最凶な妹と天才な妹
私はフィーリオンにつきました。
馬車から降りて地図を見ながらフィーリオン剣士学園を目指します。
ですが……歩いても歩いても全然目的地にはつきません。
もうついても良い頃なのに。
お兄様から地図の読み方を教わったのにいきなりつまづきました。
そこで凄く美人なお姉さんが走って来ました。
急いでますね……けど……お兄様と雰囲気が似ていますし優しそうな人なので助けてくれそうです。
お兄様は初対面の人に子供らしく相手が気楽に話せるように会話するのも大事だと言っていました。
私は勇気を振り絞りお兄様の言葉を借りることにします。
「ねぇ、お姉さん」
こんな感じですかね。
「何かな?」
急いでいるのに足を止めて私の話を聞いてくれるみたいです。
本当に優しくてキレイなお姉さんです。
「フィーリオン剣士学園って何処だっけ? 地図ではたぶんこの辺りなんだけど」
お姉さんは私の地図を見ながら少し困った顔をしています。
私は地図で見たフィーリオン剣士学園がある方角を指差します。
「あっちかな」
困った顔をしていたお姉さんはにこやかに笑うと。
「私も今からそこに行くの」
「ふ~ん」
私も連れて行って欲しい!
「連れて行ってあげようか?」
やっぱり優しいお姉さんだったみたいですね、連れて行って貰えるそうです。
「お願いします」
私は失礼のないように感謝の気持ちを込めてお辞儀をします。
「きゅい!」
アリアスちゃんがリュックから出てきて私の左肩に乗ってきました。
リュックの中よりは外の方がいいですよね。
お姉さんはアリアスちゃんと私を見比べながら目を見開いています。
ドラゴンが珍しいのでしょうか? 私みたいな子供にドラゴンが懐いているのが珍しいのでしょうか?
「お兄ちゃん?」
お姉さんは私の顔色をうかがうように小さい声で呟きました。
私に言ってるみたいですけどお姉さんは誰かと勘違いしてるみたいです。
私はお姉さんの勘違いを気にしてないと言うように精一杯の笑顔をつくります。
お兄様の笑顔を見ていると安心感があるから、お兄様を真似て。
「私はフランです」
強い風が一瞬吹いて来ました。
「そ、そう……」
お姉さんは少し寂しそうな顔をしていました。
お姉さんの寂しそうな顔はキュッと胸が締め付けられます。
「私はリリア、リリア・フィールド。よろしくね、フランちゃん?」
家名が一緒です! 偶然ですが、少し嬉しくなりました。
そしてフランちゃん? の部分で少し疑問顔でした。
お兄ちゃんと言われましたし、男の子と思われていたのですかね? ショックですね。
「私もフラン・フィールドです、リリアさんよろしくお願いいたします」
「フランちゃんは他人とは思えない、何処かで血が繋がっていたりしてるのかもね。よく見たら全然お兄ちゃんじゃなかったよ、雰囲気は凄く似てるんだけどね……ごめんね、勘違いしちゃって」
「誰でも間違いはあるから、そこを怒るのは筋違いだとお兄様も言っていました」
「もうそろそろ移動しよっか」
リリアさんが歩き出したので私もついていく。
「フランちゃんにもお兄ちゃんがいるのね……羨ましいよ」
「リリアさんのお兄様はどうしたのですか?」
「消えちゃった、かっこよく世界を救っちゃってその後に」
リリアさんは首元にある銀色のネックレスに手をかけています。
冒険者のプレートに似ているけれど、私のと比べると装飾が凝られています。
「これはお兄ちゃんの冒険者プレートなの」
クラスの高い冒険者だったのでしょうか。
リリアさんのお兄様は凄く強いんですね。
私のお兄様も負けてはいません、剣聖様や魔王を簡単に倒せてしまうのですから。
「リリアさんはお兄様が好きなんですね」
「そうだね、早く帰ってきて欲しいんだけど……ついたよ」
リリアさんの声に前を向くと私の目の前にフィーリオン剣士学園がありました。
「私はここの教員だから、フランちゃんは新入生だよね」
「はい!」
リリアさんはお兄様が言っていた先生というものでしょうか。
「試験は私が受け持つから一緒にコロシアムまで行こうか」
優しくてキレイな先生。
お兄様、私は頑張りますね。
「やっとついた! 合ってるよな! いやマジでこの地図どうなってんだよ、全然つかない。なんで間違ってる事をお前は言ってくれないだよ! 絶対笑ってただろ!」
私達の後から来た、少し珍しい黒髪黒目の男の子は学校を見つけた事にはしゃいでいました。
「案内するなら最初からやってくれよ」
独り言のように喋っている男の子。
「ぐっ! まぁアイツと途中ではぐれたのは俺だけど……あっ!」
そして私達が見てる事に気づくと男の子はそそくさと挙動不審になりながら横を通っていきます。
「待ってください」
何故かリリアさんが男の子に声をかけます。
ビクッとなりながら足を止める男の子。
「貴方名前は?」
男の子はこっちの方を全然見ないです。
「クレスです」
リリアさんは目を見開いて驚いてるようでした。
私もビックリしました、お兄様の名前と同じ事に。
「え、え~と……試験に遅れるので!」
「ま、待って!」
クレスさんはリリアさんの静止の声を無視して走り出しました。
「リリアさん?」
「なんでもない、あの子の雰囲気がお兄ちゃん似ていただけだよ。今日は不思議な事ばかり起こっちゃう」
リリアさんは少し困ったように笑っています。
「さすがに寂しいのかな、誰でもお兄ちゃんに見えちゃってる……クレス君ね、名前まで同じなんて」
「えっ? 私のお兄様もクレスですよ」
「偶然ね、私のお兄ちゃんもクレスよ」
「リリアさんは他人とは思えないです!」
「私もフランちゃんとは他人と思えなくなってるよ」
リリアさんの笑顔は凄く可愛くて私が男の子だったら惚れています。
でも私はもうお兄様に……。
「熱でもあるの? 少し顔が赤くなってるよ」
「い、いえ、なんでもないです」
「そう? じゃあ行こっか、あの男の子の事も気になるし」
私達は試験の為にコロシアムに移動するのでした。
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