第58話 別れと接近
ここでロイド達とは、お別れである。
ヒナノ達は金剛石を求めてダンジョン奥地へ、ロイド達は一度自分達のホームに戻り休息を取るようであった。
体力と魔力はある程度回復したようであるが、大事を取って転移石で戻るようである。
せっかくヒナノ達が転移石を回収して来てくれたことを無駄にするのも、どうかと考えたこともあったが、もう一つ理由があったようだ。
それぞれが別れの挨拶を済ませるとロイドがヒナノに話しかける。
「ヒナノ、本当に世話になった。街に来た時はいつでも会いに来てくれ」
「ええ、是非遊びに行かせて貰いますね」
「今後、護衛の仕事でもあれば……って、ヒナノ達に護衛は必要ないか。まあ、街の案内でもさせて貰うよ」
「ふふ、ありがとうございます」
護衛うんぬんは別として、知り合いができたのはいいことである。
街に行く目的にもなるし、案内もして貰えるならありがたい。
「俺達の力が必要な時は言ってくれ。直ぐに駆けつける」
「はい。皆さんお元気で!」
「ああ、ヒナノ達も気を付けてな!」
どうやって駆けつけるのかは分からないが、そう言って貰えるのは嬉しい。
別れはいつも寂しい気持ちなる、名残惜しいと言った方がいいのだろか。
でも、この先街に行くこともあるだろう、いつか再会できるはず。
ロイドが言うには転移石の転移先はダンジョン最上層の入口付近であるようだ。
いきなり外に出るとかではないらしい。
今回ロイド達が転移石で帰る理由の一つに、転移石を使っているところを実際に見てみたいとヒナノが言ったこともある。
使用結果を確認することで作製の参考になるかもしれない、ヒナノはそう考えたようだ。
ロイドが転移石に魔力を込めると、辺りは緑色の光に包まれる。
発動した瞬間の光、魔力による空間への干渉、隔離と転送。
ロイド達は光と共に消えた。
「うーん、やっぱり見ても分からないわね!」
魔法や魔導具の専門家ではないヒナノが見ても、はっきりとしたことは理解できないだろう。
綺麗で不思議であった、そんな感想がせいぜいである。
このフロアには他の冒険者の姿は見えない。
レオとココに確認すると自分達以外は魔物しかいないということらしい。
モンスターハウスのあるフロアは通常とは違う特別なフロアなのだろうか、謎である。
正規のルートを通らずに下へ下へと掘り進んできたヒナノ達には分からない。
ヒナノ達は金剛石獲得の為に再び進むのであった。
***
――マスター、侵入者Xモンスターハウスをあっさりと突破、魔物達は全滅。更に回復させた監視冒険者Aを最上部フロアまで転送させました。
『キイイッ、あなたもっとマシな報告はできないわけ?』
――申し訳ありません、事実を報告したまでです。
『モンスターハウスに勝手に入って勝手に魔物を全滅させるなんて、なんて奴らなの!!』
ヒナノ達は誘い込まれた訳ではない、自ら侵入したのだ。
モンスターハウスは侵入者を始末する場、最悪生き延びても瀕死の状態、絶望を与える部屋なのだ。
その中でロイド達はよくやった方である、かなりの体力、魔力を消耗したようだが全員生きていたのだから。
只、ヒナノ達は無傷で魔物達を全滅させた、今までの侵入者とは訳が違う。
しかも、もう少しで養分とできたかもしれないロイド達を逃がされてしまった。
ダンジョンコアとその部下は迫りくるヒナノ達の対処に悪戦苦闘していた。
コアの部屋に向かい進んでくるヒナノ達に、恐怖さえ感じ始めているのかもしれない。
『とりあえずフロアにいる魔物を回してあいつらにぶつけて!』
――ですが、それですと他が手薄になります。
『構わないわ。他の連中なら何とかなる。他が多少手薄になっても、あいつらをここまで来させる訳にはいかないわ!』
――承知いたしました。
時が流れて。
――侵入者X、進行速度は変わりません。対処した魔物達はまたも全滅です。
『くっ! 下層に来て強い魔物と当たっているはずなのに関係ないわけ!!』
――はい。まったく速度を緩めず進行中です。
『あいつら、もしかしてダンジョン攻略の為に送り込まれた、勇者って奴らじゃないのかしら?』
――た、確かに! それでしたら合点がいきます。
とてつもない力をもったと言われる最終兵器、勇者。
攻略されたダンジョンには大体、勇者が絡んでいたとか。
『最終ボスフロアまであとどれぐらいなの!』
――はい。あと三フロアで到着します。
『仕方がないわね。最終フロアのボスは三体に増やして!』
――ですが、それだとダンジョンの維持が不安定になり、最悪崩壊かと。
『やるしかないわ。どの道ここまで来られたらおしまいなのよ。ありったけの魔力をボスに回しなさい!!』
――了解しました!!
ダンジョンコア達の死力を尽くした最終決戦である。
その頃ヒナノ達は……。
ヒナノはレオとココに雷属性の【レイオームの魔石】を与えていたようであった。
『刺激が病みつきだね!!』
「ピリッとして美味しいですぅ!!」
レオとココはおやつを食べながらダンジョンを進む、遠足気分であった。
『ふ、ふざけてんじゃないわよ!!』
ダンジョンコア達の怒りの炎に油を注いだのは言うまでもない。
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