は去り際にこんなことを言った。


「ありがと。え、あなたすごく恵まれたチャームを持っているのね。またどこかで会えそうね。」



そう言われた瞬間、時が止まったような感覚に襲われた。そして、その一瞬の間に様々な疑問が頭の中をぐちゃぐちゃにする。


だって僕は生まれてから今日まで一度も、チャームが発現していないのだから。


そして、仮に僕がチャームを持っているとして、なぜそれが分かるんだ。相手のチャームが分かるチャーム?そんなチャームが存在するのか?


考えすぎて頭がパンクしそうになるのを必死に堪えるが動揺が収まらない。


そして、不自然なことに気がついた。なぜか自分の口角が上がっているのだ。チャームが使えない事を馬鹿にされていた僕にとって、恵まれたチャームを持っていると言ってくれたその言葉がとても嬉しかったのかもしれない。


嘘か本当かもわからないこの言葉に僕は救われた気がした。馬鹿だと思われるかもしれないが、恵まれたチャームを持っているという言葉は僕にとってそういうものなのだ。


そして僕が再び顔を上げる頃には、そのローブ姿の女性は目の前から消えていた。






食パンにイチゴジャムをたっぷりのせて豪快に頬張るといういつもの朝の光景を眺めながら僕は昨日あった事をジャックに話した。


口元についたイチゴジャムをぺろっと舐めながらジャックは難しそうな顔をしている。そして「ふぅ」とため息をついた後、清々しい顔で僕にこう言った。



「まぁ、あれだろ。新手の占い師かなんかだと思うぞ。もし本当にその人が『人のチャームが分かるチャーム』を持っているなら怪しいローブ被って街でこそこそしてるのはおかしいだろ。そんなチャームを持っている人なら、ハンターギルドからオファーが絶えないに決まってる」



ジャックにしては筋の通った理論で少し呆気にとられてしまったが、ジャックの言う通りだろう。適当に言った嘘という可能性の方が実に現実的である。


どこの誰とも知らない人の一言で勝手に舞い上がっていた自分が少し恥ずかしい。仮に僕が少しでも恵まれたチャームを持っている可能性があるなら話は別だが、僕は生まれてから今まで本当に一度もチャームの可能性を感じたことがない。


僕にある力はハンターとしての知識と、ウーロンさんに教わった剣術。ウーロンさんはチャームを使えない僕にチャームなしでも戦えるハンターという生き方を教えてくれた。


そのおかけでハンター学校の試験は無事合格。チャームなしでも意外と頑張れるのではないかという興奮が僕の心を燃え滾らせた。


しかし、現実は甘くなかった。というより、魔物の強さを少し舐めていた。今ではジャックと協力することでなんとか魔物を討伐することが出来ているが、入学当初は魔物の中でも危険度が一番低いトカゲ型の魔物「リザード」でさえ、僕は歯も立たなかった。


それはハンター学校を入学してすぐ、ある程度の力を見るため一年生だけでランダムに編成されたパーティと複数の先生で初めての魔物討伐に赴いた時の事である。


あのロビン・ストレンジャーの弟である僕に注目が集まっていただけに、僕の無力さはすぐにバレる事になってしまったのだ。


ハンター学校を入学し、浮かれていた僕が本当に無力だという事を再確認させられた瞬間である。だからこそ、そんな僕に恵まれたチャームを持っていると言ってくれたあのローブ姿の女性が気になるのだ。



「そんなに気になるんだったらさ、城下町にある聖杯堂にチャーム鑑定しに行ってきたらどうだ?もう長いこと行ってないだろ。」


「聖杯堂かぁ。」



言われてみれば僕はハンター学校に入学してから一度も聖杯堂を訪れていない。入学する前は何度も聖杯堂でチャーム鑑定をしていたのだが、何も結果が出ない辛さにもう耐えられなくなったのだ。


僕にとってチャーム鑑定とは、もしかしたらチャームが使えるかもしれないという期待を完全に消滅させられる瞬間なのだ。


そんな屈辱を味わいたく無いがために僕は聖杯堂を避けていたのだが、このタイミングで一度行ってみるのもありかもしれない。



「そうだね、放課後は自主練する予定だったけど聖杯堂に行くことにしてみるよ。」



そう言ったあと、僕とジャックは講義を受けるため教室へと向かった。ハンター学校では毎週水曜日は魔物討伐の依頼をこなすことが禁じられているため、代わりにハンターの知識向上のための講義が行われるのだ。


しかし、ハンター学校に入学して一年目や二年目の学生の出席率は高いが、三年目以降の学生の出席率はかなり低い。


それは単純な話で、一年目と二年目にある程度の講義を終えてしまうのだ。


ではなぜ、ハンター学校を入学して五年目の僕たちがわざわざ講義を受けるのか。それは、ためになる話は何回聞いても損にはならないからである。


僕たちの他にも同じ考えを持っている三年目以降の学生はちらほら講義に出席しているが、それでも数人程度である。それ以外のほとんどの三年目以降の学生は、水曜日は休みという認識になっているのだ。






