#novelmber 2020 1-30

新出既出

第1話 1-10

11月にtwitter上に現れる#novelmberに2020年初参加した。

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11/1 炎

 暗いのは恥ずかしい。と彼女が言った。僕が反対する理由はない。そして僕達は熱く燃え上がった。

でも、何故暗いと恥ずかしいんだ?

 そのまま眠ってしまった彼女を起こさないよう、僕は部屋の電気を消した。すると、彼女のおへそからチロチロと炎の灯りが漏れ出るのが見えた。

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11/2 鍵

「密室なぞないっ」

「ですが内部から閂のかかった倉の中の、結跏趺坐状態での服毒死。床はコンクリートで窓は小さな空気孔のみなんですよ」

「鍵は被害者の姿勢だ。これは密室が作られる過程で最後の力を振り絞って結跏趺坐をしたのだ」

「その意味は?」

「奈良の大仏だ」

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11-3 別離

「別れたのに、別れた相手がまだ心の中に居座っているとしたら、肉体に二度と触れられないほど互いの体が離れているケースでも、『別離』とはいえないのでしょうか?」

「文学的な意味においては、別離でいいと思いますが……」

「いえ。心霊的な意味なんですが」

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11-4 再会

もう再会は果たせないだろう。2014年のミスタークロワッサンドーナツは、この世界から永遠に失われたのだ。2018年のクロワッサンドーナツ? それこそが私から、再会の希望を完全に奪い去ったのだ、あれじゃない。私は心の中止に大きな欠落を、そう、ドーナツのあ……

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11-5 声/歌

人魚姫は 声/歌 を失い、形成した足からは鮮血が溢れました。激痛の悲鳴は赤い泡でした。通りがかりの芳一は、魚だ、と思って寺へ連れ帰りました。そこで人魚姫は読み書きを覚え、嵐の夜、芳一の耳以外に経文を書いてあげました。二人は結ばれて末永く幸せに暮らしました。

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11-6 光線

開閉できるスリットがある箱の黒い内壁には小さな鏡が、角度を変化させることができる枠に何枚か取り付けられており、子供たちはスリットへ誘い込んだ光を鏡に反射させ、そしてそのままスリットを閉じて閉じ込められた光が弱って死んでしまうまでのたうちまわる光線を観測した。

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11-7 かけら

 かけらの形は記憶であり暴行の証拠だ。かけらはどのように砕かれたのかを全て記憶している。かけらの一つ一つが砕かれる以前の全体の形を概念としてとどめている。ではその概念はどこに存在するのか? 今日は7日だから、9番の駒田。

クソ詩人の頭ン中です。

はい、正解。

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11-8 美術館

美術館が爆発したのは真の芸術品を展示したため。という意味の存在しない言語をボディーペインティングした全裸の僧侶が押し寄せると、そのデモの届出を受理した公安警察隊と銃撃戦となり、その事件で双方に出た犠牲者を悼むという珍奇な大理石像に、CAT'S CARDが?

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11-9 絵画

キュビズムは神の皺だ。原点は日本の折り紙にある。二次元を折りたたんだ襞が空間に立ち上がるとき、折り紙は時間を捨象した襞に沿うが、同時に空間に囚われる。だがキュビズムは平面の襞である。それは神の顔面であり、絵画によってのみ写し取ることができる美顔パックだ。

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11-10 未知

自転車で同じ道を行き来して30年。未だに知らない曲がり角があり、そういう曲がり角を見つけると必ず曲がることにしている。知らない曲がり角の道に曲がり角は一つもなく、見知った曲がり角に出て未知の道は終わるのだが、見知った曲がり角の道には必ず未知の曲がり角がある。

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