幼馴染の頭を撫でてみた。








「おかえり! 和真っ!」

「ただいまー、って。なんでウチに、このはが?」

「えへへー! おばさまに言ったら、待ってても良いよ、って!」


 少し離れた場所にある自分の高校から帰宅すると、近所の学校に通っているこのはが先に俺の家に来ていた。母さんも何も言わない辺り、分かっている。


「そっか、それなら何して遊ぶ?」

「ううん。遊ばなくていいの」

「ん?」


 鞄を下ろして俺が首を傾げると、このははそう言った。

 そして、俺の手を握る。


「どうしたんだ、このは?」

「えっと、こっちに来てくれる?」


 彼女に言われるまま、俺はベッドに腰掛ける。

 するとこのはも、嬉しそうに座るのだった。


「…………」

「…………」


 そのまま、静かな時間が流れる。

 このはは俺の肩に頭を乗せて、目を細めていた。



「今日は、このままでいいの」



 そして、小さく言う。

 どうやら学校での辛さを紛らわせるために甘える、を実行しているようだった。俺はそれに気づいて、少し考える。

 この状態だったら、もう少し前に進んでも良いのだろうか。


 正直、この子が俺のことを今でも好きでいるのかは分からない。

 だから手をつなぐ以上のこと、していいのか分からなかった。だけど――。


「このはは、本当に――」



 ――これは、可愛い彼女のせいだ。



「ふにゅ……」



 俺は、そう心の内で言い訳をしながら。

 優しく、最大限に優しく、このはの頭を撫でるのだった。



「かずまぁ……?」



 すると、ウットリとした表情になる少女。

 こちらの肩に頬をこすり付けて、小さく、何度も俺の名を呼んだ。



「ホントに、これだけで十分、だな」





 彼女のことを愛でる。

 そう決めた翌日は、それだけで時間が過ぎていった。


 

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