第6話

「私が所属していたのは、〈漆黒の双翼〉というAランクのパーティーでした」

「パーティーランクA!? そりゃあすごいっ!」


 俺は驚きのあまり、大声を出してしまった。周囲の迷惑そうな視線が突き刺さる。俺は軽く頭を下げると、声のトーンを下げる。


「Aランクのパーティーなんか、よく入れたな」


 パーティーのランクは、冒険者ギルドの査定によって決められる。

 上から、

 S・A・B・C・D・E・F。


 ちなみに、俺の所属していたパーティー〈聖刻の剣〉はBランクだ。……なお、俺自身の実力は(E寄りの?)Fランクである。


 こうしてよくよく考えてみると、おれがパーティーから追放されたのは、当然のことのように思えてくる。


 今までパーティーにいさせてくれたセドリックは実はいい奴なんじゃないか、と一瞬ではあるが俺は思ってしまった。


 だがしかし、セドリックの犯した悪行の数々と、その尻拭いをさせられたことを思い出して、やはりあいつはどうしようもない奴だな、と改めて思った。


「あ、言っておきますけど、私はちゃーんと試験を受けて加入したんですよ」


 ネルは自慢げに言った。


 パーティーをつくる(立ち上げる)のなら試験などないだろうが、加入するのなら面接や試験などがある。


 誰でもウェルカムなパーティーももちろんあるとは思うが、そういったパーティーは大抵Fランクの初心者パーティーだろう。

 上位ランクのパーティーに入るには、それ相応の実力が求められる。


 Aランクパーティーの加入試験をパスしたということは、ネルの実力はAランクあるいはそれ以上ということになる。

 見た目とは裏腹にすごいんだな、ネルって……。


「で、どうして追い出されたんだ?」

「まあ、そう急ぐでない」


 ネルはコーヒーを無理矢理おいしそうに飲むと、


「パーティーの加入試験では、主に魔法の威力やどれくらいの難易度の魔法が使えるか、といったことが問われました。私は難易度の高い魔法を使えますし、威力も非常に高かったので、すぐに合格をもらいました」

「へえ」


 ここまでは順調だ。だけど、追い出されたのだから、何かやらかしたのだろう。俺みたいに無能ってことはないだろうから。


「で、何をやらかしたんだ?」

「そう急ぐでない」


 ネルはもう一度言った。


「加入試験では幸いなことにボロが出ませんでした」

「ボロ?」


 俺は顔をしかめた。

 何やら不穏な単語が飛び出してきたぞ。


「ええ」


 ネルはにやっとわざとらしく笑った。


「ですが、ずっと隠しておくことはできず、すぐに出てしまいましたよ。ボロがボロボロと…………」


 当時のことを思い出してか、ネルは深くため息をついた。


「スーパーでスペシャルな私には、ある致命的な欠点があったのです。それは――」

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