第21話

 まるちゃんと妃奈子ちゃんは一緒に、この部屋から出て行った。そんな2人をきちんと見送っていなくなってから、俺は美保に話しかける。


「……えーっと、美保?その、だな……」


「話したいことがあるんだよね?多分……」


「あ、ああ。そうだ」


 俺が話しかけると、美保はその意図を分かってくれた。俺は素直に、美保の言葉に頷きを返す。


「よかった。私も話したかったの。その、昨日のこともあるし……」


 どうやら、美保も俺と同じ考えだったようだ。俺も美保に聞きたいことがあるが、美保も俺に聞きたいことがあるのだろう。


「そうだな。多分、俺が聞きたいことの方が多いし、美保から聞いてくれていいぞ」


「そ、そう?じゃあ、私から聞かせてもらうね」


「おう」


「な、なんで桜蘭君と、プリクラを撮ることになったの?」


 俺が美保からの質問を待っていると、美保からそんな問いがとんできた。そういえば、撮ることになった経緯は説明していなかったかもしれない。


「あー……。それはまあ、流れもあるんだが、プリクラがどんな感じなのか気になってな。それで撮ることになったんだ」


「でも、なんで桜蘭君と?」


「その日、俺と桜蘭がカップルと間違えられることが多くてな。プリクラも行けるかもって話になって、それで……」


「そ、そうなんだ……」


 俺の説明を聞いた美保は、複雑そうな顔をしながらも一応理解してくれたようだ。やはり美保からすれば、俺と桜蘭がプリクラを撮ったことが一番気になっていたのだろう。


「……じゃあ今度、私とも撮らない?」


 すると美保が、そんな提案をしてきた。俺はその提案に頷きを返しながら、よりよい提案をする。


「ああ。いいぜ。まるちゃんも一緒に、家族でな」


「……うん。そうだね。まるちゃんも、喜んでくれると思う」


 俺の言葉を聞いた美保は、微笑みを浮かべながらそう返してくれた。プリクラとはいえ、立派な家族写真になることは間違いない。


 その時は必ず、カップルモードは選択しないようにしなければ。もうこのモードはごめんである。


「それで、聞きたいことはそれだけか?」


「あ、あと一つだけ聞かせて?私たちと別れた後、桜蘭君と何してたのかな、って……」


 俺が確認をとると、美保はもう一つの質問をしてきた。別に隠すようなことは何もしていないので、俺は包み隠さずに答える。


「それなら、服を買いに行ってたぞ。この服も、その時に買ったんだ。桜蘭が選んでくれてさ」


「あ、そ、そうなんだ……」


「俺も桜蘭の服を選んだし、楽しかったよ」


「そ、そっか。服も、一緒に買いに行きたい、かな」


 俺が桜蘭と出かけた感想を言うと、美保がそんなことを言い出した。確かに、美保とまるちゃんといった家族では、行ったことがない。


 せっかくの家族なのだ。この家族で、色々なことで遊びたいと思う。


「そうだな。行こう、家族で」


「っ……!うん……!」


 俺の返事を聞いた美保は、先程よりも明るい笑みを浮かべながら頷いてくれた。これで、美保の聞きたいことは終わりだろう。


 今度は、俺が美保に聞く番だ。俺が聞きたいのも、昨日の事の違いない。


 今まで聞いてこなかった、彼氏、坂本の事。ついに俺は、その詳しい事情を聞くことになる。

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