第13話特訓開始
ハーブの採集から戻ってみると丁度セレナが昼食を用意しているところだった。
俺は彼女にブルマリーを渡したのだが「こんな短時間でこの量を……?」と大層驚いていた。
それからしばらくの間、何をするでもなくセレナが料理している姿を後ろからみている。
均整のとれたスラリとした身体は森で生きるエルフらしく引き締まってはいる。だが、セレナ全体を見ると女性特有の柔らかなシルエットが浮かび上がり、彼女が魅力的な存在なのだと認識をする。
これが【魅力】のステータスによるものなのだろうか?
俺がそんなことを考えていると……。
「え、エルト?」
セレナが振り返り俺に話し掛けてきた。
「どうした?」
何故か耳を赤くしているセレナ。種族の特徴として耳が尖っているので色づいているのがはっきりと見えている。
「そんなにじろじろ見られたら恥ずかしいんですけど?」
彼女は俯くと気まずそうにそう言った。
「ああ悪かった。ただちょっと気になってな」
俺が見ていた理由を簡潔に述べて謝ると。
「ふ、ふーーん。そうなんだ……」
視線を逸らされた。だが嫌がられてはいないようだ。
観察していると何となくの実力が見えてくる。それを探るために俺はセレナをみていた。
あまりじろじろ見ていると本人も気になるようなので、俺は解析眼を使うことにする。
「……ん?」
使った瞬間、セレナが何やら首を傾げた。だが、すぐに料理へと戻っていく。
俺と同じで仕掛けられた瞬間に違和感を覚える能力らしい。
(さて、セレナの魅力はどうなってる?)
俺は早速結果を覗いてみると……。
名 前:セレナ
称 号:エルフ・精霊使い
レベル:250
体 力:260
魔 力:401
筋 力:255
敏捷度:450
防御力:300
魅 力:1000
スキル:料理Lv5 精霊使役(5/5)
なるほど。魅力が1000あれば精霊視の条件は整いそうだ。俺はそう考えると後でステータスを調整することにする。
「しかし……」
気になったのは全体のステータスだ。先程倒した目玉に比べて随分と低い。これではあれと遭遇したら逃げ切れないのではないか?
「セレナ」
「どうしたのエルト? そんな真剣な顔をして」
「これから外に出るときは俺と一緒にいこう」
「え、エルトがそう言うなら……構わないわよ」
彼女の身の危険を慮っての発言なのだが、何故か顔を赤らめてしまった。
その後上機嫌になり料理をしているセレナを見ていたが、ヨミさんとフィルがテーブルに着いたのでそちらと会話をするのだった。
「はっ! せいっ!」
気合を入れて神剣ボルムンクを振り下ろす。
「いいぞ。だいぶ教えた型が身についてきたな」
あれから数日が経ち、俺は虹の実を食べて魅力のステータスが1000になるように調整していた。
「剣を扱うときは自分の振る速さと範囲を常に意識しておくことだ。その2つを把握することで敵にたいして無理な攻撃をおこなうことがなくなる」
俺はフィルの言葉を真剣に聞きつつ彼をずっと見ている。
「わかった。意識してやってみるよ」
そう言いつつフィルから目を離さない。何故かというと、精霊視は多くの精霊を視ることで開眼するのだ。
フィルの魅力のステータスは1500と高く。ヨミさんに至っては2000だった。
高位の精霊使いにほど精霊が集まるのでフィルやヨミさんを観察するのは時間短縮にも繋がるはずなのだ。
現在は精霊視を開眼させるついでにフィルから剣を教わっている。
できることなら早くこの迷いの森から出る算段をつけたいのだが、準備が色々必要なのだ。
「それにしてもブラッドアイまで近くで目撃されるとはな……。出会ったのがエルトじゃなかったら怪我人がでるところだ」
先日、モンスターと遭遇したことをヨミさんとフィルに話してある。
2人が驚いていたことから、あのモンスターとの遭遇は異常事態だったようだ。
セレナの1人外出は危ないので俺が護衛につく話をすると2人は是非にと頼んできた。肝心のセレナはなぜか浮かない顔をしていたのだが……。
俺では頼りにならないと思われたのかもしれない。なのでもっと鍛えなければならないだろう。
「そもそもブラッディオーガの生息場所も本来ならもっと森の北側なんだよ。最近迷いの森のモンスターの動きがおかしい気がする」
北の森といえば邪神の城があった辺りだ。もしかすると邪神を倒した影響ではないか?
そう考えはするが、どういう理由でそうなっているのか説明できる気がしないので黙っていることにする。
「とにかく村の警備を強化して様子を見るしかないだろう。俺でよければ手を貸すから遠慮なくどんどん言ってくれ」
村のエルフたちも親し気に話しかけてきてくれる。彼らを守るためなら及ばずながら力を出すつもりだった。
「お前は本当に人族とは思えないくらい良い奴だな」
フィルはそんな俺に笑顔を向けるのだが……。
「だがそれとこれとは別だ。妹はやらんからな?」
何故か良くわからないことを言って睨みつけてくるのだった。
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