地球、大型アップデート実装!?〜この世界は進化するそうです〜
時雨煮雨
第一章 日常の崩壊
プロローグ
雨が。降ってきた。
強くて、数が多い。そんな雨が。
雨は、まるで誰かの感情をそのまま表しているかのようだった。
そんな雨の中、一人だけ小さくできた山の上で佇む人影があった。
人影は白い髪をした、年若くまだ幼く見える男の人だった。
彼は雨の中、ずっと左手にギュッと握っていたものを手を開き黙って見つめている。
それは、髪を結う可愛らしいゴムだった。
ゴムは、彼が守ると誓った少女が着けていた物。
ゴムを見ていると、頭の中に『先輩!』と、そう呼ぶ少女の声が聞こえてくる。
最後にその声を聞いたのは、いつだっただろう? 最近聞いたばかりのはずの声が、ずいぶん昔のことのように感じられる。
『先輩、大丈夫です』
少女は彼に、元気をくれた。
『先輩には。私がいます』
少女は彼の、壮大な過去を受け入れてくれた。
『先輩。私は……私だけは先輩の味方です』
少女は、彼の味方だと言った。
『先輩の罪は、私も一生一緒に償います』
少女は、一緒に彼の罪を背負うと言ってくれた。
そして──
『だって、先輩は私の……私だけのヒーローじゃないですか』
少女は、彼を『ヒーロー』と呼んだ。
彼は右手のゴムをキツく握りしめ、それと同時に左手に握るナイフを握る力も強くなる。そんな中、彼は雨の降る暗い空を見上げ何かを呟いた。
「なぁ梨花……俺はこれから……どうしたらいいんだ?」
その、何かを乞うような呟きは、血塗られたアスファルトを叩く強い雨音によって消し去られた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます