第23話 終決


 モンスターの集団を倒した後、俺は一緒に戦った人たちに胴上げをされていた。

 理由は一番活躍したから……だそうだ。


 そして、強さの秘訣を聞かれ『ステータス』を強化したからといったら、なんと戦闘に参加した大半の人がステータスをいじっていないことが明らかとなった。


 そんな状態で、ゴブリンと戦っていたのか……。

 すごい。


 リーダーの人を見ていると、頭を抱えている。

 どうやら、この人たちがステータスのことを知らないとは思っていなかったんだろう。


 でも、そんな人たちがいる中、よく怪我人が数人出ただけで済んだなと思う。


「さて、それじゃあゴブリンたちの武器を回収して戻りましょうか!」


 辺りはもう暗くなって来ている。

 早いところ引き上げなくては。


 俺は先ほどまでデカいゴブリンと戦っていた場所に行って剣を拾う。

 その剣は、普通のゴブリンが使っていた剣よりも大きく、ずっしりと重い。

 だけど持てないわけではない。片手では厳しいが、両手なら持てる。


「後でステータス強化しようか……」


 今回レベル五まで『SP』を貯めたが、次からは積極的にステータスに振っていこうと思う。

 俺の場合、ユニークスキルがあるから普通のスキルがあまり必要がない。

 『刃神』が強すぎるからな。

 今レベルアップで獲得した『SP40』は全てステータス行き。


 そうしたらこの剣も楽に持てるだろう。

 俺のナイフはどこかに飛んで行ったしな。


「冬哉くん、お疲れ様」


「あ、お疲れ様です」


 剣を見ていると、あのリーダーが近づいてきた。

 そういえば、まだ名前を聞いていないな。


「いやー冬哉くんがきてくれて助かったよ……僕じゃあどうもあの『ホブゴブリン』を倒すのは難しくてね」


 あのデカいゴブリンは『ホブゴブリン』というのか?

 それに、この口ぶりだともともと俺があのモンスターに勝てると思っているように聞こえる。


「いや、俺でも難しかったですよ……正直、周りが普通のゴブリンを殲滅してくれたからこそあのホブゴブリンが焦って隙を見せたんですよ」


「それでも、君がいてくれたからホブゴブリンを倒せた。もし君がいなかったら今の防衛組だと倒せなくて全滅してたかも知れないしね」


 この人は、多分俺がユニークスキル持ちだということを知っている。

 でなければ、俺がホブゴブリンに勝つなんて思えないだろう。


 でも、なんでだ? そんなものがわかることなんてあるのか?

 そうだ、聞いてみるか。


「なんで俺があのホブゴブリンを倒せると思ったんですか?」


「あぁそれはね、僕が手に入れたスキルのおかげだよ。僕が持っているスキルは『鼓舞』

『指揮』の二つと、『鑑定』……このスキルのおかげで、僕は君のステータスを見ることができたし、相手のモンスターの情報もわかる。そして……その剣は『ホブゴブリンの片手剣』レア度は星2つ……と、こんな風にアイテムの情報もわかる」


 なるほど、そんなスキルがあるのか……ていうことは、人殺しと分かったのはステータスを見て称号を見たからか……昨日のことは見ていないと。

 そっか……いいな鑑定スキル。俺もそのスキル欲しい。


「そうなんですね……それじゃあ、これってなんですかね?」


 そう言いながら、俺はホブゴブリンの落とした剣の他に紫色の石を手に取る。

 これは、モンスターを倒すと毎回手に入るものだ。

 一応毎回拾って入るんだけど、これは一体何なのか、何に使うものかはさっぱりわからない。


「あぁ、それは魔石だね。魔石はモンスターの魔力を凝縮したもので、モンスターの弱点でもあるみたいだよ。魔石を取られた、もしくは破壊されるとどんなモンスターでも死んでしまうらしい……それで、何に使うかだけど魔石は魔道具? っていう魔力を動力として動く道具を動かすのに使うみたいだね。それと魔法を使う媒体とか魔力の貯蓄としても使うみたい」


 魔石がモンスターの弱点か……なるほど。だけど、魔石って一体モンスターのどこら辺にあるんだろう? まあこれは実際に意識して戦ってみないとわからないか。

 魔石の使い道としては、道具を動かすのに使うのか。イメージとしては電池かな。

 それに魔法の媒体か……それなら、これを使えば魔法を使えるのかな? 貯蓄は多分もしもの時のために貯めておくんだろう。


「なるほど……分かりました。それで……あの、俺の名前は知ってると思うんですけど、俺あなたの名前知らないんですけど……」


「あぁ、ごめんごめん。僕の名前はヒイラギ シュウだよ。漢字にすると、なんとビックリ柊 柊って二文字同じ漢字になるんだ。面白いだろう?」


 そう言いながら手を差し出してくる。

 それを握りながら、俺はクスリと笑う。


「確かに、面白いし覚えやすいなヒイラギ」


「そうでしょ? それと、僕のことは気軽にシュウって呼んで欲しいな、冬哉」


「分かったよ、シュウ」


 そう言いながら、俺たちは周りで武器などの回収をしている人たちを他所に、笑い合う。





ーーーーー


「ただいま」


 回収を終えた俺は、シュウと別れて屋上に上がった。

 ホブゴブリンの片手剣は、俺が討伐した本人ということで魔石と一緒に貰った。


 そして、屋上の扉を開け梨花さんに言う。


「先輩、お帰りなさい……無事でよかったです」


 梨花さんは振り返ると、俺の笑顔でそう言う。

 あぁ、この笑顔を守れてよかった。


「ありがとう」


 梨花さんの隣に並び、先ほど梨花さんがみていた景色を見る。

 そこは、先ほどまで俺たちが戦闘をしていた場所。


 今は綺麗に夕焼けに染まりきっている。

 奥を見ると、今日今野さん達が探索に行った巨塔が見える。


「最後のあの大きなゴブリンと戦ってる先輩、とてもカッコ良かったですよ?」


「ははは……そういう約束をしたからな」


 カッコよく写ってくれて良かった。

 あれはギリギリだったからそんなの気にしてなかったけど。


「やっぱり、ユニークスキルはズルイですね」


「なんで?」


「だって、先輩ナイフで普通のゴブリンの首ポンポン飛ばしてたじゃないですか!」


 あぁ……あれか。

 ユニークスキルの性能の一つに『切れ味の上昇』なんてのがあったからな……。

 でも、正直あれは吐きそうだった。『精神強化』のスキルとっておいて本当によかった。


「そうだね。でも、梨花さんだって回復魔法使えるかも知れないでしょ?」


「まあ、そうですけど……今はまだ使えませんけどね」


 顔をフイっと横に背けそういう。

 魔法はまだまだわからないことが多いからな……。

 そうだ、あの情報は役に立つか?


「あ、そういえば、モンスターを倒せば出てくる魔石って魔法の媒体になるらしいよ?」


「そうなんですか⁉︎ その情報、ありがとうございます! 早速練習してみないと……それじゃあ、先輩。私、練習してきますね!」


「お、おう」


 情報を聞いて、慌ただしく屋上から去っていく梨花さん。

 そして、俺の手からはホブゴブリンの魔石がなくなっている。

 梨花さんが取っていったんだろう。

 

「まぁ、俺が持っていても魔法なんて使えないけどな……」


 屋上のドアから、再び先ほど戦っていた場所へと視線を戻す。

 そして、その場所に複数人の人影がいた。


 あれは──


「今野さんが帰ってきた」


 この避難所のリーダー今野さんがようやく帰ってきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る