ナクヨムWeb小説コンテスト殺人事件

下村智恵理

  

12月

?.池袋・小説サイトオフ会殺人事件

《ニュース速報 池袋でナイフを持った男による殺傷事件 死傷者複数》


「年の瀬の池袋で凄惨な事件です。今日午後、池袋東口の繁華街で女性が男性をナイフで刺す事件がありました。路上で男性が血を流して倒れているという一一〇番通報を受けて駆けつけた警官が、カラオケ店のボックス内でナイフを持っている女を発見、事情を聞いたところ、自分がやったと話したため逮捕しました。女は千葉県市原市在住の自称アルバイト、中村未知瑠。中村容疑者はインターネット上の小説投稿サイトの利用者同士のオフ会に参加していたということで、警察では他の参加者に事情を聞いています」


《池袋オフ会殺人! 使っていた小説サイトは? 作品は? 参加者のツイッターアカウントは? 調べてみました!》


《ちまみれおっさん》


《たまたま前を通って被害者っぽい女の人見ちゃった……毛布にくるまれて顔真っ青で泣きそう。刺したの引きこもりのオタクらしいし怖い……》


「女性が大声で叫ぶ声が聞こえたんで、自分のボックス出てみたんですよ。したら男がなんか走ってきて。腹からメッチャ血出てました。そこら中血みどろで、血の海って感じ」

「(男は)下半身丸出しで」

「倒れた男に女性が駆け寄って、助けて助けてって絶叫してました」


《血まみれカラオケのリツイート回ってこないしTL訓練されてる》


《5chで特定されてた参加者のアカウント、スパーク大賞の受賞者とPN同じなんだけど……》


「路上で女性と話してる感じだった男性が、急に倒れたんですよ。みんな遠巻きで騒然としてました」


《あそこのコンテストって読者選考を通過しなきゃ審査されないから、みんな相互評価クラスタ作るんだよな。承認欲求の塊の作家ワナビによる同調圧力蠱毒、ヤバすぎ》


《公式さんのコメントまだ?》


「最近盛り上がりを見せている小説投稿サイト。月間のPVはなんと二〇億以上。個人の作品が書籍化されて人気を博し、映像化作品も多数存在します。出版社にとっては新たな金脈となっているそんな投稿サイトですが、ユーザー間のトラブルも珍しくないといいます」

「書籍化はランキングに長期間載っている作品から順番です。そのために複数のアカウントを作って、(自分の作品に)評価を入れて水増しする」

「今回の『ナクヨム』は出版社が運営する投稿サイトであり、コンテストも事実上の新人賞です。そして一次選考は読者選考により行われます。なのでユーザー間のトラブルに繋がりやすい」

「こっちはお前の宣伝RT(リツイート)してるのに、なんでお前はしないんだよとか」

「正直イラッときますね」


《中村の兄です。この度はご迷惑おかけしました。真相をお話します。チャンネル登録お願いします》


《中村の正当防衛説が有力。チ○ポ丸出しマンの他にもう一人男がいた。四人説もあるけど》


「悲惨な事件ですねえ。最近、ネット上の人間関係が事件に発展することが増えています。各地の警察では、このような呼びかけ活動を行っています」

「とにかくネットで知り合った人とは会わない。リアルの絆こそが一番大切ということかもしれませんね」

「それでは次のニュースです」

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