ひきこもりの僕は、地球第2ステージに移住してみた。

シソヨモギ

第1話 引きこもりの僕は…

『地球第1ステージが攻略され、第2ステージが開放されました。

 希望者は速やかに第2ステージへ移動を開始してください。』


西暦2025年5月某日。空には太陽が2つ輝いて見えた。


ある者は通学・通勤中、またある者はテレビの速報の放送から外を眺め。

僕、相田道流あいだみちるはというと、集団通学中の小学生がやたらと騒がしい声で起こされ、眉間に皺を寄せた薄目の状態でカーテンの隙間から、見慣れないその現象を確認したのだった。

僕は知らなかったが、その現象は世界中で確認されていたらしい。

皆が空を仰ぐ中、太陽と思っていた物は実はUFOの様なものだったようで、ゆるりと動き始める。

一定の時間をかけて、縦横にスライドし数を増やし、5つの光になった。

見る人が見れば手術台のライトを連想しただろう。

5個まで増えた後は地上へ向けて移動を開始した様で、最初に比較した太陽の10倍近くの大きさになって行った。

5つの光近付くにつれて人々はパニックになり始めた。

腰を抜かすものや、建物に隠れるものが増える。

うちの近所で騒いでいた小学生達の一部は、呑気に“すげー!“と叫んでいたのだが、在宅や通勤前だった親御さんらが駆けつけ、一団を引率し帰宅させている様だ。

少し安心した僕はiPadを開く。まずは状況を確認だ。

おやすみモードにしていたせいで、気づかなかったが通勤中だった両親からのグループチャットで通知がきていた。

父は状況の報告と自分の安否である。母も状況報告、そして僕へのメッセージだった。

外に出ない様に、と。

「…出るわけないじゃん……」

なかなかの皮肉だ。僕が引きこもりになってもう一年経とうとしていた。



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理由としてはありふれていると思う。

おとなしい僕は、高校に入学した初日、席が近かった目立つグループの弄られキャラになった。

現在では少し伸びた僕だが、1年前の高校入学時身長は160cm程で小柄だったはずだ。

成長を見越して2サイズ程大きな制服に身を包むという時点で、冴えない感じを醸し出していただろう。

7歳あたり迄は目がぱっちりして可愛かったらしく、母は僕がチャイルドモデルにスカウトされた事があるのよ、と何度か嬉しそうに話していた。

だが、15歳到達時では、ぱっちりしていた目は重めの瞼となり、多少の陰鬱ささえ感じさせる顔立ちとなった。

なおかつ、見た人に意外性も全く与えられない消極性。

運動部との人材とすら無縁で、休み時間にドッヂボールやら、学校が終わり外で遊ぶなどという事もせず。

スポーツの習い事なども5歳で母親を断念させた内向さで、運動量といえば体育の授業と通学のために徒歩で歩く程度。

趣味と説明できるのは、投稿サイトの小説を読むくらいで…

それも、新刊の発売日に文庫を購入して読む程の熱意がある訳ではない。

親が言うには、言われなくてもコツコツ努力ができるしっかりした子らしいが、学生から見れば特筆した特技もなく凡庸。

ディープな会話ができるオタクでも、運動ができて一緒に汗をかける訳でもなく、楽しい会話が成立しない。

つまり、グループに入れるには要らない人材なのである。

小・中学校の頃はというと、成長過程であるためか、本能で生きる生徒と真面目な優等生タイプのグループに分類される事が多かった。

優等生グループは、野蛮なグループ(周りを見ずにはしゃいで近くにいた女子生徒に怪我をさせる情緒や道徳心の無いタイプ)を少々煙たがっていた。

なので、そこそこの道徳心を持つ人畜無害な僕に、日々の挨拶や適度に会話のネタを振って居場所を提供してくれていた。

高校はどうだったかというと、成績というザルで漉されて、優等生らは優等生に相応しい高校へと掬い上げられるのだ。

濾された残りが入学したかのような学校。

最初こそもがいてみたが、段々と息が苦しくなり、通学をやめたのが1ヶ月後の5月だった。

義務教育終了で僕の人生も終了した。

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