第2話 クソダサい
【
ざまぁしない?
そう言って私に手を差し出して来る鷹宮。
目の見えない様な長い前髪の無口な不気味男子だと思っていたので驚く。そんな鷹宮は更に話を続ける。
「悔しくない?金ヅルデブスとか言われて」
「……悔しい」
そう言われた私はさっきの藤瀬君に言われた事を思い出して拳をぎゅっと握る。
さっき藤瀬君に言われた事は心に深く突き刺さっていた。
「ならさ、ざまぁしない?見返さない?」
「…み、見返す?」
「そう。君を罵った藤瀬を見返すんだよ!」
「…でも、どうやって?」
悔しいが、藤瀬君に言われた通り私は不細工だし太ってる。家がお金持ちな事しか取り柄がない。つまり私自身には何の取り柄もない。
「君は痩せたら、めちゃくちゃ可愛い」
「へっ?」
「多分この学校の誰よりも可愛いくなる」
今さっきまでウッキウキな喋り方だったの鷹宮がいきなり真面目なトーンでおかしな事を言う。戸惑う私。
「な、何を根拠にそんな事言えるの?」
「俺は実家が有名なダイエットジムなんだ。ファルコンダイエットジムって聞いた事ない?」
「…あ、あの駅前のダサい大きい鷹の像のジム?」
「…はぁ~…うん。それで合ってるよ」
「あっ、ダサいって言ってごめん」
「いや。別にいいよ気にしてないし」
そう言うが、鷹宮は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「っと、話が逸れたね。実家がダイエットジムって事は話したね?それでその影響で俺分かるんだよね」
「分かる?」
「うん。痩せたら顔が良くなるかどうかが分かるんだ。で、君は今まで見た中でマジで可愛くなれる素質がある」
「…そういう事」
「じゃあ痩せない?痩せて可愛くならない?」
「…でも、私ダイエット前にしようとしたけどダメだったし…無理だよ…」
前にヤバいと思って痩せようとはしってダイエットしようとしたけど三日坊主で終わってしまった。
「そのダイエットってなんか目標あった?」
「も、目標?…ヤバいから痩せようとしてただけだよ」
「それじゃ厳しいかな。例えばウチのジムに来る人の中にはウエディングドレスが着たいって痩せようと頑張ってるお姉さんが来てるんだけど…ダイエットって痩せて何かしたいっていう強い目標がないと厳しいんだよ」
「そうなの?」
「そう。でも、今回はその時とは違うでしょ?今回のダイエットはちゃんと目標があるし原動力もある。藤瀬を見返すという目標と君を金ヅルデブスと罵った藤瀬への憎しみがね」
鷹宮の口が三日月の形に裂けた様に錯覚した。夕暮れ時の薄暗い教室だと悪魔みたいだった。
「…私、痩せたらほんとに可愛んだよね?」
「うん。めちゃくちゃ可愛い」
「絶対に藤瀬君を見返せる?」
「絶対。約束する」
私は鷹宮の手を取って立ち上がった。
「…よろしく鷹宮」
「よろしく…えーっと名前なんだっけ…」
「…
「椎名さんね。よろしく、椎名さん」
私は悪魔と手を組む事にした。
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