第18話 幕間~成長と仲間~

 行方不明事件も収束し、レイヴァンの町は日常を取り戻しつつあった。

 もちろん大切な人たちを亡くした悲しみや、身近に魔物が潜んでいたことへのショックはあっただろうが、少しずつ。


 冒険者ギルドも通常営業に戻り、依頼が増えてきていると聞く。

 これまで業務が滞っていた分、普段以上に。

 ひょっとしたら新米の僕でも受けられる依頼があるかもしれない。

 まずは、それに向けての準備、レベルアップ作業だ。

 前回のレベルアップ時に、当面はファイターを一本伸ばしすると宣言したが、実はその方針を早々に曲げている。

 先に成長した僕の技能を見ていただいた方が良いだろう。


 【ジョブ】

 ファイター:LV2 シャーマン:LV1→2(UP)

 スカウト:LV1 セージ:LV1


 【スキル】

 剣戦闘:LV2 武器防御:LV1→2(UP)

 回避:LV1 精霊感応/光:LV1→2(UP) 

 危険感知:LV1 

 調理:LV1→2(UP)


 ファイターではなく、シャーマンを伸ばしたのはポンの存在が大きかった。

 シャーマンがLV2になると、生活に便利な魔法の種類が格段に増える。洗浄とか。殺菌とか。

 お風呂とかお湯が気軽に使えないこの世界でポンの毛の手入れをするには、必要な投資だった。

 ヒーラーとしての腕が上がって困ることはないし、一応武器防御のスキルは伸ばしたからファイターとしても成長してはいる。


 また、ポンの安全を考えれば当面の間あまり無理はできないだろう、という理由もある。

 僕がファイターとしての腕を磨いても、ポンを庇い切るのは難しいだろうから。

 で、あれば、ポンがある程度成長するまで、僕も効率ばかり求めても仕方がないと思ったのだ。

 戦闘力が上がれば、自然とそれに沿った危険な依頼を受けてしまうだろうし。


 ちなみに調理スキルはやはり勝手に伸びていた。

 最近バイトばかりだったので、納得と言えば納得だ。


 あと、勝手に伸びてきたものがもう一つ。


 【基礎能力】

 筋力:15 耐久:12→13(UP) 器用:16

 敏捷:13 知力:14 精神:12


 基礎能力の耐久が経験点を使っていないのに伸びていた。

 恐らく血を吸われたり何度か死にかけたからだと思うが、これは意外だった。

 というのも、ゲームでは基礎能力を伸ばすには結構な経験点が必要だったから。

 たかだかあの程度の経験で伸びるというのは、正直意外というかお手軽過ぎるな、という印象だ。

 この辺りはゲームとの差異ということで今後、要検証だ。


 まあ、前座の僕はこのぐらいにして、メインのポンの成長に移ろう。

 新しいポンの技能がこれだ。


 【ジョブ】

 スカウト:LV1(NEW) ポーター:LV1(NEW)


 【スキル】

 追跡:LV2 聞き耳:LV2 危険感知:LV1 

 罠感知:LV1(NEW)

 投擲:LV1(NEW)


 種族固有の鋭い感覚を活かし、ポンにはスカウトをメインで伸ばしてもらうことにした。

 あと取得したのがポーターだが、これは別にポンに荷物運びをさせようというのではない。

 ポーターは取得することで、体力や持久力、移動速度に補正がかかる。

 ポンはあまり体力がありそうには見えなかったので、そこを補えたらと思ったのだ。

 ポン自身の荷物ぐらいは運んでもらわないと大変だし。


 スキルは罠感知と投擲。

 罠は解除より避けることを優先した。解除に失敗したらポンなんて即死だし。

 聞き耳や危険感知と合わせ、危ないものを感じたら近寄らない、がコンセプト。

 あと投擲だが、これは戦闘時に役割を与えないとポンが前に出てきてしまうのではと懸念した結果だ。

 単純にスリングショットを使ってもいいし、将来的にはポーションなどを投げて援護してもらうこともできるかもしれない。


 装備は、コボルト用のレザーアーマーにスリングとダガー。

 何よりポンのお気に入りなのが、アニタさんに作ってもらったニアちゃんとお揃いのリュックサックだ。

 リュックサックの中には保存食と彼のお手入れ用のブラシなどが詰まっている。


 冒険者というよりは、遠足が待ち遠しい子供といった印象だが、スペック的にはそう悪くないのではなかろうか。

 基礎能力は低いが、ある意味ミレウスよりまともなビルドだ。

 ポンも先日冒険者ギルドに登録し、条件付きではあるが冒険者として認められている。

 その条件とは、あくまで僕がポンと共に行動し、責任を負うこと。

 実際、ポンは子供のようなものだし、当然と言えば当然の条件だろう。


 あと、他の人たちとパーティを組むことについては、一先ず諦めた。

 残念なことだが、冒険者の大半はコボルトを馬鹿にしている。

 ポンとも、またポンと一緒にいる僕とも、パーティを組んでくれる人はまず現れないだろう。

 能力の低い存在に命を預けたくないと言われれば、それを否定することはできないわけだし。


 ……実を言うと、ポンを登録した日にパーティの紹介はギルドからあったのだが、その場で決裂した。

 あまり思い出したくないので、この場では触れないが、あれが普通の冒険者の本音なのだろうなと思った。


 とはいえ僕らも二人組とはいえ立派な――かどうかは別にして――パーティだ。

 戦闘力は変わらなくとも、雑用系の依頼ならできることは格段に増える。


 さあ、腐っている暇はない。

 いざ、次の冒険へ!


 ……うん、次こそはまともに冒険ができるといいなぁ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る