レベル10
それからオレ達は色々な店を見て回った。
アクセサリー、武具、武器、居酒屋、洋服屋、美容室、スイーツなどの店があった。
他にはテレポートの部屋があるのが不思議で仕方なかった。肉体はテレポートできないのに、何でこの部屋があるんだ?
さらには宿屋まであるのには驚いた。
元は普通の教室だったのに、どうやって寝るんだ……?
取り敢えずは今晩の寝床をここで確保した。
クレオが是非入ってみたいと言ったのが、使い魔の店だ。エリーの使い魔である鷹が欲しいみたい。
中に入ると思っていたよりも使い魔の種類が豊富なのでビックリ。使い魔は育てて強くして行くので、生まれて数ヶ月後の状態で売られている。
でも、使い魔が人間を決めるので気に入った使い魔が手に入るとは限らない。クレオは鳥の使い魔が欲しかったみたいだけれど……。
ケージの中の赤い鳥が、オレの方を向いてしきりに鳴いている。
「ピィー、ピィー」
指を近付けると、可愛らしいクチバシで突いてくる。どうやらオレを認めて、連れて行って欲しいらしい。でもオレは、エリーと同じタカかハヤブサが欲しかったので無視しようとしたら、ケージの後ろに白い蛇が現れた。首を縦に振っており、この鳥を連れて行けと言ってる様にみえる。
今朝、ペッパーさんを助ける為に同じ白いヘビが現れて首を横に振った。その後オレは灰色狼の奇襲にあって、階段の下まで落ちて混戦になった経過がある。
白いヘビが危険を知らせてくれたみたいだと,後から分かった。けれど,今回は縦に振ってる……?
この白いヘビを信じるなら、この赤い鳥を使い魔にした方がいいという事か?
そもそもこの白いヘビを、全面的に信じていいのか……?
白いヘビをジッと見ると、向こうもこちらを見ている。まるで、知的な生き物の様な目で……。
育てるにしても、問題なのはこの赤い鳥がどの様な能力を持っているかだ。ある程度育たないと分からない為、一人で複数の使い魔を持っている人は沢山いるみたいだ。でも、育てるのにはそれなりの時間と労力、そして餌代を使うとエリーが言っていた。
もう一度赤い鳥をみるとオレを必死で見ており、何が何でも連れて行って欲しいみたいだった。
オレは決断をして、ケージから赤い鳥を出してあげた。
クレオを見ると、1匹の使い魔に認めてもらえたらしい。でもエリーが猛反対しており、2人で言い合いになっている。
「クレオ、その使い魔だけはやめた方がいいの!
最強だけれども、最悪でもあるんだからね」
「どう言う意味なのそれは?」
「お尻から、強力な毒を出すんだ。その中でも、ボス以外だったら逃げ出すと言われているガスが凄いんだよ。風下で使うと、気絶するほどの強烈な臭いがこちらに襲って来る。
その子、スカンク系の魔物なんだから!」
「え……。
こんなに可愛いのに……」
「だから……、頼むから諦めてクレオ!」
クレオは、オレが赤い鳥を持っていたのを見て悔しそうに言う。
「その赤い鳥は、私が最初に欲しかった鳥……。
もしかして、マサトはその子を買うの?」
「必死になって頼んでくるから、……」
「それだったら、私はこの子を買うわ!
最悪だけれど、使い方によっては最強なんでしょう?」
クレオは必死にエリーに頼み込んでいる。
「それは、そうなんだけれど……」
「決まりね。
エリー、お金払ってくれる?」
クレオは一度決めたらよほどの事がない限り決定を変えない性格。エリーの母親だから、骨の髄まで性格をお互いに知っている。
カウンターに行って店の人にエリーは言う。
「すいません。このスカンク系と赤い鳥を買いたいのでお願いします」
「あ、ありがとうございます。
えーと、これを、こうして。
あれ……? 違うな?」
「どうされたんですか?」
「一時間前にこの店のテナント契約したばかりなので、システムがよく分からないんですよ」
「それなら私がある程度知っているので教えましょうか?」
「本当ですか? 凄く助かります」
エリーはカウンターの中に入って画面を操作する。店の人に教えながら進めると思わず手が止まっている。オレ達にも画面を見せてくれたけれど、スカンクの値段が余りにも安いからだ。
これって、最強と最悪を相殺した値段なのか?
さらに赤い鳥の値段をエリーが見て、小さな叫び声をあげる。
「ウソ!」
画面で赤い鳥の値段を見ると4千万ペルと表示されてあった。
これって、高すぎるのでは?
「使い魔がこんな値段なんて、聞いた事がないわ!
普通は1万から2万ペルぐらいなのに……。3桁も違う……」
エリーが払える額ではあるけれど、最強のヤリがさらに遠のくのは間違いない。でも、この金額を払う価値がこの赤い鳥に有るって事なのか……?
肩に乗っている小さな赤い鳥の、外見からは想像もつかない秘めた能力を知りたくなって、オレはエリーに必死に頼み込んでいた。
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