第14話 秋の花火/湿気る前に
秋の花火/湿気る前に
秋の花火/湿気る前に
引き出しに入っていた
夏に使い切れなかった花火
力を持て余してるのに
発散する場所を知らない若者のように
袋の隅で数本たむろって
こっちを睨んでる
「どうせ おまえらも湿気てるだろ?」
そう嘲笑ってライターと花火の袋を持って近所の公園に出かける
少し冷たい風が
体の芯残っていた夏の熱を冷まし
コオロギ達が満月に
何重奏も音を重ね歌う
暗闇にライターの火が一つ灯り
頼りない線香花火の先端から
煙が上がる
季節外れでも戸惑うことなく
黄色い火花をパチパチ飛ばして
危険な火薬の匂いを漂わせる
線香花火
一本 二本 また一本
袋から花火を取り出しては
それぞれの命を眺める
完全に燃え尽きると
灰になって 秋風に吹かれる
耳元を通り過ぎた灰がそっと囁く
「おまえはまだ終わっていない」
たとえ周回遅れだとしても
きっかけがあれば
命は燃え上がり
輝き続ける
その身が灰になるその日まで...
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