ReVIVE of BLOOD 〜不治の病の男が生体兵器にされ千年後に目覚めるが、役目そっちのけで新人生を謳歌する〜

おかゆ

第一章1話 中年は改造され時を超え再臨する

無機質な部屋の中、そこには1台のカプセルとそれにつながれた無数のチューブとコードの先には大量のモニターとコンピュータが繋がれていた。


モニターには無数の文字や数字、記号が流れつづけていた。

そして、ビービーというアラーム音と共に流れつづけていた文字群が消えた。


『緊急事態につき、実験体 石嶺士道 の生体確認プロトコルを実施。』


『実験体の免疫不全における悪性細胞の正常化完了済』


『機能不全状態の各臓器は全て復元済』


『体内の破損状況、及び過去の被験体の願望【自由・解放】を総合的に判断しすべての細胞にクリアランスを処置済、脳細胞及び肉体年齢を18歳程度の男性まで初期状態から成長済』


『実験体の記憶消去処理実行、、、失敗』


『バイオナノマシンの体内常駐は継続して実験体の計測を継続。バイオナノマシンに実験体の身体及び精神の正常化サポート及び疑似人格ナビゲートシステムを起動蓄積データをナビゲートシステムに複製、、、完了』


『以上、肉体は正常、精神は生存活動を継続する事に支障無しと判定。これより復帰プロトコルに移行。』


画面の文字が一通り流れた後、カプセルの内部に浸された薄いグリーンの液体がチューブから排出され、肺呼吸用の酸素が注入されていく。


『肺呼吸、成功。意識レベルが覚醒に近づきました。これよりカプセルのロックを解除後、施設の全機能を停止後10分後に消去』


『バイオナノマシンのナビケートシステムに権限を移行。身体の今後の損傷回復、精神の正常化自動処理を実験体に設定、バイオナノマシンのマスター権限を実験体石嶺士道で登録。この作業は遡及不可能。』


『設定が完了。カプセル全機能を停止。終了』


プシューと空気が漏れる音を出しながらとカプセルの蓋が開かれた。


・・・・・・・・・・

数分後、一人の男の眼が開き上半身を起こす。

男はいかにもよく寝たかの様に両手を伸ばして大きな欠伸をし、カプセルから降りる。明らかに自分のものではない近未来的なブーツがあったので靴のかかとを潰してスリッパの様に履いて室内の洗面台に向かった。


「ん?誰だこれ?」

男は鏡に移る自分が自分ではない姿を見て疑問を感じた。


「もしかして私かこれは?確かにカプセルに入る前に着せられた服のままだけど、、髪、顔、肉体!全部だ!一体何が起こった!」

彼は血液の病気が進行した結果、全身がボロボロのはずだったし、その鏡に映る輝くような健康体の様な身体である訳もない。そして病気になる前の時点既に乏しかった毛髪が全て再生し、キラキラとした黒髪がそこにはフサフサと生い茂っていた。


「それでここは何処?何年経った?私は誰?」


「あ、名前は石嶺士道ですね。40過ぎの中年男性でした、、、って全然別人なんですが!」

「え?ウソ、、、名前と人格以外別人ですか?いや、あれ?」

「この見た目、、大学に入学した時位?それにしては随分と見た目が格好よくなっている。。補正が相当にかかっている気がする。後このライダースーツみたいな服はなんだったんだ?病衣じゃなくこれをきせられたんだが。。。」


彼、石嶺士道はパニック状態から徐々に冷静さを取り戻し現実を受け入れ、深呼吸をする。

「取りあえず、生きてる。。。成功、したのか?それだけで嬉しいな。娘をやっと抱きしめることが出来る。数年ぶりに遊べるな。でもこの身体で信じて貰えるだろうか?」

呟きながらもその目からは涙がボロボロとこぼれていった。あと少しで死亡した人間が生きているだけでなく、まさかの青春時代の肉体なのだ。


「それにしてもここは何処なんだろう、あの時の部屋じゃないことは明らかにわかるけど、、」


士道は取りあえず洗面台で顔を洗い、久々にフサフサの黒髪を濡れた手で手櫛を通しオールバックみたいにしてみた。着せられていた黒地のライダースーツのおかげで見た目はすっかりスポーツマンである。


若返った身体からの高揚だけで、これからの人生へのやる気に満ちていると、部屋全体からけたたましい音のアラームが鳴り出した。


「え?は?」

少しすると今度はアラーム音と共に何かが崩れていく音がする。

「ちょ、ちょ!!」

士道は急いで周りを見渡し、何かわからないがリュックを見つけたのでそれを左肩で担ぎ、扉を見つけ大急ぎで扉を開けてその先の一本道の通路を見て靴を履き直し、若さの恩恵と言える軽い足取りで走る。遠くには恐らく太陽の光と思われる明るさを感じとにかく走り抜けた。


一本道を抜けて外に出たと思った瞬間、余りの眩しさに思わず目をつぶる。

カプセルでの睡眠中は当たり前として士道は病の為ずっと無菌室におり日光を浴びるのは数年ぶりなだった。彼は「数年」と思っているが、それがとんでもない間違いであることには後ほど気づくことになる。


眩しさに耐えながら少しずつ慣れてきた目を開けると、辺り一面はなだらかに下降した傾斜のある草原で見渡す限り遠く懐かしい緑の景色だった。


そして、ガラガラガラという大きな音と共に背後の施設は何故か粉々になりちょっとした小高い丘の様になっていた。あと少し脱出が遅れていたら復活するやいなや生き埋めでジエンドだった。


「え?私これからどうするん?ここ、どこなんだよ。。。」

虚しい呟きが反響するだけだった。

「まぁ何とかなるか。生きているんだし。折角の若い肉体だ。これからはしがらみとかに巻き込まれず自分の為に生きよう。あんな自己犠牲は余裕のある人と物好きがやればいい。今ここで俺は変わろう。」

士道は大自然の丘の上で静かに決意を固めた。

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