カノジョは栄光を手にした。








「まさか、グランプリと準グランプリとは、な……」

「えへへー、まさかだったね!」



 俺は小さなトロフィーを持ったこのはと、賞状を持ったアリスを見て苦笑い。

 ミスコンは飛び入りの二人がワンツーフィニッシュという、まさかの結末で幕を下ろした。グランプリこと俺の彼女――如月このはは、照れくさそうに笑う。

 隣では従妹のアリスが、なぜか自慢げに鼻を鳴らすのだった。


「お姉様なら、グランプリを獲って当たり前です!」


 自分のことよりも、このはのことを誇る。

 まさに信者らしい態度だった。


「それにしても、まさか表彰式で橋本に声をかけるとはな……」


 俺と同じく、苦笑いをしながら言ったのは久保先輩。

 彼は翔子さんと一緒に、こちらにやってきた。



「たしかに、アレはビックリした。というか――」




 ――周囲の男子の目が、物凄く怖かったんだけど。

 俺はそう思い、改めて身震いした。



 簡単に説明するとこのはは、表彰式の際に俺という彼氏がいることを公言したのだ。そして、ひっそりと後方で見学していたこちらに手を振ったのだが。



 羨望、妬み、嫉み。

 ありとあらゆる感情が、こちらに流れ込んできたのが分かった。逃げ出したかったが、そこで逃げては格好がつかない。

 なので耐えたのだが、帰り道では背後に気を付けなければならないだろう。


「どうしたの、和真? すごい青ざめてるけど」

「い、いや? 別に平気さ。ははは……」

「…………?」


 そう考えていると、表情に出ていたらしい。

 このはが首を傾げてそう訊いてきた。


「和真兄さんは、お姉様の恋人としての自信を持ってほしいですね」

「まぁ、仕方ないさ。でもアリスちゃんは、これから大変だね」

「どういうことですか? 久保さん」


 言葉を引き継いだのは、アリス。

 そして、そんな彼女に笑いながら久保さんが言う。

 従妹は意味が分からないといった風に、彼にそう訊ね返した。



「だって、これからたくさん告白されるよ? 彼氏もいないし、ね」

「……あぁ、そういうことですか」



 久保さんの言葉に、アリスは小さく鼻を鳴らす。

 そして、呆れた口調でこう言うのだった。



「申し訳ないですけど、この学校の方々に興味はありませんから。仮に告白されても、すべてお断りさせていただきます」――と。



 やれやれ、と。

 軽く肩をすくめながら。



「ははは、それは災難だな。この学校の男子たちは!」

「……そう、ですね」



 すると青年は、大きな声で笑った。

 アリスは何か複雑な表情を浮かべていたが……。



「ねぇ、和真? 少し良いかな……?」

「ん、どうしたんだ?」

「二人きりで、話したいな、って」





 そう考えていると、このはが小声でそう言ってきた。

 俺は特に断る理由もないので、それに頷く。何やら楽し気に話している三人に軽く声をかけてから、俺たちは場所を変えるのだった。



 



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