外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~
名無し
1話 お別れ
「おいカイン、お前は入るな。追放だ」
「えっ……?」
そこは古城ダンジョンの門前、【狩人】スキル所持者のパーティーリーダー、ナセルのまさかの追放宣言に僕はしばらく呆然と立ち尽くしていた。
「「「ププッ……」」」
「……」
メンバーたちから失笑の声が上がる。どうやらみんな、このことを事前に知ってたっぽいな……。
「ちょっと待ってよ。いきなり追放って……しかもなんでこのタイミング? するなら最初からそう言ってくれれば――」
「――このほうがお前にとってダメージがあるからに決まってるだろ。おい、まさか意外だって思ったのか? あんな外れスキルを貰っといて」
「……」
ナセルの言葉に僕は声を失う。
一月くらい前の話だ。自分は冒険者になれる16歳に達したこともあって、みんな付き添いのもとヘイムダルの都へ上京し、教会で【削除&復元】っていうスキルを受け取った。
大体はジョブ系スキルを貰えるって聞いてたから、どんなのかなってワクワクしたんだけど、結果は予想外なものだった。効果は所有物を消したり元に戻したりできるというもので、色々試した結果、パーティーでは荷物係を担当することになった。
確かに地味だけど、拾ったものを一瞬で削除、復元できるので荷物係としてこれ以上ないほど便利なスキルだったんだ。
「でも、みんなもこれで楽になるって喜んでたし、今日だってそんな素振りは一切なかったじゃないか……」
「おいカイン、お前は人の心の中まで読めるっていうのか?」
「……」
「なあおい、俺だけじゃなくお前たちも言ってやってくれよ、この身の程知らずに」
「じゃぁまず私から言わせてもらうねっ。カイン、あんたみたいなのをなんていうか知ってる? 寄生虫っていうのよ。宿主に寄生して甘い汁だけ吸う、そういうのを仲間っていえるのかなあ?」
「ファリム……」
僕と同い年で、【剣術士】スキルを持つスレンダーな女の子だ。昨日、宿舎の廊下ですれ違ったときは笑顔でダンジョンに行くの楽しみだねって言ってくれたのに。
「オーケー、次は自分の番ね。カイン君さあ、君のスキルはなんだい?【削除&復元】? こんなゴミスキルで世の中生きていけるほど甘くないと自分は思うよ。子供のお絵かきみたいなもんよー? アンダスタンッ?」
「ロイス……」
僕より一つ年下のお調子者のロイスに説教されてしまった。【治癒師】スキル持ちで、普段はおどけた言動でみんなにたしなめられてる側で、面白い人だと思ってたのに。
「あたしにも言わせてくださいな。カインさん、外れスキルを貰っておいて居座ろうとする厚顔無恥なあなたに対するこの仕打ちは、正直当然というか、甘いくらいだと思いますよ」
「ミミル……」
ロリ体型で【補助師】スキル所有者のミミルにこれでもかと叩かれる。ストレスのせいか胃がチクチクしてきたけど、このまま黙っているわけにはいかない。
「てか、それなら僕も言わせてもらう。こんなのあんまりだ。元々みんな村の落ちこぼれで、村を出るときに誓い合った仲じゃないか。いつか一流の冒険者になって見返してやるって。なのに、あいつらと同じことを僕にやるつもりなのか――」
「「「「――ププッ……!」」」」
僕の訴えに対し、神妙な顔で聞いていたナセル、ファリム、ロイス、ミミルの四人が堪えきれない様子で噴き出した。
「おい、カイン。見返すつもりなら、尚更お前みたいな無能を雇ってるほうが問題だろうが」
「リーダーの言う通りよ。お荷物でもいいので置いてくださいーとか、いくらなんでも都合よすぎじゃない!?」
「逆に、自分らを追い出した村のやつらのスパイじゃないのかね、君は」
「はあ、最低ですね……。その外れスキルのようにこの世から消してやりたい気分ですけど、ばっちいし触りたくもありませんので、どうかご自身で消去なさってくださいな」
「……」
畜生、心が折れそうだ。みんなの本音に気付けなかった自分も悪いのかもしれないけど、まさかここまで言われるとは。
【削除&復元】スキルは確かに戦闘では役に立たない。でも、一瞬で散らばった収集品を消すだけじゃなくいつでも元に戻せるし、荷物係としては最適という自信はある。その旨味もみんな味わってるはずなのに……。
「まあ、お前がどうしてもって言うなら残してやってもいいが?」
「え?」
「一生タダ働きっていうならな。それならいいよな、みんな?」
「そうね、それならいいかも?」
「うむ、悪くない」
「いいですね。それなら許してあげます」
「……」
なるほど、読めてきた。初めからこれが目的で、追放宣言されて縋りつく僕を奴隷のような立場にすることで人件費を削ろうってわけだ。
「わかったよ、さよなら」
「「「「……」」」」
こっちから別れを告げてやると、みんなあてが外れたのか呆然としてる様子だった。正直、こいつらの奴隷になるくらいなら一人のほうが断然いい。
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