白姫さんは優しい小悪魔? ~互いに秘密を持つ僕らはひとつ屋根の下、義兄妹となった~

田仲らんが

第1話 それは前触れなく、突然に。


 早朝。


 睡魔を振り払いながらウトウトと千鳥足ちどりあしでリビングに向かうと、なぜか神妙な面持ちでテーブルにひじをく母親がた。


 (珍しい。母さんがこんな早くに起きるなんて)


 普段は朝ご飯ギリギリに起床するのだ。親なのに。


 (ちなみに朝ご飯を作るのは僕です。ダルい)


 母さんは僕を見ると開口一言かいこうひとこと


 「母さん、再婚しようと思うんだ」


 「…はぃ?」


 (へ?)


 突然の宣告に口を半開きにし、すっとんきょうな声を出してしまう僕。語尾が裏返った。恥ずかしい。


 寝起きだからか、ひどく思考が鈍い。


 一体この人は何を言ってるんだ…。


 (訳が分からん…)


 頭を抱えていると、サプライズに成功したかのような、してやったり顔をする悪魔な母。見やるとにたにたと嗤った。腹立つ。


 (……)


 「いやいや、それは色々と飛躍しすぎじゃない?」


 いきなり結婚? それはないだろう…。


 「ん?」


 頬に手を当て、首をかしげる母。


 (いい歳した人が可愛く首をかしげようとしても可愛くありません)


 取りつくろい、さとす僕。


 話が噛み合わない…?


 「いやさ、普通はお付き合いしてからでしょ」


 一般的な常識。例外もあるが。


 「お付き合いならしてるわよ」


 ストン。


 どちらも真顔。椅子イスすわる。


 「いつの間に」


 気付かなかった。マジか。


 「三年前くらいからしら」


 「だいぶ前だね…」


 よくばれずに付き合ってたな。素直に凄い。


 「で、でも。

 お相手は…その、どう思ってるの?」


 (返答次第では──)


 「んー、そもそも提案してきたのその彼あっちだしね」


 (あ)


 「もう決まりじゃん」


 もう確定じゃん、再婚。


 マジか。

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