講義が終わったと同時に、僕は足早に城下町にある聖杯堂へと向かった。白と黒がアシンメトリーに彩られた外観で、入り口の上あたりに大きな十字架が掲げられている。


ここには嫌な思い出しかないため、今まで避けて通っていたのだが、久しぶりに見るとまた嫌な思いがふつふつと湧き上がる。



「すいません。チャーム鑑定を受けたいんですけど」


「あ、はい。少々お待ちくださいね」



僕を見るなり、受付の人は驚いた表情をして奥へと引っ込んで行った。失礼な反応だが仕方がない。僕のように十九歳にもなる人がチャーム鑑定を受けに来るのはおかしな事なのだから。


周りを見る限り五歳くらいの子供が数人いて、場違い感をさらに強める。



「では、こちらの部屋にお入りください」



女性の案内人に五畳ほどの狭い部屋へと案内された。部屋の真ん中には小さな水晶が置かれている。それを触るだけで自分が持っているチャームが分かる仕組みになっているという説明をしてもらうが、何回も受けたことがあるのでもう分かっている。


嫌というほど受けたその儀式を前に緊張と悪寒が交互に襲ってくる。僕はその案内人が話し終わるのを待ち、一度深呼吸をしてから恐る恐るその水晶に触れた。


その瞬間、水晶は強い光を放ち、その眩しさに僕は目を閉じた。そして次に目を開けるころには光は収まっていて、代わりに水晶に文字が記されていた。『不明』と。はっきり見えているが、目を擦ってもう一度よく見る。


しかし、結果は変わらず『不明』の文字とにらめっこをするだけだった。分かっていたことだが、何とも言えない感情になってしまっているのは、やはり今回はもしかしたらという期待感が少しばかりあったのかもしれない。いや、あったのだ。


それから僕は案内人の女性に「ありがとうございました」と苦笑を浮かべながら伝え、僕は聖杯堂から逃げるように去った。


しかし聖杯堂から出た途端、案内人の女性に引き留められた。



「あ、あの。えーと、マルクさん」



何かを言おうとしてもじもじしている様子だ。いったい何の用だろうか。三十秒ほどの沈黙の時が流れ、そろそろ言い出せるのかと思った瞬間。


聖杯堂の中から怖い顔をした男性が出てくるなり、その女性を連れて中へと引っ込んでいった。凛々しい顔つきで、いかにも紳士という容姿だが、怒りでそれが台無しになっている。



「一体何だったんだ?」



必死に何かを伝えようとしていた女性の姿を思い出し、疑問で頭が混乱する。僕に助けを求めていたような。いやでも、僕がチャームを持っていないことは案内人だったから分かっているはず。


そんな貧弱な僕に助けを求めるだろうか。僕は必死に他の理由を考えるが何も出てこない。



「どうしたマルク?深刻な顔して」



聖杯堂の方を見ながら一人で考え事をしていたら、偶然前を通りかかった武器屋のビルドさんに声をかけられた。


いつもニコニコしている姿が相変わらずで少し表情が緩む。


僕は今聖杯堂で起こったことをビルドさんに説明すると、何かを知っているような顔をしてこう言った。



「ここの聖杯堂を仕切っているのはだれか知っているか?」


「いや、知らないです」


「いいかよく聞け、ここを仕切っているのはランスロット家の一族だ。有名貴族でありハンターとしても名のあるランスロット家は、最近最も勢いのある一族として最近注目されているんだ。だがな、すげぇ嫉妬深い一族とも呼ばれている。他の一族には絶対に負けたくないという執着心から揉め事を起こすことが多々あるんだよ」



有名貴族ランスロット家か、そういえばランスロット家の一人息子であるニコラスという優秀な同級生がいるとお姉さまが言ってたような気がする。


もしかすると、あの怖い顔をした凛々しい顔の男性がそのニコラスなのかもしれない。



「なるほど、そんなランスロット家が仕切っている聖杯堂に雇われている人との間に、何か揉め事があってもおかしくないという事ですね」



ビルドさんは「そうだ。物分かりが早くて助かる」と言ってけらけらと高笑いしている。そんなビルドさんの緩い表情と話からするに、僕はあまり聖杯堂の前を通ることがないからこういう場面に出会わなかっただけで、割と頻繁にある事だったのかもしれない。


雇い主とその従者が揉め事を起こすなんてことはよくある話だ。自分に助けを求めているのではないか、という勝手な思い込みで深刻に考え込んでしまった僕は実に自意識過剰だなと少し恥ずかしくなったが、済んだことなので仕方がないと割り切って水に流すとする。


