第104話 目覚め
薄暗い部屋
窓はなく生命維持装置からの明かりがボンヤリと部屋を照らしている。
壁紙はなく金属の様なそれでいて石のような特殊な材質でできた部屋なのが分かる。
物音ひとつしない。
外にも何の気配もない。
エンキはハッとして隣のエンリルの生命維持装置を確認する。
見るとエンリルの生命維持装置はまだ生きていた。
ホッとして胸をなでおろすエンキ。
ふと見るとそばにはテーブルがひとつあり、そこに小さな箱がある。
触れると中身は真空だったのか空気がシュッと入る音がしてフタが空き、中から手紙が一通出てきた。
エンキは椅子に腰掛け、その封のされていない
エルヴィンからのメッセージ
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親愛なるエンキ・ボーア様
エンリル・ボーア様
やぁエンキ、もしかしてエンリル?
ようやくお目覚めかい?
これを読む頃、世界がどうなっているのかわからないけどオイラは君たちを未来に託す事にしたよ。
生命維持装置やこの手紙を入れている箱、そらからこの部屋も特殊なナノマシーンでコーティングしてあるから普通のカプセルで使ってるナノマシーンと違って千年は持つと思う。
外壁のナノマシーンは100年持たなくてちょっと色々あったけど。。
まぁ、それはいいんだけどね。
この部屋だけど、コールドスリープが解除されるまではこの部屋の酸素濃度は10%程に設定してあります。
この部屋にも生命維持装置にも酸素濃度を管理するシステムが入っているのでどちらかが故障しても補えるようになってるから大丈夫だと信じています。
この手紙を入れた小箱もほぼ真空になる仕組みだからこの手紙もきっと劣化しないと思います。
窓もない殺風景な部屋で清々しい目覚めって訳にはいかなくてゴメンよ。
本題に入るけど、君たちを未来に託したのは訳があるんだ。
一つは朗報だよ。
ナノマシーンの制御に成功したんだ。
リミッターは全部で14段階。
オーラの見えない低位の7段階と赤から紫まで虹と同じ7色にオーラを発する7段階に分けてリミッターが発動するよ。
一番下のランクだと病気しなくなる程度。
一番上はアヌと同等って感じかな。
元々ナノマシーンはアヌの細胞を培養してその中で生まれたものだから一番上の紫までいく人はもう出てこないと思うけどね。
これだけ聞くとじゃあ何ですぐにエンリルに施さないのかってなると思うでしょ?
でも、今はまだリミッターが完全にはナノマシーンと共生してないんだ。
でも、完成すればナノマシーンに適合した人の適正に合わせて制御出来るレベルでリミッターがかかる様になるはずだよ。
今はまだ理論の確立と数兆個に一個程度の発見でしかない。
これを100%まで持っていくには数百年はかかる計算が出た。
それでも遺伝子の進化と比べれば随分早いんだけどとにかく時間のかかる作業なんだ。
そこで、リミッターとナノマシーンの共生はオートにしてそれまで君達はこのまま眠っておいてもらう事にしたんだ。
メンテナンス用のロボットが2台、その装置の監視をしてくれてるはずだよ。
だからもし、何かのトラブルで途中で起きてしまったら何とか解決してその時が来るまで生命維持装置に入ってほしい。
それからもう一つは寂しい知らせかな。
実は、オイラの存在が最近どんどん不安定になってるんだ。
オイラを認識できる人も年々少なくなっちゃって頼れるのはもう後一人だけになっちゃったよ。
オイラは消えてなくなるまでここのメンテナンスに残るけど、きっと君達が目覚める頃には消えてなくなっていると思う。
だから、この手紙をこの部屋に残しておきます。
それから、ここの説明もしておくね。
生命維持装置を背にして左の壁の扉から部屋を出れば廊下があってこの部屋の隣が研究室です。
オイラ達の研究資料は全てそこにあります。
その奥に食料庫と生活する為の施設があります。
右の壁の扉を出るとすぐエントランスでそこから外に出れるよ。
でもその頃、外はどうなっているかわからないので出るときは十分気をつけてね。
この扉は中からは手動で開くけど外からは遺伝子認証しないと開かないので認証パネルに手を置いて入ってね。
説明は以上です。
アヌとエンキとエンリルとあの家で暮らした日々が懐かしいです。
オイラにとってはみんな本当の家族だよ。
オイラはきっといないけど、また君たち親子にあんな日々が訪れます様に。
じゃ、さよなら。
成功を祈って
エルヴィン、そしてウトナ・シュレーディンガーより
愛を込めて
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エンキ「エルヴィン。。。」
エンキ「ありがとう。。。」
手紙を持つ手が震えながらエンキはポタポタと涙を流して暫く泣いた。
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