第2話 彼女と撮影回ができて幸せです。
「もう夕方か・・・」
今日一人で買い物に行き、ついつい目移りしてしまい、家に着くころには夕方になっていた。
家の前に立ち、扉に手をかけると鍵が開いている。
前回の一件で急に引っ越すのは難しいということで合いかぎを渡すという話になり、合いかぎを渡したその日から彼女は毎日のように家に通いに来るようになった。
きっと彼女が家に来てくれているのだろう。
彼女のことを考えてつい緩んでしまった顔を戻し、一息おいて扉を開けた・・・
扉を開き、視界にまず入ったのは真っ赤な夕日に照らされた彼女だ。
赤々と照らされ手には包丁を持っている。夕日が包丁に反射して刃が茜色に輝いて見える。
彼女は僕の姿を認識し、包丁を両手で構え自分の頬に添えながら僕に語りかけてくる。
「どこに行っていたの?私、心配だったんだよ?○○君は私とずっと一緒にいるために○○君に少し痛いことするけど我慢してね?大丈夫だよ。ちゃんと最後までお世話するか・・・」
「かわいい!!!!!!」
「へ?」
彼女がなにか喋っていた気がするが、あふれる気持ちを抑えることができず声が出てしまう。
そのまま我慢できずに彼女に気持ちをぶつけてしまう。
「夕日に照らされて超かわいい!写真撮ろう!写真!」
そういいながら彼女の許可も取らずに今日買ったデジカメで彼女の写真を撮り始める。
「ちょ、ちょっとまって・・・」
「照れてる顔と夕日の相乗効果で可愛さ無限大やんけ!!」
「は・・・はずかしぃ・・・まって・・」
「そうだ!これを着てくれ!」
そういって部屋にあるエプロンを彼女に無理やり着せる。
彼女は何が起きてるのかわからない様子でおろおろしていて、されるがままになっていた。
彼女を思えば少し落ち着くべきなのだろうが普段とは一味違う、茜色に照らされた彼女を見てしまった僕の理性はどこかへと行ってしまっていた。
「エプロン!私服!包丁!可愛い!」
自分の高ぶる気持ちに従いシャッターを押し続ける。
彼女は何が起きているのかわからず、その場で固まっている。
「(今が攻め時!!)」
「ポーズつけてこのセリフをお願いします!」
「ふぇっ!?え?・・・えと」
「お願いします!」
そのまま何度かお願いしたのち、彼女は顔を真っ赤にしながらこちらの要求を呑んでくれた。
そのまま彼女にデジカメを構え続ける。
緊張のあまり、自分が生唾を飲み込む音でさえも大きく聞こえてくるように感じる。
彼女は涙目になりながらこちらの要求道理のポーズでセリフを放つ。
「わ、私の愛情であなたの心も料理しちゃうぞ♡」
「・・・・・・」
「あ・・・あの・・・・」
「・・・・ピロン♪」
「へ?」
何が起きているかわからないという顔の彼女の前でデジカメのムービーを再生させる。
ボタンを押すとデジカメから、
『わ、私の愛情であなたの心も料理しちゃうぞ♡』
という音声が流れる。それを聞いた彼女はさらに何が起きてるのかわからなくなったのか、かるくパニックになっている様子だった。
「○○君!?ねぇ○○君!?お願いちょっと待って!ほんとちょっと待って!」
「さてと・・・最後は・・・・」
そう呟きながら彼女に歩み寄る。
一歩一歩近づくごとに彼女はさらに取り乱し始めていく。
そんな様子の彼女を落ち着けるために肩を抱き動きを封じる。
肩を抱いたときに彼女が短い悲鳴を上げたが些細なことだろう。
そのまま開いている片手でデジカメを操り彼女と自分の2ショット写真を撮影した。
「えと・・・○○君?」
「二人の思い出が欲しくて今日このデジカメ買ったんだよ。」
「これからいっぱい思い出つくっていこうな!」
「は・・・はひ・・・」
彼女は気の抜けた返事をしながら僕に抱き着き顔をうずめてくる。
普段だったら気持ちがあふれそうになるが、先ほどまで好き勝手にしたおかげか、取り乱すことなく彼女を受け入れることができた。
そういえばなんで彼女は包丁なんか持っていたんだろう?
「・・・・・・・・・」
まぁべつにいいか!!
今日も彼女が可愛くて幸せです。
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