歌姫ダミア
ラーさん
第1話
――ああ、
母に伝えてあげて
わたしは母を愛していたと
わたしはしようのないはすっぱで
母には心配しか掛けなかったわ
それでも母はやさしい顔で
いつもわたしの頬にキスをした
ああ、
わたしは母を愛していた
なのにわたしはなにも言えずにいるだけで
このどうしようのないひねくれものめ――
わたしは舞台に立って歌いながら、「まったく母親というものは」と思わずにはいられなかった。
「
「さすがは
色とりどりの衣装を着た
「皮肉かしら、エカテーナ」
「あらやだ、称賛よ。前の席のお客さんなんて、もうあなたに夢中だったじゃない」
衣装の羽毛を揺らしながら肩をすくめるエカテーナの横を抜けて、わたしは楽屋へと進む。
「
「そりゃそうね。わたしだったらお日様が沈む前に食べ終えちゃうわ」
笑うエカテーナの声を背中にして楽屋に戻ったわたしは、自分の鏡台の上に投げ置かれた手紙を見て、さっき舞台であの歌を歌っていたときにこみ上げてきた苦々しい気持ちが、蘇るのを止められなかった。
「このどうしようのないひねくれものめ――」
漏れ出た声の強さに、わたしはめまいを覚えた。
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