やっと帰れる
俺は魔王を倒し今、この異世界に召喚された部屋にいる。
平々凡々だった俺は、部屋で寝る支度をしていたら、いきなり部屋中が光で満たされ、それが収まると金髪美少女がいて『勇者様、世界を救ってください』と言われたので世界を救うことにした。
美少女からのお願いだったからな、下心満載で承諾したね。
当時、黒髪黒目、特にモテる訳じゃなく普通の高校一年生の
勇者な俺の能力は異世界言語の自動翻訳と理不尽を切り裂く剣の召喚。
剣と魔法のファンタジーな世界なのに魔力が少なく、魔法はあまり使えなかったが何時の間にかこの異世界で誰の追随をも許さない最強の剣士。
魔法を切り裂き、悪を切り裂く、剣の勇者と呼ばれるようになっていた。
最初の頃は良かったよ、剣と魔法のファンタジー世界。
魔法もワクワクしていたし冒険にも心踊った。
でも進めば進む程に死と隣合わせの状況に精神を磨り減らされ、仲間の裏切りや剣の未熟さで何度も何度も死にそうになり、段々と平和への渇望が俺の中で大きくなっていった。
異世界に行って十年ぐらいはたったと思う。
そんな俺がやっと平和な元の世界に帰れる。
魔の者を倒すとその強さと同等の魔力を宿した石、魔法石が手に入る。
魔王を倒すとその魔法石は莫大な魔力を宿している。
その莫大な魔力を利用して俺を召喚した魔法の術式を反転させて、また召喚魔法を起こせば俺は元の時間と元の世界に帰れるらしい。
仲間とずっと支え続けてくれたこの国のお姫様の金髪美少女に別れを告げて俺は魔法石を使い反転召喚魔法陣を発動させる。
誰かに引っ張られる感触を覚えながら目の前が真っ暗になり、海の中のような俺の意識が浮上する。
やっと帰ってこれたか。
「オギャー」
耳元で煩いな。
「オギャー」
誰だよ、煩い!
「オギャーオギャー!」
えっ! これ俺が喋ってないか?
「オギャー! オギャー?」
俺は右手を見ると自分の手が異様に小さいことを確認する。
なんだこれはぁぁぁぁぁぁ!
「オギャャャャャャャ!」
「はいはい、クレス。ご飯の時間ですよ」
そこには美人? 少し幼さが残る整った顔に蒼の瞳と金髪の美少女がそこにはいた。
そしてボリュームがある胸を……。
うん、反転魔法陣の誤作動により俺は生まれ変わりと言う奴を体験しているんだと思う。
柔らか……。
え~と、それから俺の体にある、ほんの少しの魔力が感じ取れるからここは異世界なんだろう。
ふにふに、ふにふに、ふにふに。
「ダメよ、クレス、そんなにしがみついて」
ふにふに、ふにふに、ふにふに。
「もう、甘えん坊なんだから」
平和に渇望していて元の世界に戻りたいと思っていたが。
ふにふに、ふにふに。
異世界! いいな! 俺のお母様 (たぶん)がこんなに。
ふにふに、ふにふに、ふにふに。
「ダメだって、あっ!」
俺! この世界で平和に暮らすわ!
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