男女6名が集まる、慧嶺高校のアナログゲーム部――通称《AGO部》(Oはどこから来たんだ……?)。その新部長萩枝恋は、就任して早々部内の水面下で蠢く問題に直面する。それは部員たちの恋愛関係……。部活内での恋愛などよくある話。しかしここで問題となるのは部員たちの好きな相手と好かれている相手が全員異なるすれ違い状態にあることだ!
誰か一人の恋愛が成就すれば残り全員の失恋が確定する失恋ドミノが完成されてしまう。しかもそんな状況を知らない部員たちは、部長である恋に対して次々と恋愛相談を持ちかけてくるではないか。この緊急事態を解決し部活を維持するため、恋は全員の恋愛が失敗するように裏工作を開始する!
恋をするというのは素敵なことだが、時として誰かの恋愛成就が誰かの不幸に転じるということも起こりうる。特に部活やサークルなどの小さなコミュニティではそれが致命的なことになりかねない。そんな中で表面上協力している振りをしながら、あれこれ画策する恋の奮闘の様子が楽しい。
また主人公である恋も含めて恋愛面とは別に全員秘密を隠し持っているようで、いずれも一筋縄ではいかない面々ばかり。そんなちょっぴりミステリー要素も含んだ、こじれた人間関係が織りなす恋愛劇をお楽しみあれ。
(「部活、どうでしょう?」4選/文=柿崎 憲)
本作品は、MF文庫Jにて『今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。』等を執筆している涼暮皐先生が放つ新感覚ラブコメディ、いや、アンチ恋愛コメディである。
なお、本作品は過去LINEノベルにて掲載されいていたが、(以下、略)。
カクヨム掲載にあたって、短編が追加されているので既読者も是非ご覧頂きたい。
さて、本作品の面白さを語るのであれば、
まずは、新感覚恋愛阻止型六角形ラブコメ、とうたう、涼暮先生らしい混み合った、面倒くさいとも言える設定。六角形がどう形成されるかは読んでのお楽しみ。
そして、それを構成する、愛すべきアホの子たちであるAGO部員たちであろう。主人公、恋と彼らのトークが実に軽妙で楽しいし、そしてなにより彼らの行動が面白い。
つまりコメディなのである。
おっと、ラブの話はこれからである。
恋愛とは制御できるものではない。きっかけは、ささないことだってあるし、思いの大きさや形も人それぞれ。何よりも万事がうまく運ぶわけでもない。
ふと、AGO部員たちを見守っていると、そんなことを考えてしまう。
特筆べき点としては、やはり蝶野ぼたんの存在であろうか。
私はこの作品において彼女が大変気に入っている。(涼暮先生のクレバーで自覚ありの後輩キャラですね、つよい)
彼女がどんな存在で、どんな思いを抱いてるのかは、是非、ご自分の目で確かめて欲しい。
つまり、今はまだ「人の心がないラブコメ」ではないですけど、となる。
最後に、主人公の恋は、涼暮現代作品のなかでも結構ひどいことをする。
彼も涼暮主人公らしく魅力あるキャラであるが、当然、闇もある。でも、彼の行動原理を支える部分は1章では明らかにならないので今後に期待したい。
第1章ではいきなりラブコメ擬態を解除したりしないので、油断して読んで欲しい。面白いよ!!