第57話一蓮托生
「——というわけで、俺のストックのユニークスキルが発動して得たイビルビームを撃つことで、俺は邪神を滅ぼしたんだ」
セレナに聞かれたので俺は改めて自分がここに至るまでの経緯を2人へと話した。
「なるほど。変だと思ったのよ、いきなり迷いの森に現れたと思ったら滅茶苦茶強いし」
「エルトって昔からこっちがひやひやすることを平然とやるもんね。お蔭でいつも私がどきどきさせられてきたもん」
呆れるような二人の視線を受けた俺は。
「信じるのか?」
「そりゃ、出会ってすぐにそんなこと言われても信じなかったとは思うけどさ。私がどれだけあんたと一緒に行動していたと思うのよ。散々凄いところを見せつけられて疑う方が難しいわよ」
「私はエルトが嘘をつくような人間じゃないって知ってるもん。エルトが言うならなんだって信じるよ」
いつの間に得たのかわからないが二人共俺の話をそのまま飲み込んでくれたようだ。
「ところで、ストックだっけ? これ人に言うのは不味くなかった?」
「そうだよエルト! ストックに回数制限があるなんて知られたら、エルトを攻略する方法になっちゃうよ!」
「そのぐらい俺だって考えている」
「じゃあ、どうして話したのよ?」
セレナが形の良い眉を寄せると聞いてきたので。
「ここにはお前たちしかいないからな。俺は世界でお前たちだけは信じている。信用している人間になら話してもいいはずだろ?」
そういうと……。
「うっ……そう?」
「わ、私だってエルトを誰よりも信じてるもん。絶対に誰にも言わないし!」
何故か二人共顔を赤くする。
そう、俺も薄々自分の能力の弱点については気付いていた。
現時点での俺の最大の強みは邪神からストックした【イビルビーム】だろう。
このスキルはこれまで何度も俺の窮地を救ってくれた能力であり、このビームを浴びた者は例外なく倒されている。
更に言うなら、このビームが無ければ邪神の城へと入ることができないので入退場として2回消費するのだ。
俺の弱点は切り札の使用回数に制限が付いていること。もしそのことを知っていてイビルビームでしか倒せない敵を大量に寄越されたら、いずれ回数が尽きたときに俺は倒されてしまうだろう。二人はそのことを危惧しているようだ。
「俺はこのスキルの詳細をここにいる二人にしか語っていないし、これからも語るつもりはない。だから俺たちが黙っている限りは大丈夫だ」
俺を慕ってくれているセレナ。弱かった頃から付き添ってくれたアリシア。そんな彼女たちだからこそ俺は秘密を打ち明けたのだ。
「うううう、でも……信頼が重いよ」
頭を抱えるアリシア。
「何よ! 私はエルトの秘密を死んでも守るわよ」
そんな弱音を吐く彼女をセレナは睨みつけた。
「まあ、そういうな。人間社会は色々複雑だからな、アリシアには縁があるからな」
元々人気者だったアリシア。更に今ではアリス王女とも仲良くしているようだ。
彼女から詰め寄られたときにしがらみを捨てて黙秘できるかどうか。
「そう……だよね? 私もたとえ拷問されてもエルトのことは守る。だって、そうしないと私の身代わりに生贄になったエルトに申し訳が立たないもん!」
だが、俺の予想とは裏腹にアリシアは決断をした。目には秘密を守るという意思をが見える。
「二人とも、そこまで気負うことはない。たとえ能力を知られたとしても危険がほんの少し上がる程度だ。最初の頃ならいざ知らず、今の俺はそれなりに強くなっているからな。イビルビームを使うような相手はそんなに存在しないさ」
先程、クズミゴハイデーモンを切り刻んだのだ。
あの強さでも騎士数人相当らしいので、Sランククラスのモンスターでも出ない限りはイビルビームを封印できるだろう。
「で、でも……」
なおも言いつのろうとするアリシアに。
「それに、もし俺が一人で倒せない場合。お前たちが手伝ってくれればいいんじゃないか?」
アークデーモン戦では被害を最小限にするためにイビルビームを撃った。だが、倒そうと思えば使わなくてもセレナとの連携でどうにかできた気がする。
「巷で聖女とか言われてるけど、私攻撃魔法も使えないし、そんなに強くないよ?」
アリシアの不安そうな瞳が揺れる。
俺は彼女を安心させるつもりで肩に手を置くと……。
「ステータスアップの実を大量にストックしてあるからな。更に言うならこれは邪神の城に生えている木からいくらでも取れる」
アリシアとセレナのステータスを上げることは可能なのだ。
二人が強くなればパーティーで強敵を退けることもできるので、イビルビームを温存できる。
俺の言葉を聞いた二人は…………。
「この男は、またさらりと危険な秘密を話したわね……」
「エルト、その情報の方が危険だよ? 普通に国に狙われるからね?」
苦虫を噛み潰したような顔をした。
この調子なら国宝級のワインや虹色ニンジンについては後々話した方がよさそうだな。
「とにかくアリシアと再会できて目的は達したから、今後どうするかについて話をするとしよう」
呆れた様子の二人に俺は先の展開について話をするのだった。
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