自分にはやはりチャームがなかったという事実も一緒に。


それから僕はビルドさんに別れを告げ、寮へと戻った。昨日は休みで今日は水曜日だったため、僕のハンター学校五年目最初のハンター依頼は明日からだ。


正式なハンターになるまでハンター学校の学生は学校から出される依頼でしか魔物との戦闘を認められていない。


そのため、多くの学生は学校に設備されている訓練場を利用しているが、みんなもそろそろ自分の力を試したくてうずうずしている頃だろう。


実際僕もそうである。チャームが使えないと弱音ばかり吐いて過ごしていたわけではないのだ。魔物の習性、弱点、味方とのコンビネーション。そしてウーロンさん直伝の剣術が今の僕のチャームであり僕の戦い方である。


魔物にやっと対抗できるようになってきた僕は今年が本当の勝負なのだ。正直、ジャックには申し訳ないと思っている。『瞬間移動』という当たりチャームを持っているにもかかわらず、僕と組んでいるが故にポイントを稼ぐ効率が非常に悪くなってしまっているのだ。


他の人と組んでいればもっと早く卒業することが出来ただろう。でも、ジャックにこの話をするといつも悲しそうな顔をして「そのことは気にしなくてもいい」と言ってくれるため、少しジャックには甘えてしまうが、今年こそは必ず卒業すると自分の胸に誓うことにしよう。


僕は少し手のひらに力を入れて、気合を入れるため両頬をパチンと叩いた。






巨大な体育館の壁一面を大きな掲示板にして、そこに大量の張り紙が張ってある。そこには依頼内容とポイントが記載されていて、みんなが自分の身の丈に合った依頼を探していく。


そしてその依頼には難易度が設定されていて、『Aは5ポイント、Bは3ポイント、Cは1ポイント』という風になっている。


僕たちはBの難易度で精一杯なので、今はB以外の依頼を探しているところだ。


さまざまな依頼がある中で、僕たちが探しているのは魔物の討伐依頼だ。薬草などの採取依頼はほぼ難易度Cのため、一年生や二年生の学生に人気がある。


しかし、卒業を目指している僕たちのような学生は難易度Bの魔物の討伐依頼に目をつけているわけだ。見た感じ500ポイントとか案外楽勝じゃないかと毎年思ってしまうが、それは最初のうちだけである。


その理由は、この掲示板は更新されず、一度達成した依頼は再びこなすことが出来ないというシステムだからである。


最初は自分に合った依頼をこなして、スムーズにポイントを稼ぐことが出来るが、徐々に自分には達成できそうにない依頼ばかりのこってしまい最後の方はポイントを稼ぐことが出来ず、足止め状態になってしまうのだ。


僕も去年まではそうだった。そして気づかされた。このポイント制度は、300ポイントを稼いでからが本当の勝負になるということに。


僕はジャックと効率よくポイントを稼ぐことが出来る依頼を手分けして探し、手元にあるメモ帳に書き込んでいく。


僕は右端から、ジャックは左端から真剣な表情で黙々と書き込む。ちょうど掲示板の真ん中あたりに来たところで、ジャックの様子を見るとジャックもそろそろ終わるころだった。



「今年も苦労しそうな依頼が多いなぁ。そっちはどうだった?」


「こっちも同じ感じ。まぁでも最初は去年のように効率よくいこうよ」



ジャックは「そうだな」と言い、背中に背負っている少し長めの片手剣を手に取り、ギラギラとした目つきでそれを眺めている。ジャックの気合も十分という事だろう。


ジャックが片手剣を使っている理由は『瞬間移動』のチャームによる機動力と一番相性が良いからだという。普通片手剣の最大の利点は盾を持てることにあるのだが、そもそもジャックは攻撃を『瞬間移動』でかわすことの方が多いため盾は逆に邪魔になってしまうらしい。


そんなジャックを見ると、入学試験の時に大きな大剣をぶんぶん振り回していたことを思い出してしまい笑ってしまいそうになる。


入学試験は受験生同士の対人戦なのだが、戦闘経験がなく剣術が初心者だったジャックはチャームの力だけで勝利していたのだ。


僕は全くの逆で、ウーロンさんとの修行で鍛えられた対人戦と剣術でなんとか勝つことが出来た。あの時はまだチャームをうまく使いこなして戦う受験生の方が少なかったのが幸いだった。


だが、僕がロビン・ストレンジャーの弟と知っている連中が『ストレンジャーの弟は入学試験でチャームを使うまでもないと思っている』という噂を勝手に広められてしまい、入学してから少しの間は生意気だと一部の学生から反感を買う事になってしまった事が今ではすごく懐かしい。


でも、それからすぐに僕がチャームを持っていないという噂も広まったため、僕は一気に生意気キャラから落ちこぼれキャラへと変わっていったのは長い思い出である。


ジャックが片手剣を見る動作がきっかけで過去の事を思い出してしまっていた自分の頭をリセットし、僕もそろそろ戦闘モードへと気持ちを入れ替える。


「さぁ、行こうマルク。戦いたくてうずうずしてきたぜ」


「うん。ありがとうジャック。一緒に卒業しよう」


僕たちは準備が完璧になったことを確かめ合い、足早に魔物が生息している魔物樹海へと向かった。

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