【悲報】男は絶滅しました! 創られた男は女性たちのマスコットとして生きています
ペロりねった
1.お見合いからの新生活
01.お見合いから始まるボクの人生*
「初めまして、
「初めまして、蒼屋
母に続いて正面の女性──
「初めまして、喜多村マキナです。こちらこそ、足を御運びいただき
喜多村マキナさんに
ボクは母に付き
つい先日、近くのショッピングモールで買ったばかりのものだ。
ここは家の近くでは一番立派なホテル。そこのラウンジに
マキナさんは、スラッとした長身でビジネスマンの出立ち、胸もいくぶん盛り上がっている。
年齢は二十代半ばで、親族会社に勤め、課長待遇と聴いている。それなのにお見合いが必要なのかが分からない人だ。
ちなみに勤める人は大抵、女性なのでビジネスマンと呼称されるのは女性を指すのが一般的。
コーヒーで口を
ボクのを含めて蒼屋家の負債おおよそ八千万の肩代わりをしてくれるのと引き換えに、ボクは新居でマキナさんと同居生活をすること。
新居には家政婦が通ってくるので家事の必要ないこと、子作りに専念すれば良いと言うこと、などなどの言葉が
うちには八千万も借金があったの? 多額だと聞いていたけどビックリだわ。
ちょっと驚いて、話に集中できなくなったよ。うちはかなり切羽つまってたんだなあ。
「キョウちゃん、何か
「──え? いえ、今はない、です」
「──それでは、良い返事をお待ちしています」
立ち上がって互いに礼をすると、ラウンジまで出てマキナさんを見送った。彼女は、午後から仕事に戻るらしい。
なんか
もっと質問とかするべきだったんだろうと思う。だけど思い浮かばなかったんだから仕方ない。
ここは喜多村家の
カフェの席に座り直して、一連の話を
──まさに身売り婚だなあ、と
真っ当な手段で、八千万は返せない。実質、今働いているのは母しか居ない。
一人いる姉も一人暮らしして働いているけれど、自分の事で精一杯だと思う。
「──キョウちゃん、どうだった? 喜多村さん、
「うん……」
「条件も破格よ。もう全然、将来の心配はないよ。決めてしまいましょう?」
「そうだね……」
もう、母の話が耳に入ってこない。生返事しかできない。
「本当? もう返事するわよ」
「えっ? あ……うん」
少し
そうだよね。売れるなら高く売れる内に売るべきだ。それが自分自身のことだとしても。
「もしもし、喜多村さん?……」
携帯端末機で早速、電話している母を、乾いた感情で見る。どれだけ切羽つまってたんだか。
まあ仕方ない。負債はボクに大きく関わっていて母だけが悪いワケじゃないから。
ボクを含めて子供を作るために人工授精に顕微授精と、生殖医療費を費やして頑張った結果の負債だから。
その半分はボクが負うべきだろうし、男子優遇策で受けた援助の
「──はい、そうですか。少しお待ちください。キョウちゃん、今日からでも来てって喜多村さんが言ってるけど、どうする?」
端末機を口から離して、母が訊いてくる。
「今日から? えっと同居、新居に移るってこと?」
「そうそう」
「構わないけど……、通学の準備とかしてない──」
「オーケーって返事するね? もしもし?──」
すぐ返事するって、ほとんどこちらの話、聴いてないよね。
──まあ、いいけど。
「お待たせしました、蒼屋さん。キョウさん、行きましょう」
新しいコーヒーを飲み終える前にマキナさんが顔をほころばせてラウンジに現れた。
もう少し考える……事態を消化する時間がほしかった。
そして……、「それじゃあ」と母との別れ? の挨拶もそこそこにマキナさんに手を取られた。
そこに
「すまない。ちょっと舞い上がってしまった」
「いいえ、お気になさらず」
いきなり手を
平常モードに戻ったマキナさんに、「さあ」と開けられた助手席のドアに
お礼を言ってボクは助手席のシートに座った。
この車って運転は運転手に任せるようなものだと思うけど、自分で運転して来たんだね。
などと内装を
ボクの人生で乗ることはないような座り心地や乗り心地に心
「すまないが、会社に戻って小用を済ませてからでないと新居に送れない。午後からは、業務を入れていたからね」
「はい。構いません」
そう言って、
それほど言葉を交わさぬ内に、ビルが建ち並ぶ中の一つ、その地下駐車場に入っていき車を降りる。
彼女が助手席に回ろうとするのを断って車を降りた。
申し訳なさそうな顔に、気にしないよう笑顔を向ける。
車の乗り降りくらい、自分でできますよ。
こちらを
それは社員用のものらしい。
目的の五階に上がると、そこはフロアぶち抜きの事務所で、不透明の仕切りが立てられて所々に出入口の
「ちょっと、ここで休んでいて」
エレベーター近くのソファーセットを指をさしてマキナさんが言う。
見た感じは接客用とかではなく、社員の
それを了承しながらも、出入口の隙間を抜けていくマキナさんを追って仕切りの
机が固まった一角に進むと、彼女は部下だろう人に指示し始めている。
「午後は少し遅くなる。急ぎの
食事と聴こえて、お昼ごはんの時間が来ているのを思い出した。
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