新年早々、半笑い
あけまして。おめでとーございます。
って、なんべん言ったか知らないけど。って、言うほど言ってはいないんだけど。なんか、半笑いになっちゃうよね。や、何も面白くないんだけど。うちは元日からわりと人が来るタイプの家なもんだから、お母さんとお姉ちゃんはなんか忙しそう。あたしは戦力外通告受けてるから、半笑い担当だ。
「飽きる」
あたしはぼそっと呟いた。
うちらがまだお昼食べ終わってないうちにやってきてお父さんとお酒飲んでうだうだしてた、多分お父さんの同級生とかそんな感じのおじさんが「ほんじゃ」とか言って帰ったとこだった。
「わかる」
うちのお父さんは、あたしの貴重な半笑い仲間だ。こういうのがあんまり好きじゃないってのを、あたしは知ってる。んで、お父さんも、あたしが仲間だってことを知ってる。ま、いいけどあたしの口調真似すんなっての。
「じゃあ由紀奈、お詣りでも行きますかね?」
「えー。まーいっか。暇だし。やること無いし」
「どーせ明日もこんなんだし。なあ?」
「だから真似すんなっての。どーせあそこでしょ? ナントカ稲荷」
「そう、ナントカ稲荷」
「じゃーべつにこのままでいーよね。近所だ」
べつにどうもこうもしない普段着でコート着て、外に出た。正月らしく? 普通に晴れてた。
「ばあちゃんの所は降ってるんだろうなあ」
「雪? そりゃー降ってるっしょ。普通に積もってんじゃん?」
ばあちゃんってのは、お母さんのほうのばあちゃんのことだ。つまりお母さんのお母さんで、淳ちゃんからすると伯母さんになるね。そう、あたしのお母さんと淳ちゃんはイトコで、あたしはお母さんの娘だから淳ちゃんの
「まーそんなのどーでもいーんだけどね」
「由紀奈ぁ、若いうちからどーでもいーとか言うもんじゃないぞ?」
「知ってるー。おとーさんみたいになっちゃうからでしょ。いつも言ってんじゃん」
すでになってるけどねー、とあたしはこっそりほくそ笑む。なこと言ってるうちに、ナントカ稲荷に着いた。
「おみくじおみくじー」
「あー待ってあたしも。ってか、手洗わないと」
「冷たいんだよなあ」
「みんなそーだよ。我慢しなって」
境内はそこそこ混んでたけど、そんなには混んでなかった。たぶんみんなここらの人だよね。あたしらみたいに適当な格好で来てる。
「由紀奈、何だった?」
「そっちこそ何だったよ。てかまだ開けてねーし」
「ほほーん。ほら、俺は『大吉』だぞ。ええと、なになに……」
「んげ」
あたしのは『凶』だった。なんでだよ。
「ほほーん。由紀奈さん、やってしまいましたなあ」
「うるせーうるせー」
こういうとこは似てないんだよね。あたしって、どっちかってーとついてないタイプだと思う。悔しい。
つーわけで、お賽銭入れて拝礼する。おみくじの後で、ってのがウチのやり方だったりしてね。おみくじの結果踏まえて、お願い事をするっていう。合理的っしょ。二拝二拍手一拝ってのは、ちゃんと守るよ。
「ねー、ここのご利益ってなんだっけ」
「さあ? お稲荷さんだから五穀豊穣とかじゃないのか?」
「五穀豊穣」
「ああ、商売繫盛と書いてあるな」
「商売繫盛」
「なんだ由紀奈、『凶』引いたのそんなに不満か」
「べつにー。前にも引いたことあるし。それはともかくだよ。おとーさんの商売はどうなの」
「べつにー。俺が経営してるわけじゃないからなあ。まあ、安泰だろう。知らんけどー」
「適当すぎじゃね」
「大丈夫大丈夫。おみくじ『大吉』だったしなー」
「ぐっ」
「そういうことですわー」
「なんか腹立つ」
そんな感じで家に帰ってきても、まだやっと二時過ぎたくらいだった。あたしらがいない間にも何人か来て、そんで帰ってったらしい。
「また誰か来ないうちに、俺がどっか行くかねえ」
ふーん。お父さんいるとお客さん長居しちゃうもんね。そんな気遣い。なるほど。
「由紀奈も来るかい?」
「誰が。あーでも、あたしもやっぱ出よっかなあ」
お父さんの代わりに相手させられてもやだし。
「なんだ、やっぱり来るかい」
「ちげーし」
ついてくわけねーし。
「じゃあなんだ、どこに行くんだ?」
「え、えーっと……」
行くとこって言ったらひとつしかないんだけど。
「んんー?」
「いやー……」
つい半笑いを浮かべちゃう。
「そんな隠さんでも知ってるぞ? どうせ淳ちゃんだろう?」
「ま、まあ……そうなんだけど、ね……」
あたしは
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