8話 密談
名前:カイン
レベル:14
年齢:16歳
種族:人間
性別:男
冒険者ランク:B級
装備:
ルーズダガー
ヴァリアントメイル
スキル:
【削除&復元】
【鑑定士】
【ストーンアロー】
【武闘家】
テクニック:
《跳躍・小》
《盗み・小》
ダストボックス:
頭痛5
疲労8
眠気7
空腹5
「おめでとうございます、カイン様。遂にBランクですね!」
「ど、どうも、エリスさん!」
「あの、できればエリスって呼んでくださいっ」
「あ、う、うん! わかったよ、エリス!」
僕は受付嬢のエリスに褒められただけじゃなく、距離が一層近付いた気がして有頂天だった。あれからたった数日で冒険者ランクをBまで上げたわけなんだけど、これは最速記録なんだそうだ。
「……カ、カイン様、ちょっと裏でお話してもよろしいでしょうか……」
「えっ? あ、う、うん! 喜んで……!」
こ、これはまさかの告白? 心臓がどんどん高鳴ってきて口から飛び出ちゃいそうだ……。周りからの絡みつくような視線を気にしながら、僕はカウンターの奥に入った。
小奇麗なテーブルと椅子が窓際にあって、本や書類がぎっしり詰まった棚に挟まれる格好になった。きっと仕事ができる人なんだろうなあ。
「――あの、実は……」
「う、うん……」
緊張感が異様に高まってきたので削除する。本当に便利なスキルだ。それでもどんどん湧いてきちゃうけど。
「この前、ギランっていう方に絡まれていたでしょう?」
「えっ? あ、そ、そういえば!」
なーんだ、愛の告白じゃなかったんだね。何を勘違いしちゃってんだか僕は……って、ギランっていえば僕に喧嘩売ってきたやつじゃないか。あいつ、また何か問題行動でも起こしたんだろうか?
「先日、ギルド長様から除名処分を下されたそうです」
「ええ……」
喧嘩といっても、僕がボコられたとかじゃないからどうかなって思ってたけど、永久追放の次に重い除名処分を食らっちゃったのか……。
「あの方は以前から色んな問題行動を起こしていて、ギルドへの報告が累積した結果なんですよ。よほどのことがない限りこの処分は覆らないと思います」
「なるほど……」
僕に対して絡んだ一件が決め手になった格好だね。これでギルドに立ち入りすらできなくなるからちょっとだけ同情するけど、相手が僕じゃなかったら殺人沙汰に発展してたかもしれないんだししょうがない。
「そこで、カイン様にはくれぐれも気を付けてもらいたくて……」
「え……?」
「正直、カイン様の成長速度は尋常ではないと思います。何かおかしなことをしていると疑っているわけではないですけど……中にはそう思う方もいらっしゃるかもです。注意してくださいね」
「うん、わかった。わざわざありがとう、エリス」
「いえいえっ」
話が終わったらすぐに次の依頼を受けるつもりでいたけど、少し考え事をするために席に着いて休むことにした。ヒソヒソと周囲から話し声が聞こえてくるたび、いちいち自分に対するものじゃないかと疑ってしまう。でも、今の自分だと話題にされてる可能性も充分にあるんだよね。
「……」
もしかしたらエリスにも疑われちゃったかなって思うけど、それくらいのことを僕はしてるわけだしね。もし心当たりがあるなら今のうちにやめたほうがいいっていう意味も含まれてるのかも。
それこそ彼女は受付嬢として大勢の冒険者を見てきてるわけで、その上で尋常じゃない成長スピードって言われるわけだから感慨深い……って、喜んでる場合じゃなかった。
別に不正とかおかしな行為をしてるわけじゃなくても、僕のスキルはある意味特殊だからなあ。もし冒険者のスキルを削除してるってことがバレたら、あの喧嘩だってそのためにやったんだろうって、両成敗として僕まで除名処分を食らっちゃうかもしれないんだ。
もし除名されたら、一流冒険者として名を馳せて故郷の村人たちや元パーティーに見返してやるっていう僕の夢も消え失せちゃうし、エリスとの縁も切れそうだから、恨みのある人に僕のスキルを鑑定されるようなことがあるとまずいかも――
「――あっ……」
そうだ、その手があった。レベルが上がったことで考える力もついたことが大きいのか、とある依頼の貼り紙に書かれてたことを僕は記憶してて、それが今の状況にうってつけだって感じたんだ。
それは、あの『鬼哭の森』の中心にある湖に棲むレインボースパイダーっていうモンスターの足を30本集めてきてほしいっていう依頼だ。珍味として欲しがる人が多いけど場所が場所だけにBランクでも受ける人がいなくて、いずれはAランクまで上がるんじゃないかって囁かれてる。
そのモンスターの使うスキルが【偽装】だから、これを上手く削除、復元できれば僕のステータスも上手くごまかせるかもしれない……。
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