カノジョのコスプレを見た俺――尊死。
――学園祭当日。
土曜日で俺の学校は休み。
このはの通う高校――御堂高等学校では快晴の下、学生たちが楽し気に出し物を楽しんでいた。聞くところによるとミスコンなんかも開催されるとか。
校門付近でもらったプログラムのしおりを見ながら、俺は慣れない校内を歩く。
「このはの教室は――」
本校舎二階にある、二年生の教室。
ひとまずはそこへ向かった。肩には一眼レフを下げて……。
「あれ、やけに混んでるな」
そしてたどり着いたその場所は、物凄い盛況ぶりだった。
いかにもといった男性たちが、鼻息荒く列をなしている。
「嫌だなぁ、こういう男にはなりたくない」
俺は一眼レフの調子を確認しながら、そう漏らした。
いったいこの人々の目的が何なのかは分からない。それでも、俺はあくまで大切な彼女に悪い虫がつかないことを確認しにきたのだ。
俺には大義名分がある。
そう、この男たちとは決定的に違うのだった。
「次のご主人様、お帰りなさいませ!」
「お、順番だな」
そうして待つこと十数分。
俺は受付の女子生徒に声をかけられた。
そしていくつかの質問に答え、教室内に用意された席に座る。メイド喫茶という空間は初めてだが、やはり独特な空気がある、と言えた。
俺は改めて一眼レフを調整しながら、その時に備える。
すると――。
「かずま! ――じゃなかった!」
「お、このは――」
ついに、恋人の声が聞こえた。
俺は声のした方を見て、
「ご、ご主人様! お帰りなさいなのですっ!」
「――――――っ!!」
鼻に何かが伝う感触があり。
そして、意識が遠退いていった。
――へい、そりゃないぜ。
ウサ耳メイドなんて、聞いてなかった。
「かずまー!?」
せめて、メッセージは残そう。
鼻から出た血を使って、床にこう書き残した。
――尊い、と。
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