第18話 九月 二十日


俺は寝る準備をしていたんだ。歯も磨いたし、買ってきた漫画をベッドの上で読んでいた。三冊買ったんだけど二十分ぐらいでよみおわった。漫画なんてそういうもんさ。

俺の部屋にはベランダがある。おばあちゃんの植木鉢がいくつか飾ってあって、定期的に水やりをしないといけない。その水やりが俺に任されているんだ。

薄いカーテンを掛けている。

部屋の電気を消すと外の夜景がカーテンを通して薄っすらと見える。

漫画を閉まって寝ようとベッドにもぐり込んだ。

昔からおばあちゃんの植木鉢がお化けに見えたりする。丁度人の頭ぐらいの高さでぶら下がるのがあるから、よく小さい俺はそれに怯えながら眠りについていた。そして、朝起きるとベランダの植木鉢を確認していた。

気まぐれでベランダの方を見る。

昔と同じように人影のようなものがカーテンの向こうに見える。

突っ立てる。

無表情の黒い顔と動かない身体。

俺には見慣れた光景だ。

そいつが眼をパチパチして笑うのを見た。


翌朝植木鉢が全部消えていた。

「あら、気付かなかったの?何日か前におばあちゃんが全部取りに来たのよ」

とお母さんは言った。



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