平穏
「お兄ちゃん~起きて~」
朝、クレスをお越しに来るリリアの姿があった。
「う~ん、あと五分~」
クレスが起きる気配はない。
「お兄ちゃん~起きて~」
リリアはクレスの身体を揺する。
「むにゃむにゃ」
クレスが起きる気配はない。
いっときの静寂の中リリアはクレスが一発で起きそうな言葉をいうことにする。
「お兄ちゃん、私、結婚するから」
その言葉をいうとクレスが被っていた布団が宙を舞い。
さっきまで寝ていたクレスがベットの上に立っていて手には黒剣を持っている。
「誰だ! その羨ましい奴は! リリアは俺より強い奴じゃないと渡さん!」
クレスが声を張り上げる。
「やっと起きた~」
リリアはクレスを起こすための言葉だったと結婚はしないと説明する。
「わかってたさ。でもな言っていい冗談と悪い冗談の区別はつけなさい」
「は~い」
最初から役目なんてなかった黒剣がキラキラと消えていく。
「お兄ちゃん! 今日はお休みだから、お外に行こうよ!」
「よし! 行くか!」
リリアとデート!
そう今日の学園は休日だ、外出許可が出ている。
外に出る時も学生服を着なくてはいけない。
俺が学生服を着た時に。
ビンポーン! というインターホンの音が聞こえる。
インターホンだと! そんなの寮についてないんだが!
こんなことする奴はアイツしかいないだろう。
俺はドアを開き何しに来たかを尋ねる。
「おいユウカなんで来た?」
「なんでって今日は休日だよね? デートのお誘いさ!」
俺はドアを閉める。
ピピピンピピピピンポーン! インターホンを連打する音が聞こえる。
「うるせぇー」
俺はドアを開ける。
「もう酷いな~、このインターホンの音を出すのにどれだけ無駄な技術がいると思ってるんだい?」
知るか!
「今日はリリアと出掛けるんだ、ユウカとはまた今度な」
「リリアちゃんにはもう伝えてあるよ」
「な、なに!」
「ほら」
ユウカはドアで視界が遮られている所を指差すと。
俺はそれにつられてドアから顔を出す。
「お兄ちゃん早く行こうよ」
満面の笑みの妹様がそこに居た。
二人っきりのデートがぁぁぁぁ!
俺はしぶしぶユウカも加えて遊びに行くことになった。
校門ではリリアとユウカで時間を使う。
もちろん俺は名前を書くだけ。
「なんで剣の勇者を目指す学園なのに本物の剣の勇者なクレス君は名前書くだけなんだい? 少し可笑しいよね」
リリアとユウカの外出の手続きが終わり、今は三人でブラブラと歩いている。
「それはな、この世界が魔法使えない奴に対して凄く厳しいからだ。魔力がなくて迫害を受ける所も少なからず存在するからな」
「昔から変わらないよね」
「まぁな」
少し場の雰囲気が暗くなる。
「あっ! あのお店から良い匂いがする」
「ホントだ~」
リリアはクンクンと鼻を動かす、ユウカはリリアに釣られて目がキラキラしだした。
「よしリリアちゃん! 一緒に味見だ~」
「お~」
場の雰囲気を吹き飛ばし、ユウカとリリアがはしゃぎ、二人で良い匂いのする店に突撃しに行った。
本当にユウカには敵わないなと思ってしまう。
俺は二人の後を追い店の中に入ると。
二人の座ってる席には既に料理が運ばれている。
はぇーよ!
俺は異世界の料理が出来るスピードに驚愕する。
いや、ここが速いのか?
「はいお待ち! なにかあればすぐに言ってくれ!」
ゴツいオヤジが可愛い花柄のエプロンをして笑顔を振り撒いている。
アンバランスすぎるだろ!
「オヤジ! 俺はソバ? 分かるかな? え~と」
ここは料理屋だからあるだろう。この世界にはソバに似たような物があるリリアが作ってくれるから俺は名前は知らない。
「おじちゃん、お兄ちゃんのはミナルディーでお願い」
ミナルディー? なにそれ。
「あいよ!」
俺は席に座ると二人に出された料理に目を向ける。
二人の前に出された料理? これはスイーツかな?
ガラスの器にバケツをひっくり返したかのようなデカイソフトクリームのような物に色とりどりのフルーツが散りばめられている。
そのメチャデカパフェが二つ。
こんなの食えるか?
「美味しいね~」
「うん美味しい~」
ユウカとリリアの中に信じられない勢いで消えていくスイーツに唖然とする。
俺のミナルディー? はリリア達が夢中で頬張ってる最中に来た。
ミナルディーは汁に浸かったソバだ。
味も似ている。俺の異世界での大好物だな。
ズルルと音をたてて胃に流し込む、うまい!
俺も腹が減っていたので夢中で食べる。
そして食い終わりリリア達を見るとガラスの器はもう空になってた。
料理が出てくるスピードには驚いたが、お前らもはぇーよ!
店を出ると次はどこに行こうかと考える。
「どこ行く?」
前にいる二人は俺の声に反応すらしない。
ん? なんか俺の声聞こえてない?
なんか二人とも俺を忘れてる?
「リリアちゃん! 次のデザートのところ行くよ!」
「お~!」
まだ食えるのか!
俺はミナルディーでお腹いっぱいになった腹を擦りながら二人の後をついて行くのだった。
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