地図
「ソーダ待てよ~」
「キュイキュイ」
俺は空を飛んでるソーダを追いかける。
あははは。
夕日でオレンジ色に染まる海をバックにキラキラと水しぶきがあがる。
「キュイ~」
ソーダはまだそんなに速度を出せない、ふらふらと心配になるぐらいに不安定な飛び方だ。
メディアルは海に近いということもなく、たしか凄く離れてたと思う。
一言、言いたい。
『ここどこ!』
フィーリオンを出てもう二週間近くなるが今だに迷っている。
日本にいた頃ならあのコンビニの横を通ってあの目立つ看板を左にとか思い浮かべやすいが……。
異世界に直すとあの大きな木の横を通ってあの大きな木から左に~とかになるだろうか? 木しかねぇ~よ!
方向音痴が迷いそうな罠『こっちの方が近いんじゃね?』を使ってしまった俺は後悔していた。
「ソーダはどっちに行けばメディアルに行けると思う?」
「キュイ?」
ソーダは首を傾げてパタパタと羽を動かしている。
「わかんないよな~」
俺は浜辺に座りながら考える……帰り方を!
俺のふとももの上にソーダは着地して大人しく座っている。
まずリュックから地図を取り出す。
安い地図だからフィーリオンからメディアルまでの道のりしか書いてない。
この地図を買ったときの事を思い出す。
「おじさん、もっと詳しい地図が欲しいんだけど」
「バカ言うな! それより詳しい地図売ってたら捕まるわ!」
との事だった、地図ぐらいで大袈裟なおじさんだったな。
改めて地図を見る。
赤い線で引かれた所が本来のルート……勿論地図には海は載ってない。
俺は森を避けるように赤い線が引かれていたから真っ直ぐに森を抜ければショートカットになると思いながら進んだ筈だった。
「考えてもわかんね~ソーダ今日はここで寝るか!」
「キュイ!」
俺はリュックからテントを出して組み立てると寝る支度をする。
俺の持ち物はテント一式、干し肉、飲み水、クルクルに丸めた布団だけだ。
俺のリュックは魔道具で魔法石を入れる所がついている。そこに魔法石を入れると魔力量に応じてリュックに入れられる量が変わるという優れものだ!
魔法石の中の魔力がなくなったら新しい魔法石に変えないといけないがな。
準備も整え寝ることにする。
「お休みなさい」
「キュイ~」
ソーダも俺の布団に入ってきて一緒に寝た。
こうして俺の一日が終わった。
ミライ達が学園に召喚されて異世界に馴染む位には時が経った。
ゲームから召喚された者達は『プレイヤー』と言われるようになった。
勇者特有の固有スキルは『劣化スキル』
戦闘中だけ発動するアシスト機能。
『直感』は先読みと言っても攻撃の軌道を表示するだけ。
『特定』は重力魔法のみに有効な限定能力。
『精霊の恩恵』は精霊魔法が使えるようになる。
『ジャストガード』は読んだ攻撃が確率で無効になる。
プレイヤー達にも変化はあり、こちらの世界に来てから『ステータス』が表示されなくなっていた。
ここはコロシアム。特待生が学年合同の魔力コントロールをしていた。
魔力コントロールが出来ていないプレイヤー達の為の特別授業だ。
「はぁ、はぁ、
「ミライちゃんなら出来るよ~頑張れ~」
「お姉ちゃ……」
「魔力が乱れてるよ! もっと集中して!」
「そして厳しい!」
二人一組のペアになって魔力が乱れたらお互い注意するというだけの授業だ。
ユウカとミライのペアはミライが一方的に注意される。
プレイヤーは全員精霊化を発動できる程の素質が最初からあるとみなされ学園はそこに力を入れたいのだろう。
授業もプレイヤー達が異世界で困らないように異世界のルール、歴史、魔力の使い方、魔法の使い方という初歩的な授業が中心になっていた。
ユウカはチラリとリリアを見るとリリアもユウカと同じように自分よりも年齢が上の上級生に注意をしていた。
「は~い休憩してくださ~い」
プレイヤーや魔力コントロールになれていない者達がミントの声で一斉に座り込む。
ユウカの周りにリリア、ミミリア、フィリアが集まってきた。
「リリアちゃん、クレス君はまだ家に帰ってないのかい?」
ユウカは授業が始まり中断していた話題をリリアに振る。
「うん、ママからはまだ家に帰って来てないって」
「心配しなくてもクレス君は強いから平気さ」
ユウカはリリアを励ますようにして自分にも言い聞かせる。
「お兄ちゃん方向音痴だから……」
「へ、平気さ……」
何処かで迷っているのが目に浮かぶようだ。
「明日からは長期休みに入るから皆んなで海に行こうよ! 約束してたよね!」
クレスは何があっても無事なのは分かりきってる事だからユウカは長期休みのプランを提示する。
「フィリアちゃんもミライちゃんも行くんだよ!」
「行っていいの?」
「我もか?」
「勿論!」
ユウカの言葉に二人は笑顔になる。
フィリア、ミミリア、ミライ、リリア、ユウカの五人は明日水着を買いに行く約束をして授業に戻るのだった。
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