82話 暗闇
『『『『『ビビビッ……!』』』』』
「うわ――ゴポッ……!?」
モンスターの群れから一斉に放たれる電撃を、僕は慌てて回避する。あ、危なかった……。
あれから、水の神殿ダンジョンの最下層である地下五階まで僕は降り立つことができたわけなんだけど、構造自体に変化が見られない分、青い蛇みたいなモンスターが厄介すぎて苦労してたんだ。
なんせ、やたらと素早い上に【殺意の波動】で動きを止めると強烈な電撃スキルを放ってくるもんだから、逆方向ギミックに慣れてなかったら直撃を食らうところだった。
今の自分には【難攻不落】のような物理耐性スキルはあっても、こうした電撃を防げる魔法耐性スキルはまだないわけだからね。
『『『『『ビビビッ――』』』』』
――今だっ……!
もちろん、次に雷を出してきたときは【進化】によってパワーアップした僕のオリジナルスキル【削除&復元DX】でまとめて削除してやったけど。
スキル名:
【サンダースピアー】
効果:
手元から直線的な魔法の雷を発生させる。威力や射程は術者のステータスに依存。
これは……【ウィンドブレイド】と同じく風魔法系統のスキルだね。まさか水の神殿ダンジョンでこんなものを獲得できるとは思わなかった。
「――あっ……ゴポッ……」
【鬼眼】スキルに導かれて、僕はそれまでとはまったく違う異質な空間に辿り着いた。
そこは、このダンジョン内へ初めて入ったときの衝撃を思い出すような、とにかく広々とした奥行きのある空間で、天窓から淡い光が射し込み、真下にある祭壇付近を慎ましく照らし出していた。
その後ろに、分厚い本を手に持った法衣姿の髑髏が立っているのがわかる。微動だにしないからただのミイラにも見えるけど、雰囲気でわかる。きっとあれがボスだ……。早速あいつのステータスを確認してみるとしよう。
名前:ダークプリースト
レベル:87
種族:アンデッド
属性:闇
サイズ:中型
能力値:
腕力SS+
敏捷SS
体力S+
器用B
運勢A
知性S
装備:
聖書
効果:
聖なる力が宿っており、所持することで魔法攻撃力がかなり上がる。とにかく分厚いので打撃にも有効。
スキル:
【二重攻撃】
効果:
自身が攻撃する際、意識すると一度に二回攻撃できる。
特殊攻撃:
完全なる闇
効果:
広範囲に渡ってしばらくの間、決して照らすことのできない完全な暗闇を作り出す。
「……」
ステータスを見た感じ、かなり厄介なボスモンスターだと思えた。
アンデッドだから【瞬殺】が効かないのはもちろん、レベルがタコのガーディアンには及ばずとも高いので【殺意の波動】の効き目も期待できない上、能力にしても腕力や敏捷が驚異的な数値だ。
この【二重攻撃】も地味に強力な効果だね。
まだ【鬼眼】の効果が残ってるうちに戦いたいので、僕は準備が整ってすぐボスに向かって【混合】+《跳躍・大》+《裁縫・大》を使って飛び込んでいく――
「――ゴポッ……!?」
急に視界が真っ暗になり、あっという間にボスに迫られつつ攻撃されるのがわかって回避しようとしたけど、ダメだ。こ、これが特殊攻撃の完全なる闇……。
「っ!?」
僕は肩口を押さえながら、水中を縫うような跳躍の連続で慌ててその場から退避する。
異常すぎるスピードとパワーでしかも【二重攻撃】による攻撃だからか、肩口に聖書の角が一度に二回命中したとき激痛が走って骨が折れたかと思うレベルだった。
もし自分に【亜人化】+熊の力+【武闘家】+【難攻不落】がなかったら、脳天に命中して二発目で脳みそ飛び出ちゃってたと思う。
真っ暗な中でも、唯一見えていた髑髏がぼんやりとしか見えないことから【鬼眼】スキルの効果が切れかかってるのがわかるし、このままだとまずそうだ。
まず、あれだけ素早いと物理攻撃を当てるよりは魔法系のスキルがいいだろうってことで、【ストーンアロー】で応戦する。何気にこれって細かい石つぶてが大量に発生するし、周囲に満遍なく発生するので確実に当てるなら一番いいスキルだと感じたんだ。
とにかく真っ暗な上、いちいち逆に動かなきゃいけないっていうのもきつい。これらはちょっとした反応速度にもかなり影響していて、今の自分は薄れかかってる【鬼眼】だけが頼りだった。
この、完全なる闇とかいう特殊攻撃の効果が切れてくれたらかなりマシになるはずだし、それまでの我慢だ。
というか、色んな意味でお先真っ暗なヤバすぎる状況だっていうのに、危機感があまり湧いてこないのが不思議だった。
【鬼眼】がまだ持続してるからってのもあるだろうし、それだけ今まで様々なことを経験してきて、いつの間にか精神的にタフになってるってのもあるんじゃないかな。それと、むしろ苦境が快感になってきてることも確かなんだ。ギルドの係員たちに話したら変態扱いされそうだけど……。
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