第28話
「ママ!パパ!見て見て!お城、すっごいおっきい!」
岐阜城の目の前まで来ると、まるちゃんがそう言ってくる。最近来ていなかったが、やはり城というだけあって大きいのは間違いない。
「すごいですね……。岐阜に来てよかったです」
「写真撮らないと」
ヒロ君のお母さんが岐阜城を見て感動し、ヒロ君のお父さんはポケットからスマートフォンを出して岐阜城の写真を撮っていた。そんなヒロ君のお父さんを見て、俺はあることを思いつく。
「あの、家族写真撮りませんか?スマホ貸してくれたら撮りますけど……」
「いいんですか?ぜひ、お願いします」
俺の提案に、ヒロ君のお母さんがのってくれる。俺はヒロ君のお父さんからすでに撮影画面になったスマートフォンを受け取り、岐阜城の方に向けた。
すると、ヒロ君の一家が岐阜城の前に並ぶ。まるちゃんと美保は、俺の傍まで来て映らないようにしていた。
「じゃあ、行きますよ。はい、チーズ」
俺はそう言って、スマートフォンのボタンを押して写真を撮る。そこに映ったのはピースサインを作った一つの家族だった。
「撮れましたよ。返しますね」
「ありがとうございます。よければ、そちらも撮りませんか?」
写真が撮れたスマートフォンを、俺はヒロ君のお父さんに渡した。ヒロ君のお父さんはそれを受け取ってから、俺たちも撮らないかと聞いてくる。
だが、俺はすぐに返事をすることができない。家族写真を撮るのなら、美保とまるちゃんに撮りたいかどうか聞かなければ。
「えっと……。ど、どうする?撮りたいか?」
「そうだね……。まるちゃんは、写真撮りたい?」
俺が美保に聞くと、美保はそれに答えずにまるちゃんに聞いた。やはり、まるちゃんがどうしたいかによる。
まるちゃんがしたいかどうかが一番だ。今回は、まるちゃんが楽しんでくれればそれでいいのだから。
「うん!撮りたい!」
「……そっか。うん。じゃあ……」
「おう。すいません。お願いしてもいいですか?」
「はい。じゃあ、並んでください」
俺はヒロ君のお父さんに自分のスマートフォンを渡してから、美保とまるちゃんを連れて岐阜城の前に並ぶ。まるちゃんを真ん中にして、俺と美保で挟んだ。
「撮りますよー。はい、チーズ」
俺たちはポーズをとると、カシャッという音がなる。なり終わると、ヒロ君のお父さんが近づいてきた。
「よし。撮れましたよ」
「あ、ありがとうございます」
俺は礼を言って、ヒロ君のお父さんから自分のスマートフォンを返してもらう。するとまるちゃんが、俺の袖を掴んできた。
「ん?どうしたんだまるちゃん?」
「あのね!まる、ヒロ君とも写真撮りたい!」
まるちゃんにどうしたのか聞くと、まるちゃんからそんな答えが返ってきた。だが、それは俺に聞くことじゃなく、まずはヒロ君に聞かなければいけないだろう。
「まるちゃん。ヒロ君とも写真を撮りたいなら、ヒロ君に聞いたらいい。ヒロ君がいいなら、撮ろうな」
「うん!分かった!ヒロくーん!一緒に写真撮ろー!」
「う、うん!いいよ!僕も撮りたい!」
まるちゃんがヒロ君にそう言うと、ヒロ君も撮りたいと言ってくれた。まるちゃんとヒロ君は手を取って、岐阜城の前に並ぶ。
「その、まるちゃんがすいません……」
「いえいえ。大丈夫ですよ。一緒に撮りましょうか」
俺がそうヒロ君のお父さんに謝ると、ヒロ君のお父さんは大丈夫と言い、自分のスマートフォンを出してカメラを起動していた。俺もすぐに、カメラを起動する。
「パパ~!撮って~!」
「おーう!じゃあ、せーのでいきましょう」
「はい」
「せーのっ。はい、チーズ」
2つのシャッター音が鳴り、写真が撮られる。まるちゃんとヒロ君は手を繋ぎ、それとは反対の手でピースを作っていた。
「よし。撮れたぞー」
「わーい!ありがとうパパ!」
俺がそう言うと、まるちゃんとヒロ君が俺たちの元まで戻ってきた。まるちゃんは喜んでくれたようで、笑顔で俺にお礼を言ってくる。
俺もそんなまるちゃんを見て、笑みがこぼれる。すると、美保が俺たちに話しかけてきた。
「写真も撮れたし、そろそろ行かない?」
「そうだな。それで、大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫です」
「じゃあ、行きましょうか」
美保の言葉に頷いた俺は、その流れでヒロ君のお父さんとお母さんに確認をとる。二人もすぐに頷いてくれたので、俺たちはすぐに歩き出した。
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