第92話 追撃

適合者達を弔う時間も許されないまま夜を徹してアヌへの追撃は続いた。



作戦を指揮したのはハリー・グリーン少将。



いち早く事態を重く見てこの役を買って出た米国陸軍司令官だ。



山に潜伏したアヌを米軍陸軍第160特殊作戦航空戦隊の攻撃ヘリコプターAH-88JPXクリスティーヌ他500機の編隊が執拗に追う。



このAH-88JPXはにAH-1アパッチに攻撃ヘリコプターの座を奪われたAH-56シャイアンの後継機だ。



バリバリと音を立てながら暗い山々を飛び回り、ヘリに搭載された各種レーダーにより隠れていたアヌは直ぐに探知されてしまう。



パイロット「ターゲット確認。攻撃許可お願いします。」



無線「ターゲットを同期した。全機攻撃を許可する。」



爆音と共に30ミリ機関砲による攻撃が雨のように降り注ぐとアヌは逃げもせず空中に舞い上がり500機のヘリコプターと対峙した。



月明かりの中で紫色に輝くアヌ。



パイロット「さーて。モンスターのお出ましだ。」



次々とアヌにロックオンされたミサイルが発射されると爆音と共にアヌの姿は煙で隠れて見えなくなった。



しかしすぐにパイロットは熱感知レーダーでアヌを仕留めていない事に気がつく



パイロットの一人「バカな直撃だぞ?。。。一体どうなってるんた?レーダーの故障か?」



しかし、アヌのオーラはまるで煙など無かったかの様には一瞬で煙を消し去り、そのままその衝撃波はヘリコプター全てを破壊した。



先程のパイロットは声を発する暇もなく、その機体は波にさらわれる砂山の如くいとも容易く砕け散った。



空に無数のヘリの残骸が残る中、続いてIFPC防空システム400個部隊の旅団が一斉に2400発に及ぶミサイル攻撃を10回、2万発強をアヌに向けて発射した。



その間、辺りは昼間のように明るくなった。



だがこれもアヌには全く効果が認められなかった。



この大部隊もアヌが横一閃手を振るとかまいたちの様に紫色のオーラが衝撃波となって全てのMML(多用途ミサイル発射機)をたった一撃でことごとく破壊し尽くす。



兵隊たちはその悪夢の様な光景に戦意を喪失した。



この結果を受けてハリー司令官は翌日さらに3個師団6万人の兵士を投入。



たった一人に大規模な包囲網を敷いた。



その日、朝日は優しく透き通るような青い空は、これから大規模攻撃があるなどと感じさせない程清々しかった。



ハリー・グリーン少将が作戦開始を告げると各師団は進軍を開始する。



各戦況は司令部にリアルタイムでモニターされていた。



そのモニターがアヌを捉えた時、ハリー・グリーン少将はアヌとモニター越しに少将と目があった気がした。



いや、実際に目が合っのかも知れない。



そう思わせる程に信じられない事が起こった。



モニターされていた全ての部隊が突然消滅したのだ。



砕け散る様に



そして蒸発する様に



この現象が起こったのは司令部がモニターされている景色に映り込んだ部隊のみであったがこの作戦に参加した6万の兵士の内、4万人が一瞬で戦死したのだ。



軍は大混乱に陥った。



ハリー・グリーン少将は絶句して、全軍に後退を命令した。



その時、彼は心の底から恐怖した。

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