【完結しました!】そのデスゲーム作ったの、俺です。 ~会社をクビになったのでスローライフを始めたのに、やたらと命を狙われるため全て返り討ちにします~
五木友人
プロローグ
第1話 デスゲームって実在するんですか?
『これから皆様には、命を
ふかふかのお布団で寝るのが俺の信条だと言うのに。
なんということでしょう。
目覚めると、そこは固い床の上だった。
起き抜けにこんなアホらしいセリフが聞こえてきたら、誰だって夢か、寝ぼけているのか、そのどちらかを疑う。
ちなみに俺は後者でした。
「あれ? ここ、どこ!?」
「どうなってんだ!? なんだよ、この状況!?」
「ざっけんな! てめぇ、ざっけんな、おらぁ!!」
「どうしたんだよ。僕、どうしちゃったんだよぉ」
ただ、寝ぼけた頭でも、合理的な思考と言うものは働くらしく、俺と同じ疑問を覚えている者が、自分以外に4人もいるとなると事情が変わる。
こんな良く出来た夢を見るほど、俺の想像力は豊かではないのです。
真っ白なコンクリートの部屋。
扉はあるが、普通に考えて開かないだろう。
あと目に付くものと言えば、スピーカーとカメラ。
あのスピーカーは業務用のヤツで、結構良い値段がしたはずだし、パッと数えただけで8台もあるカメラ、そちらも見るからに高そうだった。
特筆すべきは、足元である。
俺が、そして他の人たちが座り込んでいる床は、何やら特殊な素材で出来ているらしく、一見するとプラスチックのようだった。
そして、目を凝らすと、奥にはライトのような、照明設備が見て取れる。
ここで俺は少しばかりの既視感を覚えた。
何かが引っ掛かる。
部屋の探索は戸惑った、あるいは苛立った、もしくは怯えた、そして興奮した、三者三様ならぬ、四者四様の男女4人にお任せしよう。
俺は彼らが有益な情報をもたらすまでに、記憶を整理する必要があると思われた。
俺は高校卒業後、とあるゲーム会社に就職した。
規模は大きくない、いわゆる下請けの企業だったが、卒業直前に進路を就職に切り替えた俺にとって選択肢は少なかった。
別にゲームに興味があった訳ではないが、給与が高額であると言う、その一点のみが俺の興味を引いた。
企画部に配属されて、何の経験もないのにゲームプランナーを拝命した時は「この会社、正気かな?」と思ったけども、手当てが付くと言うので黙っておいた。
お金は大事です。とっても大事。
どうも、ゲームの企画を出す仕事は、俺に向いていたらしかった。
例えば「四角い部屋の中で出来る脱出ゲームを作れ」と上司に言われると、割とすんなり作ることが出来たし、あとはそれを繰り返すだけだった。
そうして俺は、約5年間、それなりの評価をされて、それなりの給料を貰い、ある日突然クビになる。
理由は確か、「お前の企画したゲームに重大な欠点が見つかった」とかなんとか。
「確認させてください」と言うと「それはできない」の一点張り。
いい年してマッシュルームカットの上司と水掛け論をしたところで楽しいはずもないし、何より特に未練もなかったので、その日のうちに辞表を書いた。
退職金が思ったよりもあったので、むしろこれは好機だったとも言える。
よく分からない理由でクビになったのに退職金はくれる、ブラックなのかホワイトなのか本当によく分からない会社よ、さようなら。
預金口座には割と余裕があるし、俺には家族がいないので養う相手もおらず、次はのんびりと自分のペースで仕事をしたい。
そう思っていたところ、俺の事を何かと気にかけてくれる
「使ってない土地が結構あるんだけど、農業に興味はないかね?」
世の中、意外と上手いことできている。
渡りに船だった。
元々、ゲーム会社でコツコツ作業するのは苦にならなかったし、ひょっとすると俺には農業が向いているのではないか。
「やります。ありがとうございます」
熟考を重ねたとは言えない5分間が経ち、俺はスマホを手に取った。
すぐに折り返しの電話を掛けたところ、あまりの即断に伯父が軽く引いていた。
ああ、俺の名前です。
ローマ字で自分の名前を書くとえらいことになるので、クレジットカードを見る度に憂鬱になる。その程度のありふれた男。
そんな俺の23歳、初夏。
憧れていたスローライフの始まりであった。
農業は、俺の性分に合っていた。
ご飯に鳥の唐揚げ。ビールに枝豆。サンマの塩焼きに大根おろし。
これらに匹敵する一体感。
俺は、天職を得たと知る。
この年で
奇跡を越えていっそセクシーである。神に感謝も忘れずに。
そこで現在直面している問題と対峙する。
玉ねぎの出荷作業をしていたはずの俺が、なにゆえこんな所に。
俺の倉庫はどこですか。
もう、拉致された事は受け入れよう。
玉ねぎ10キロの納期は明日なのに。今は何時だ。
皮むき用のエアーコンプレッサーのスイッチは切ってくれましたか。
倉庫の施錠は? トラクター盗まれたらどうしてくれるのですか。
冗談ではない。
帰ろう。一刻も早く。玉ねぎが俺を待っている。
「何か見つかりましたか?」
俺は、スーツ姿の男性に声を掛けた。
「ダメだね。驚くほどに何もない」
「なるほど。そちらのお兄さんはどうですか?」
スーツがダメなら、タンクトップの男の人だ。
「ああんっ!? 扉をさっきからガチ蹴りしてっけどビクともしねぇよ! つか、お前座ってんじゃねぇよ! 楽しようとすんな!!」
「なるほど。ごもっとも」
口は悪いが行動力抜群の彼によって、まず1か所しかない出入口が塞がっている事実を確認。
まあ、最初から開いているとは思っていなかったが。
それでも確認は大切な作業である。
それならどうしたものかと思っていると、計ったかのようなタイミングでスピーカーから声がする。
『皆様にやってもらうのは、我が組織が作ったデスツイスターゲームです。今から、床のパネルに色が付きます。私の指示に従って、指定した色のパネルに乗って下さい』
おや? と思った。
何だか覚えのあるルールであり、その間抜けな名前にも心当たりがあった。
そうだ、「名前付けるのは俺の管轄外」と、適当に仮名で提出した記憶がある。
『時間内に到達できなかった場合、また、時間が来た際、指定の色以外のパネルに乗っている場合は、ふふふ。高圧電流の餌食になります』
床、プラスチックっぽいのに?
もう一度確認してみると、細い銅線がしっかりと張り巡らされていた。
でも、靴履いてたら意味ないんじゃないのか。
『靴は脱いで、裸足になって頂きましょう。拒否権はございません。指示に従って頂けなければ、あなた方は出られないのですから』
俺の思考に一歩遅れて情報が付随されていく。
『ゲームは全部で計5回行います。生きてその部屋から出たければ、精々ゲームに集中することです。ああ、言い忘れましたが、他人を妨害してはならぬ、などと言う無粋なルールはありませんので。ご自由に』
「ざっけんな!! てめぇ! ぶっ殺すぞ!! ああ!?」
血気盛んなタンクトップが怒りを爆発させる。
カメラを通してこの部屋を見ている者はさぞかしご満悦だろう。
俺は、とりあえず目立たないように、こっそりと、壁をぐるりと一周、色々と調べながら回ってみた。
そして、納得のいく成果が得られた。納得してしまいました、俺。
俺は
頭の中で、起きている事象を丸めて作った謎のおにぎりを、記憶中枢にガブリと食わせたところ呆気なく正解が顔を出した。
事情はまだ飲み込めないが、一つだけ確かな事がある。
——そのデスゲーム作ったの、俺です。
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