さいきようの敗北
「地獄で後悔しろよ」
触れ合う黒剣が徐々にトウマの首もとに迫る。
「俺の妹に手を出そうとしたことを」
トウマはクレスの低い声とプレッシャーに一歩後退する。
「うるせぇぇぇぇぇ!」
触れ合っていた黒剣を弾き、二人の戦闘が始まる。
トウマとクレスがぶつかり合う度に周囲が弾け飛び。
金色と虹色のオーラが後から二人を追っていく。
トウマは剣を真上に掲げ、無属性の魔力を剣に溜める。
歴代勇者最高火力の一撃を繰り出すために。
『無の一閃』
無属性の透明な光と虹色のオーラが混じりあい、キラキラと空を彩るように真っ直ぐに伸びていく。
これで勝利は決まるとニヤついた笑みを浮かべながら振り下ろすトウマ。
上から振られた大振りの剣を下からクレスが弾き飛ばす。
弾き飛ばされた虹色の剣は粒子を残しながら消えていく。
トウマは呆気なく『無の一閃』を弾かれ、無防備になった。
クレスの斬撃がトウマの左肩に深々と刺さり、そこから斜めに斬り下ろす。
さらにクレスの黒剣が左下から右肩にかけて深い斬り傷を残す。
また一撃、一撃、一撃、乱舞の様に振るわれる無音の黒剣。
乱舞が終わると。
トウマは砂浜に膝をつき、トウマを中心に赤い水溜まりが出来る。
痛い、怖い、強い。トウマは久しぶりに味わう痛みや想いで恐怖する。
相手は自分を殺せる力を持っていると。
そして最狂は思う、もう油断はしないと。
『リミ、テッド、アビリ、ティー』
右手に虹色の剣が姿を現す。
「うぉぉぉぉぉ!」
トウマは雄叫びを上げると全身にどす黒い虹色のオーラルを纏う。
『
トウマが立ち上がると致命傷だったダメージが嘘の様に無くなる。
『自己治癒』
クレスはその異様な回復力に驚くが油断なく黒剣を構える。
『ダークインパクト』
トウマは無詠唱で闇属性神級魔法を放つ。
『ホーリーバースト』
光属性神級魔法の同時発動。
クレスの真上で闇が圧縮され、クレスの周りに光の玉が複数現れる。
圧縮された闇が放たれ衝撃波を生み、光の玉からクレスを貫こうと光線が出る。
クレスは円の様に黒剣を振るう。
無音の斬撃が全てを無効にする。
魔法を纏っていない剣が魔法を無力化したことにトウマは驚きの顔を見せる、だが戦闘を止めることはない。
トウマはオーラル、
トウマは今出来る全ての力をこの魔法に注ぎ込む、剣の勇者に勝つために。
『自動回復』
魔力を最大まで回復する能力。
『リミットブレイク』
魔法のリミットを上げる能力。
『リミット・アップ』
魔法にどれだけの魔力を込めても発動が出来る能力。
『属性同調』
属性の概念を捨て、全ての魔力を統合する能力。
『神の調律』
どの魔法のコントロールも完璧にする能力。
『魔力光』
全ての魔力の質を最大まで上げる能力。
『特定』
範囲魔法、魔法を確実に特定した者に当てる能力。
『神の領域』
一定時間、魔法による干渉を受けないエリアを作る能力。
『シャイニング・フレア』
光属性神級魔法。
スキルで強化された空を多い尽くす程の太陽がクレスに向かって放たれる。
トウマは全ての力を出したのか『神の領域』の能力で出していた緑色の膜の中で膝をつき、虹色の纏っていたオーラルも姿を消す。
クレスの真上に現れた太陽は周りを焼き、触れてもないのに木は灰になる。
海は瞬く間に蒸発していき、砂浜の砂も溶けたように無くなっていく。
そんな魔法を越えた魔法を放たれたクレスは強化された魔法を見上げながら一人言を呟く。
「魔法も纏っていない魔力抵抗のない人間は魔法を纏っている魔力抵抗のある人間には到底かなわない」
トウマは笑うことは出来ない、クレスは自分を殺せる敵だと認識しているのだ。
クレスから目を離す事が出来ない。
「じゃあなぜ魔力もない俺がこの世界で最強だと言われてるか分かるか?」
トウマもそれは初めから気になっていた、だがこの世界の奴が弱いんだろうと決めつけていたのだ。
だが今は違う、クレスは同等以上に強い。
「答えは決まっている」
トウマはゴクリと喉を鳴らす。
クレスは黒剣を太陽に向かって投げる。
熱を斬り裂きながら進む黒剣。
黒剣は太陽に突き刺さるが粒子になり消えようとしている。
『リミテッド・アビリティー』
何もない空間からもう一本の黒剣を召喚する。
クレスは太陽と距離を詰めるように飛ぶと刺さっている黒剣を押し込めるように斬撃を叩き込む。
一本の金色に煌めく黒剣が太陽を貫く。
太陽は辺りに熱と衝撃波を撒き散らしながら貫いていった黒剣と共にキラキラと粒子になり消えていく。
『俺に魔法は効かない』
魔法も纏えない、魔力もない人間が、自分が今出来る最大の魔法を打ち破った事にトウマは動揺を隠せない。
『俺は剣の勇者だからだ』
地面に着地してクレスの一人言が終わる。
クレスは今までのどんな魔法よりも強力な魔法を消し去るのに全ての力を使い立っているのもやっとだ。
右腕は火傷を負って右目は熱にやられたのか見えていない。
左目は微かに見えるがモヤがかかっているように見えづらい。
虚勢を張るのがやっとだ。
あんな魔法を無力化なんて出来るはずがない。ダメージを見た目にあまり残さないように軽減することは出来た。
「俺の負けだ、だが……」
トウマは負けを認める。
今、自分に向かって剣を振られたら死ぬかもしれない恐怖でガクガクと震えながら立ち上がるトウマ。
トウマは空気中の魔力を吸収する。
『魔力吸収』
あれだけの魔法が放たれた後だ、空気中には魔力が溢れているだろう。神級魔法を『リミット・ブレイク』で強化させてもお釣りがくる位の魔法を放てる。
残念だがクレスにはトウマとの距離を詰める程の力は残っていない。
「魔法が効かない? 触れる事が出来ない魔法ならどうだ!」
クレスは現象していない魔法は斬れない。
それを直感で確信し安堵したのかトウマの震えがなくなる。
『ごめんなリリア』
クレスは目をつむりトウマの魔法を受け入れる。
『世界から消えろ』
クレスの真下に巨大な魔法陣が現れる。
『パラドックス・タイムテーブル』
魔法陣が虹色の光に輝きクレスを包み込む。
次元、時間軸を歪める魔法がクレスに向かって放たれるのだった。
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