カノジョたちと一緒に勉強合宿の地へ。
「いやー、まさかスキー場の経営までしているとは……」
「私の家は、大半のリゾート経営に手を出していますから」
「ははは……さすがだ、水瀬家」
この会話ですでに予想できると思う。
簡単に言えば、先輩が目をつけていたスキー場はアリスの父親が経営している場所だった。そんなオチである。
で、結果的には彼女の口利きでコテージを貸し切りにしてもらった。
先輩の出番はなし、というところ。
「ぐぬぬ。このままでは終わらんぞぉ」
「久保先輩。なにそんな、復讐に燃える敵キャラみたいなオーラを……?」
「二人ともなにを話してるの?」
「あぁ、このはは気にしないでくれ」
「…………?」
行きの車の中で、後部座席の俺たちを振り返り首を傾げるカノジョ。
俺はこのはがアリスとの雑談を再開したのを確認し、端っこの方で小さくなっている先輩に声をかけた。どうにも、たまには先輩らしく仕切りたかったらしい。
いつも、良い感じに先輩やってると思うのだけど。
そこはそれ。
好きな女の子の前では、かっこよくありたい男の性か。
「先輩。とりあえず、元気出しましょうよ」
「しかしな、橋本。俺はアリスちゃんのお父さんと、約束したんだよ」
「約束……?」
いつの間に、叔父と会ったのか。
それは置いておいて、俺は彼の話に耳を傾けることにした。
「男と男の約束だ。それが何かは、言えないがな」
「はぁ、さいですか」
「あぁ、そうだ」
そこで気持ちを切り替えたのか、久保先輩は深く息をつく。
そして、そっと俺に囁くのだった。
「お前はお前で、受験シーズン直前にちゃんと堪能しとけよ?」――と。
それは、このはと思い出を作れ、ということだろう。
俺は言われるまでもない、と頷くのだった。
◆
一方その頃、女性陣。
「アリスちゃんは、スキー経験あるの?」
「昔に少しだけ。お姉様は?」
「わたし、実は全然なんだよね。てへへ」
「そ、それなら……!」
アリスはそこで、いくつかの選択肢を思い浮かべる。
一つ、自分がこのはにスキーを教えること。
正直なところ、これが少女にとって最もやりたいことだった。憧れの人に自分が手ほどきをするというその矛盾に、どうにも興奮を隠しきれない。
しかし、このはには和真という存在がある。
したがってアリスは、二つ目の選択肢である方を選んだ。
「……そ、それでは――」
苦渋の選択として。
「久保さんと和真兄さんに、教えていただきましょう……」
しかしそんな彼女の表情を見て、このはが目を丸くするのだった。
「アリスちゃん、梅干しでも食べた……?」――と。
そんなこんなで、一同はスキー場へ。
わいわいと賑やかな時間が、過ぎていくのだった。
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